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ヒットラー×水木しげる、っていうのに惹かれて購入。ヒットラーの生涯について書かれた本。ユダヤ人虐殺については書かれておらず、政治的な部分のみが描かれている。
ヒットラーについては「ユダヤ人を虐殺した人」程度の知識しかもってなかったけど、政治的手腕も持ち合わせていて、それでいて孤独と戦っていたんだなと感じた。
ただ、世界史についての知識が皆無な俺にとって、分からない箇所が多かった。カタカナの名前、国名、なんちゃら同盟、なんちゃら作戦、etc
たぶん、中学レベルの世界史の知識で分かるのかもしれないけれど、それすら無いから意味が分からない話が多々あった。
ヒットラーがホームレスを経験していたり、自己主張が強すぎて周りから煙たがられて追放されたりしていたことが分かった。強権的なリーダーとホームレスは紙一重ってことか。
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ヒットラーの青年期から晩年に至るまで、政争・戦争へ向かう生涯を中心に描く伝記劇画。ユダヤ人嫌いは描かれているが虐殺については触れられていない。
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このヒットラーといふ人間を追うのに、かなり苦心されたに違ひない。それほどまでに、この男は不可解な存在なのだ。
劇画といふこともあつてか、ヒットラーといふキャラクターはどこか断片的で生きて動いてゐる感じがしない。マンガの中でも距離がとられ、唐突に追い詰められ、そしてよくわからないままに自殺をする。
たくさんの資料を参考にしてゐることから、決して不十分な理解だつたとは思へない。ただ時系列に彼の行動を並べたといふわけでもない。おそらく、誰しもがこの男の不可解さの前に戸惑い、拒絶をしてゐたからだと思ふ。
けれど、この男もまたひとりの人間なのだ。ひとを救ふのが人間ならば、虐殺をするのも人間なのである。彼はこのやうな形でしか生きられなかつた。それを否定することも可能であるが、それは人間の一面を否定することに他ならない。善い悪いといふのはひとつの同じもので、状況が変ればどうとでも変わる。
美術学校に失敗した、貧しかつた、先の大戦で苦い思いを嘗めさせられた、様々な理由でもつて彼の行動を理解することが間違ひだとは思はない。けれど、そのどれをとつたとしても、それが彼のああした行為に至る必然的な理由とはならない。さうしたものは見方次第でどうとでもこじつけられるものだ。
ただ、彼の行つたことは嫌悪する。あのやうな形で世界が変わると本気で信じてゐたことの理解はできない。しかし、そのやうなことをこれから自分含めた誰もが考えないと保証することはできない。そして、人間には実行する力があつてしまふのだ。ひとはさうした明滅を繰り返して生きてきた。そして、これからも繰り返す。
彼が自身の定めを情熱を信じて行動を起こし、たくさんのひとを殺した。これがひとの有様ならば、それを嫌悪し、否と拒絶するのもひとつの人間の有様である。害を排除しやうと敵を殺すのが人間ならば、抵抗なくして死なないのも人間だ。
彼のやうな人間が目の前にいたとして、彼の行いに従ふやうに強要されるなら、たとえ何を犠牲にしやうと、否といふだらう。それで殺されるなら、それもまた自分の人生なのだ。悪法もまた法なり。善く生きることができぬなら、死ぬまでである。
おそらく彼は追いつめられて生き恥をさらすことを恐れたり、死んで逃げやうとしたりして拳銃をとつたのではないと思ふ。彼にとつて、もはやあれ以上生きることができなかつたのだ。それ以外のことを為して生きるつもりが初めからなかつたのだ。
何かと闘ふこと、それが彼の生き様だ。そして、彼が人間である以上、これは誰しもがとり得るひとつの可能性だ。
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水木しげる独特の小気味なリズムでヒットラーが権力を高めていく。実際、こんな感じであれよあれよと独裁者になったんだろうな。実際のヒトラーもこんな感じのコミカルな人間だったんじゃないかな。だからこそ、ドラマチックなことを次々と成しとげた。
ヒトラーが極悪人だからあのような非情なことができた、というわけじゃないと前々から思っていた。この水木しげるが描くヒットラーも、スゴイ完璧超人とか極悪人って感じじゃない。むしろ、ダメ人間で、頭のねじが抜けているだけの、ピュアな人間。それが神輿として担がれて、時の運にまかせて奇跡を起こす。まさにそれだったんだろうと思う。
ヒトラーの何がすごかったのか。行動力の化身だったからである。下手に頭がよくて、確率論で物事を考えることができると、革命的なことはできない。
ヒトラーは頭が良いわけじゃない。向こう見ずに行動できるからすごいことができた。そして、彼の周りに優秀な人材が集まって、狂気の活躍をしたから、ドイツはあれだけのことができた。
ヒトラーを悪く言うだけじゃあ、また同じようなことが起こるだろう。
大事なのは、扇動されないこと。神輿は担ぐ人がいなければ、動かないのだから。
すべて悪いのは一般大衆。狂人に全権委任したのが悪い。それは日本人も同じこと。
二度と同じ轍を踏まないようにしないと。
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ヒットラーをいつ止められたのかに焦点を当てて1920年代を書き込んだ水木しげるの快作。1971年に書かれたこの作品が2020年代を予見するように思えてならない。
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日経アソシエの読書特集に取り上げられており、気になったので購入。
もちろん『夜と霧』を読んだことともつながる。
水木氏の漫画を一冊通して読んだのは初めてかもしれない。
また、同じくヒトラーについても、独裁者というイメージ以外、なんの知識も持っていなかったので、その人生を知るうえで参考になった。
ただ、描かれた時代のせいか、ストーリーとして唐突というか理解できない部分があったが、そのとき、ヒトラーが何を考えてそういう行動に出たのか、ということを描こうとしても、結局は作者による後付けにしかならないので、こういう形にならざるを得ないのかもしれない。
けど、こういう細かい絵を文庫で漫画を読むのは少し辛い。
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内容は難しく、理解できてないことが沢山ある。
けど、まんがという形をとってあることで最後まで読めたのでそこに意義があると思う。少なくとも、ほとんど知らなかったヒトラーについて知れて、他の書籍を読むきっかけになった。
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「これほどドイツ人を熱狂させ史上まれな独裁者となったアドルフ・ヒットラーとはどのような人物だったのだろうか」
を描いた作品
歴史上の屈指の大きな登場人物を1冊にまとめただけあって説明不足も多くあるが
とても良くできた作品であることは疑いない
学校の図書室によくあるマンガ世界の歴史シリーズには
「偉人」でなくとも採用してほしいものである
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ヒトラーの狂信的な信念には悲しみがある。幼少期に虐げられたことで「大ドイツ」という妄想に縋りつくしかなかったのである。その悲しみは他者を征服することや、自身を大きな人物に重ねることでしか癒やされなかったのであり、現実逃避という意味では薬物中毒だったこともうなずける。
この精神は戦局判断にも影響を及ぼす。基本的に退却という選択肢がなかったことである。「局地的な戦いでの敗退は、大局的には敗北ではない」はずだが、彼の中の「大ドイツ」がそれを許さなかっただろう。
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面白いです。水木しげるは天才です。一度も妖怪が出てきませんが、そこに書かれている人間が、とっても人間臭い妖怪です。絵の雰囲気に馴染めなくて、最初は戸惑ったがそれを超えると、この世界観が急に面白くなる。ヒットラーが大好きなのか、馬鹿にしてるのか、わからんくなってくる。あと、読後感がいい。
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2017年12月3日(日)にジュンク堂書店大阪本店で購入。2018年2月15日(木)に読み始め、2月18日(日)に読み終える。ぜひ読んでおいきたい1冊。
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あまりに歴史的にも有名で悲惨な出来事だったから、今までかえって教科書的な事実以上のことを想像できなかったのかもしれない。フィクションだったとしても、本作で人間ヒットラーを想像すると、どうして戦争が止められなかったのか分かる気がします。高校くらいで読んどきたかったなぁ。
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水木しげる(1922~2015年)氏が、ヒットラーの半生を描いた劇画で、『週刊漫画サンデー』に1971年5~8月に連載されたもの。連載時のタイトルは『20世紀の狂気ヒットラー』であったが、単行本化の際に改題された。これまで、様々な出版社から出版されているが、ちくま文庫版は1990年に出版され、45刷(2019年7月時点)を重ねるロングセラーである。英語、ドイツ語、フランス語などにも翻訳されている。
本書で描かれているのは、ヒットラーが、ウィーンで画家をめざして貧乏生活を送っていた青春期から、ソ連軍に包囲されてベルリンで拳銃自殺するまでの半生であるが、600万人以上のユダヤ人が犠牲になったといわれるホロコーストについては、最初の導入部分以外では全く描かれておらず、姪のゲリが自殺したときの悲しみ様や、ソ連軍に追い詰められた総統官邸での最期の姿からは、むしろ妙な人間臭さが感じられ、悪人ではない(当然ながら、善人でもない)一人の人間としてのヒットラーが浮かび上がってくるのである。
水木氏は、自らの太平洋戦争への従軍経験に基づいた『総員玉砕せよ!』などの作品を残してはいるが、なぜ、欧州戦線のヒットラーを本書のような姿で描こうとしたのか?
S・ハフナーは評伝『ヒトラーとは何か』の中で、「今日の世界は、それが私たちに気に入ろうが入るまいが、ヒトラーがつくった世界である・・・かつて歴史上の人物で、さして長くない生涯のうちに、これほど根底から世界をひっくり返し、しかもその影響があとあとまで長く続いた人間が、ヒトラーをおいて他にいただろうか」と語っているのだが、水木氏は、ホロコーストを実行した“狂人”ヒットラーも一人の人間であり、逆に、そのような一人の人間の狂気によって、根底から世界がひっくり返ってしまうことがあり得るのだということを言いたかったのではまるまいか。。。
近年は世界中で、自国第一主義の、いわばネオナチ的なイデオロギーが公然と支持され、相当な勢力を得る状況となっているが、今こそ、我々は歴史に学ぶべきなのだ。そのための一助となる一冊と思う。
(2020年2月了)
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ゲゲゲ忌に行ったのでした。
イベント毎に1冊、水木サンの本を買おうと思っていて、今回は気になっていた「劇画 ヒットラー」を購入。
正直、よくわからないというのが感想。
ぽんぽんぽんと話が進んで、色んな人が出てきて裏切られて裏切って、自殺して「千年王国‥」。
ホロコーストを描かなかったのは、何か意図があるのかな?
イメージ通りだなあと感じたのは、「迫害された経験」「性的なコンプレックス」「(姪への)性的支配」。
肥大した自尊心は歪んだ民族主義へと繋がり、領土の拡大は自己の拡大と同一化する。
こんなに狂った人が、スムーズとはいかずとも独裁者となれたのは、時代や人々が狂っていたからなのか?
水木サン特有の、細部まで描かれた背景と、比べ物にならないくらいのトボけた顔が、ますます歪みを感じさせるような。
ムッソリーニがほんと、変な顔!
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2020.2.2読了
誰もが知る恐ろしい独裁者がいかにして生まれ、滅んだか、非常に丁寧に描かれている。本人の心情が詳にされているわけではないのでノンフィクションに近い。
昨今の我が国にきな臭い雰囲気を感じる中、改めてファシズムの実例を知ることは価値があると思って手にし、とても興味深く読んだ。
ヒトラーにスポットが当てられているので、ユダヤ人虐殺に関する記述や、ゲッペルスをはじめとする周辺の人物達のエピソードに関しては、期待していたほど触れられてはいなかった。
また、ヒトラーの人となりはとてもわかりやすいものの、なぜそこまで時代に選ばれたのか、一介の浮浪者に過ぎなかった者がなぜ一国の独裁者になりおおせたのか、それでもやっぱり今ひとつわからない。
読み終えて振り返っても、演説の熱量が凄いこと、軍人として戦術戦略に関する才能がある程度あったこと、運が良かったこと、くらいしか思いつかない。その程度であれば、他に適任がいたのではと思う。
では、ヒトラーは独裁者に成りたかったのか、というとそれはそれで疑問だ。
やはり敵味方含め戦争の犠牲者達、また虐殺された者達の怨嗟を表立って受け止められるのは、狂人か狂人になる覚悟を持った者でなければならなかったということだろう。