紙の本
アトピービジネスの繁栄ぶりは正しい情報を伝えていくことの難しさを感じさせる。
2000/07/22 00:34
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投稿者:青木みや - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は「アトピー性皮膚炎患者を対象とし、医療保険外診療の行為によって
アトピー性皮膚炎の治療に関与し、営利を追求する経済活動」をアトピービジ
ネスと呼び、その隆盛の原因や経過を分析し批判を加える。
劇的で意外性に富んではいるが全く科学的根拠のない民間療法ほど受けるの
はなぜだろう。一部マスコミの扇情的な報道が患者と医師の信頼関係を分断す
る要因となり、医療側も患者の戸惑いや不安を受けきれなかったことはあるだ
ろう。しかしアトピービジネスの繁栄ぶりは正しい情報を伝えていくこと、氾
濫する情報を取捨選択することの難しさを感じさせる。いろいろなことを考え
させられた力作。
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俺は生まれつきアトピーで苦しんでいる。最近ネットを見るとよく脱ステロイドという言葉を目にする。以前からステロイドは体に悪いからやめた方がいいという評判を耳にもしていた。
そんなわけで、俺も脱ステに挑戦してみようと、昨年何度かステロイド・プロトピックを断ってみた。すると、酷いの辛いのでとても耐えられたものじゃない。
俺と同じくアトピーで悩んでいた従兄弟は一年かけて脱ステに成功したらしいが、仕事を休んで相当大変だったらしい。
さて、そんな中たまたま出合った本書。ステロイド批判の本は多いが、本書はもろ正当化している。著者はステロイドを塗ることによってアトピーが難治化することはありえないと主張している。また、現在起きている炎症を抑えるのが第一ではないかともいっている。
ステロイドに限らず薬は体にいいわけない。しかも、ステロイドは安くはない。しかし、本書を読んで、現状ではやはり薬に頼るしかないんじゃないかという結論に至った。
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[ 内容 ]
アトピー性皮膚炎をめぐる医療が混乱している。
皮膚科の専門医にとってはごくありふれた慢性疾患にすぎない皮膚炎が、いつのまにか世間では「難病」のように認識されている。
跳梁するさまざまな民間療法、いや民間療法に名を借りたビジネスと一部マスコミの誤った報道が手を結んだとき、平凡な慢性疾患が世にも奇怪な難病と化した。
そうした風潮の中で翻弄される皮膚科の医療―このような現象は世界的にも日本特有のものである。
[ 目次 ]
第1章 アトピー性皮膚炎とは何か
第2章 ステロイド悪魔化
第3章 アトピービジネス全批判
第4章 皮膚科医の「脱ステロイド療法」を検証する
第5章 アトピービジネス被害調査の報告
第6章 アトピービジネスと戦い抜くために
[ POP ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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自分も体質的にアトピーがあって、特にこの本が出たくらいの時期には一番悩まされてたから、多少あやしいビジネスにも引っかかってた気がする。当時は全然知識も無かったし、何より、この本でも取り上げられてるように、あの痒みってホント、たまったもんじゃないから。以降10年が経過して、今現在、ほとんどそれ系のビジネスを目にしなくなったってことは、この書の正しさ、ビジネスの胡散臭さが歴史によって示されたってこと。やっぱり、やりたいものはやらせておけ的な態度ではなく(ましてそれに乗っかるなんて言語道断)、専門家から積極的に働きかけて、間違ったものは間違ってると徹底させるべきなのですね。
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2000年刊行。著者は金沢大学医学部皮膚科教授、医師。アトピー性皮膚炎に一定の有効性を持っていたステロイド治療の対抗馬として、医産連携のタイアップ療法、すなわち脱ステロイド療法が展開されていくが、この過程に関して舌鋒鋭く、かつ情報を開示しつつ批判を展開する。真偽を判定する力量は持ち得ないが、ただ辛辣な批判をしているというだけでない、本書の内容そのものも一読の価値は十分。その価値は、アトピー治療という医療情報面、医産連携という産業組織の面、職業倫理の面等広範に及ぶだろう。