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みんなのレビュー11件

みんなの評価4.0

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紙の本

消え去らない過去の証言

2002/08/19 20:43

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:桃屋五郎左衛門 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「ある人物を、その人自体でなく、たまたま属している集団を理由に裁くという考えは、私には理解できないし、耐えられない」と考えるレーヴィは、アウシュヴィッツにおいて被抑圧者(と抑圧者)に何が起こっていたか、あるいはアウシュヴィッツの後、何が起こったのか、なぜあのとき私は/彼はそうしたのかを「証言」し、考察していく。
たとえば、「特別部隊」と呼ばれた、数週間後の確実な死と引き換えに、それまでの間の確実な生と特別待遇を選択した人々がSSの指示にしたがって行った「特別な」任務が語られる。「犠牲者に仕事の一部を、それも一番汚い部分を負わせる」ことで「罪の重荷を負わせ」、自らの「良心の呵責をいくらか軽減するのに役立」てたのではないかと想像しながら、こうしたシステムを考案したことこそ、アウシュヴィッツの「最も悪魔的な犯罪」であるとレーヴィは言う。その一方で、ガス室で偶然生き残った少女をSSから匿おうとしたり、アウシュヴィッツにおける唯一の、悲劇的な叛乱を起こした「特別部隊」に属した人々のエピソードも紹介する。それによって、被抑圧者(善)−抑圧者(悪)という単純な二元論的把握に収まらないこうした「灰色の領域」の考察は、「犠牲者を堕落させ、体制に同化させる」システムへの倫理的抵抗の困難さという問題を浮かび上がらせる。権力が良心をいかに「腐敗」させ、「堕落」させるかということ告発するレーヴィの筆致は静かだが、厳しい。そして、アウシュヴィッツが、怪物たちによって行われた類を見ない蛮行ではなく、私たちの日常と延長線上の出来事であったことを嫌というほど思い知らされ、読み手は愕然とするほかない。
 レーヴィは、また収容所で経験した意思疎通の欠如による苦痛について「証言」する。それは命令や禁止を理解できずに被る暴力によるものにとどまらない。「『話しかけられない存在』であることは、迅速で破壊的な影響をもたらした」と。これは、古代ローマ人において、「生きる」ことが「人々のあいだにある」ことと同義であり、「人々のあいだにあることをやめる」が「死ぬ」ことを意味していたということを思い起こさせる。この場合、「人々のあいだにある」というのは、言葉を通じて「ある」ということなのだが。
 収容所からの生還後、自ら命を絶った人々も多い。レーヴィは、同じアウシュヴィッツの生き残りである哲学者ジャン・アメリーが自らを死に追い込んだ思考を辿りつつ、それに批判を加え、「私はアメリーが辿った道を行く気はしない」と述べる。しかし、この本を刊行した翌年自ら命を絶つ。レーヴィがなぜ自死を選んだのか(選ばなくてはならなかったのか)を考えることは、レーヴィが言うように、それは「他人の経験を認識することの困難性」にゆえにつきあたることになるけれど、私たちが生や倫理といった問題を考えていく上でひとつの課題となる。
 レーヴィの「証言」は、ここに挙げた以外にも多岐に及び、それぞれが様々な思考を喚起する。だからこれからも折に触れて手に取ることになるだろう。いや、手に取らねばならない本だと思う。
 生き残った者たちが一様に感じる恥ずかしさや罪悪感の意味を考察する部分については、同じイタリアの哲学者G・アガンベンの、『アウシュヴィッツの残りのもの』というアウシュヴィッツの「証言」の考察も併読することをお薦めします。

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2004/10/05 01:44

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2006/05/16 11:56

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2011/08/20 15:49

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2017/12/18 04:06

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