投稿元:
レビューを見る
全8巻読了。
戦中から戦後の日本の激動の変化をなぞるように、淡々としかし克明に描写してある。戦争の悲惨さ、戦後復興の様子など、戦中派を生きた著者のリアルな描写が目を引く。
・・・・という感想を、おそらく第1,2巻を読んでいるころは想定していた自分がいることは否めない。
しかし、自分もこの1年で色々と知ることができた。そして今、単純に「なるほど、こうだったんだ」とは思えない内容であることに気付いている。
著者があとがきで「戦中の出来事については、平成の世になってようやく考えることができた」と語っているのに象徴されるように、リアルタイムの感覚というよりは戦後民主主義の世の中でつくられた大衆感覚になっているのが、それを物語っている。
投稿元:
レビューを見る
人間なんて結局、なんでもないものなんだ。
それにしても人は子どもの頃から大して変われないものなんだな。
お金に余裕ができて以後の水木しげるの世界は、彼の仕事場と漫画の世界でほとんど完結しちゃってるみたいだ。無理もないけど。
投稿元:
レビューを見る
第8巻 高度成長以降
万国博とハイジャック
美女エプペ
帰還兵たち
田中角栄と日本列島改造
家ダニのような生活(心象風景)
ロッキード事件
開放なき自由業(いや、不自由業)
安定生活の中での頽廃
再びトペトロの村へ
奇妙な豊かさ
平凡な日々と空想
怪人二十一面相
天皇崩御とリクルート
「戦争中の恩が返ってきてうれしい」
所々過去作の焼き直し?あれど、この熱量よ。
投稿元:
レビューを見る
昭和59年3月〜60年2月の森永グリコ事件を「怪人二十一面相」という章タイトルも使ってかなり大幅に取り上げていた印象。それほど大事件だったんだなって。
作者あとがきではどうしても戦争の当事者としての印象が強すぎて、全8巻のうち太平洋戦争の占める割合が大きいとおっしゃっている。それも仕方のないこと。
まさに晩年は、『論語』の“五十にして天命を知る”“六十にして耳順う”“七十にして心に従いて矩をこえず”の通りの生き方をしているようでした。
鬼太郎が生まれるに至った水木先生の妖怪の世界観について触れられて良かったです。
投稿元:
レビューを見る
水木しげるコミック昭和史1~8巻をまとめての感想
「虎に翼」見ている人はぜひ読んでほしい。1~8巻まであるけど、ちょっとボリューム的に心配な人はまずは7、8巻の戦争の終わりから戦後あたりからでもいいと思う。
ちょうどドラマでやっている時期とバッティングするのでNHKの朝ドラ「虎に翼」がちょうど戦前~戦後の時代を描いており、戦争に入ったタイミングで電子書籍のセールをやっていたために購入した。
ずっと読んでみたかった。戦時中と戦争後に国民がどういった生活をしてきたのか、また徴兵された人間はどのような環境におかれたのかを知ることができるという点では広く、色んな世代の人たちに読んでほしいと思う。
メッセージは徹底して反戦であり、また資本主義により国民の生活が引き絞られていくことに言及している。軍国主義のため日本中が貧乏だった時代で勇ましくあることした認められなかった。
”国”だけがあり”自分”はなかった。”自分”を持つこと、すなわち自我を持つことが許されなかったとすら描いてある。国にいじめられているみたいだったと痛烈に批判している。
またそういった日本をほしいままにしていた”軍部”がなくなったのは戦争で外国の力で倒されからだった。ここでも水木は”軍部”というものは外科手術をしなければいけない一種のガンだったとすら言っている。
昭和から平成となるタイミングで出版されたのだが、平成が終わったいまでも水木が作中で言っていることはそのままぴたりと当てはまる。
戦前戦後よりは豊かになったが一般人は心身ともに豊かではない。会社ばかりが豊かになり、一般人はストレスに苛まれている。本当に豊かなのか?競争による効率を重んじた人の商品化や使い捨て、画一性を求めることをやめたほうがいいとまで言い切っている。軍国主義こそ日本を巻き込む大きな不幸だった。
昭和の歴史とは大きな犠牲をはらって得た「もう戦争はしてはいけない」という大きな教訓の歴史だった。ふたたび過ちを犯してはいけない。水木しげるはこの言葉で締めている。ずっと水木しげるは戦争そのものの悲惨さを淡々と描き、戦後生活の困難さもフラットに描いている。だからこそ恐ろしさが足元に迫ってくるようだった