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紙の本
西洋思想の奥底へ
2002/01/11 17:19
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:天国太平 - この投稿者のレビュー一覧を見る
西洋思想史の本流について纏め擧げた雄大なる観念の神秘大系。これだけのものが現実に存在するとなると、甘い己への励みとなる。学ぶ極みに武装化された知りたいという原初の欲望が、夢想にたかぶる神経過敏な運命のミューズにずぶりと突刺さり、好奇心という脳脈に太い官能を齎す。
はたしてこれを智慧とよんでもよいのであろうか。解らぬ未読破者には永久に環らぬ世界が其処にはある。かつて感覚主義者ブラッドベリは「ノン・リーダーには未来がない」と読書の甘美を讃えたが将しくそのもの。円還知の夢想世界の創造に、貴兄達のとどかぬ祈りはまだまだ必要である。
ここで賢明なる読者諸氏に、迫力あるフィリップ・P・ウィーナーの序文を極一部だけ引用してみよう。
「およそ藝術家にしろ作家にしろ科学者にしろ、彼らの主題が既製の形式やスタイル、伝統的な方法の彼方へと突き抜けている場合には、いつでも躊躇することなく、彼らの専門領域の外から観念を借りてきて自らの創造的な努力や研究に役立たせる。芸術の言語が文学の主題、科学の発見、経済の状況、そして政治の変革などのインパクトをとどめている場合が少なくない。物理、生物、心理、そして社会をめぐる諸科学は、自然と人間をめぐる古代の神話的、形而上学的な観念から枝分かれしたのであり、その歴史的発展の中で、試験済みの観念や方法の交雑受精から出てきた分析や実験的方法の成果を存分に利用したのである。精神のその外向きの拡大というものが、思想史家をして、多方面における人間の芸術的、科学的達成を解く枢軸となりうる手がかりを模索させる動機となる。なるほど学の専門家された部門の統一性なり、それが必要とされる理由なりにはしかるべく敬意を払いながら、思想史家は、精神の大小の専門化された関心事の文化的な根をたどり、歴史的な分肢をたどることによって、知の宇宙に彼ならではの寄与を成すのである」
二〇年以上も経過した現在でも、芸術を愛しうる者すべての師表となりうる挑発的名文である。精神史が(この場合は観念史だが)学問の狭さを指摘し、精神史が学問さえも飲み込んでやるという大袈裟な世界観。このエラノス年報、ウォーバーグ研究所紀要、機関誌JHIの連還としたつらなりは現在でも生きている。JHIは今日でさえ年四回きちんと発刊されているのである。
初訳の項目別30巻として発行(86/12〜88/6)された新書「ヒストリー・オブ・アイディアス」にクロスリファランスの索引を完備させたもの。併し新書の図版をカットしたり、既に買い揃えた新書所有者に索引を別売しなかったり、心あふれた学兄を無視するのは戴けない。再度、改訂版を発行し図版を大幅に増やすべく措置を講じていただきたく想う。
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