投稿元:![ブクログ](//image.honto.jp/library/img/pc/logo_booklog.png)
レビューを見る
ミステリ作家の島田荘司と笠井潔が、「日本型悪平等」の問題を、日本の歴史をさかのぼりながら論じた対談を収録しています。
両者ともかなり内容の濃い発言を交わしていますが、対談らしいアドリブや思いがけない論の展開などは見られず、一つひとつの論点を両者が交互に提出する、対論形式と呼べるような構成になっています。
弥生時代に始まるコメ作りから始まり、『葉隠』の精神、近代以降の富国強兵政策について語られ、日本の相互監視システムと呼べるような社会がどのようにしてつくられてきたのかということが論じられています。ただ、結論ありきの議論になっているような印象も受けました。
それ以上によくわからなかったのは、どうしてこの二人がこうしたテーマを語らなければならないのかということです。それでも笠井のばあいは、観念の支配形態をテーマにした評論『テロルの現象学』(ちくま学芸文庫)などの著書もあり、日本型の観念の支配形態を問題にしようとしているのだろうかという気もするのですが、島田がどのような関心から本書で論じられているようなテーマにアプローチしているのか、どうにもよく見通しが得られないように感じて、その発言の真意をいま一つつかみきれないでいます。