紙の本
過酷な試練の中で見せた桐人の医者の心
2002/07/30 00:24
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投稿者:夏野涼 - この投稿者のレビュー一覧を見る
原因不明の難病、モンモウ病にかかり犬のような姿になってしまった医者の桐人。つかまった台湾の万大人の元からやっとのことで逃げ出したものの、逃亡先の現地の人たちに捕まってしまう。一方、彼をこんな目にあわせた元凶、M大大学病院の医長は、自らの会長選に有利になるための実績をつくるべく、モンモウ病の原因は伝染病だと学会で発表し、その席で事もあろうに女性のモンモウ病患者を衆人の前にさらさせるのだ。このような振る舞いは、まったく医師にあるまじき行為だが、それとは全く正反対に、桐人は犬の姿に変わってしまっても、自らをオリに閉じこめた長老の命を救うためのオペをおこなう。医者としての良心と意地を見る思いだ。手塚は医学の学位を持つ一人として、医者はこうあるべきなのだ、という姿を読者に強く訴えたかったのだろう。桐人の苦難の旅はまだまだ続く。
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手塚治虫版の『白い巨塔』と評される、医学界の権力闘争を扱った長編。登場人物の誰もが救われることのない、悲しい物語です。テーマの重さもさることながら基本的にどぎつい描写が多く、僕は中学時代に初めて読んだときから怖い印象を強く持っていました。キリスト教の受難の考えなど、深く考えさせられる仕掛けが満載されています。
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きりひと&麗花と同時進行で、占部&シスターヘレンの話が描かれる。長老の手術後の先生と麗花の涙にもらい泣き。外見で判断されることの恐ろしさ。犬相である故に感じる無念、差別。
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日本医学会の会長職を狙う上司の陰謀で、犬のような姿に変わる「モンモウ病」に罹ってしまった若き医師の桐人さん。
この「きりひと」って名前は、キリストから来てるのかもね。
中味はそのままなのに、見た目が違うってだけで、人はものすごい差別をするものだなぁ…。
それをなんとか自分のなかで受け止めて、自分の使命みたいなものを感じることができるまで、苦しみ抜くことの大変さとそれができる心の強さはスゴイなぁ…と感じました。
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人は善悪のどちらにもなりうるどちらを選ぶのかは何が決定するのだろう?きりひとみたいな強さなどこから来るのかな?
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高雄かおしゅん サテリアージス 蟄居ちつきょ 安直なヒロイズムに酔って 火球的請願 占部の贖罪 大わらわ 敬虔な修道女 心は豚にも劣る俗物 夜露
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何が善で何が悪かは状況に応じて変化する。
だから、戦時中の善は戦後、悪になった。戦時中、天皇を礼賛していた大人たちが、手のひらを返して民主主義を語る。もっともらしい大義名分が一番怪しい。
手塚漫画の根底には、大義名分を唱える大人への痛烈な批判がある。
しかし、人間も変化する。
桐人は正当防衛だが、人を二人殺してしまう。
そして最後は赤ん坊も殺そうとする。
保身のための悪、自己利益のための悪、自己満足のための悪。本書の登場人物はそれぞれの悪、仏教的に言えば業を抱えた人たちだ。
この後、それらの業が何かに昇華されていくのか、それとも何にも昇華されないのかが、楽しみ。