紙の本
30年前の日本を漫画から見直す
2006/05/07 11:57
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ドラえもん、オバQの子供漫画タッチで描かれた、大人の世界の奇妙で微妙なSF、ファンタジー漫画。1970年前後にビッグコミックなどに掲載された作品なので、昔通勤電車の中で読んだという、懐かしい世代もあると思います。掲載作品の「劇画・オバQ」については「大人になること」に関連して、どこかで何か評されていたのを見た気がします。ちょっとほろ苦い結末のオバQです。
描かれた時代を感じさせる題材が多いですが、それもまた今読んで面白いところ。人口増加、食糧難など、当時の近未来への関心事はこういうことだったのか、とあらためて思わずにはいられない作品「じじぬき」「間引き」。2006年現在、日本は人口減少に向ったとされ、なんとか子供を増やそうといろいろと騒がしくなっていますが、30年前は漫画にどのように捉えられていたのか。ちょっとタイムスリップして見直して見るのも悪くないでしょう。
表題の「ミノタウロスの皿」や「一千年後の再開」は純然たるSF。「わが子スーパーマン」や「コロリころげた木の根っ子」は、最後がちょっと怖い。それぞれに奇妙で楽しめる、けれど微妙な話ばかりです。
ドラえもんやオバQを書きながら「良い子供社会」のメッセージを送る一方、作者は大人社会へのメッセージをこんな形で書いていたのだ、と思いながら、今の社会ならどんな風に描かれたかな、などとも想像をしてしまうシリーズです。文庫本だと4分冊あまり。どれもそれぞれ面白い。
劇作家、北村想のエッセー(というかあとがきというか)がついていますが、これは文庫本化する前の叢書につけたものだったらしく、文庫では他巻に掲載されているものもあわせて、の評になっています。これを読むと、他の巻も読みたくなります。
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漫画っていう枠組みをはみ出してる哲学書。でも、まるでとんちのようにわかりやすい。暴力もセックスもある。けど、染み入る優しさがあって、押し付けがましさがない。
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子供の頃アニメで観た時の衝撃が今も残ってて、大人になってまた衝撃。カンビュセスの籤はさすがにあの時代でもアニメ化出来なかったんかな…。いやでもミノタウロスアニメ化しといてそれはないよな。
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藤子Fはとても大人な漫画家だと思う。子供に夢を与えるものを書いている反面、夢を壊す物まで書いている。そのどちらも素晴らしい。
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『ドラえもん』『キテレツ大百科』の、メルヘンのイメージが強い藤子・Fさんの方の異色短編集。
単純なHAPPY ENDなんてここにはない。
タイトルの『ミノタウロスの皿』には、特に唸ってしまう。
当たり前だと思っていることへの「どうして?なんで?」ほど答えに詰まる質問はないでしょ?
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表題作が好きだといってしまうとそれはどうなのと言われてしまいそうだけど…
でも好きです。小学生のときにであって良かった。
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藤子・F・不二雄[異色短編集]1
13作品掲載
異色短編集の名に恥じない出来で、カバーレイアウト、イラストが存在感を醸し出してます。
面出しして飾りたいですね!
故・藤子氏がSFをして少し不思議と称したことが思い出される逸品です。
劇画オバQが掲載されている奴です(笑)。
やっぱり表題になっている"ミノタウロスの皿"(SF異星もの)がいいな、と思います。
ちょっとした視点の変換で世界を描くとこうなるんだなーと。
短編集なだけあって、非常に短い品々なのですが、一つ一つが濃い。とにかく濃い。一冊読み終えると「旅をしたなー」って感じがします。
同収録作品"オヤジ・ロック"(サラリーマンもの)、"間引き"(近未来もの)もなかなか印象深くて好きです。
"ドジ田ドジ郎の幸運"(サラリーマンもの)は読後感が爽やか……というか結構幸せなかんじでおすすめ。
少し不思議なパラレル(並行)世界を体験できるそんな本です。
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私が小学生の頃は、まさに藤子不二雄全盛期と言っても過言ではなかったろう。そんな中にあって友人宅で目にした
この一冊に心奪われた。藤子Fにおいても心のバランスを取る必要があったと見るべきか。あの絵柄であるからこそ
恐ろしい。
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クジラは賢いから食べるな、といいつつ牛を食べ。
魚の活き造りは残酷だと言って、子牛の丸焼きを食べ。
昆虫料理をゲテモノと言って、タコを食べる。
考えさせられた作品。
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21エモン似の主人公が、宇宙船の事故で着陸した、牛が人間を奴隷として支配する星での話を描く。
藤子F不二雄は子供作品だけ、という固定概念をくつがえしてくれた作品です。
30年近く前に掲載された短編集ですが、発想が面白く、むしろ「新しさ」を感じました。
同短編集に収録されている劇画オバQは特にオススメです。
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トラウマがたくさんつまってる。ほのぼのタッチでえぐい内容。
短編だけどかなりひきこまれるものがたくさん。
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藤子・F・不二雄の異色短編集・ミノタウロスの皿です。
昔からこの人の書く漫画が、なんとも言えない後味を残しており、幼心にも「ちょっとシュール...」と感じたものです。怪物くん然り、笑ゥせぇるすまん然り。
このマンガも「…」という後味が残ります。
話のシュールさと残酷さが、絵で中和され、幅広い年代にも考えさせ、最後まで読ませることが出来る内容になっているのではないかと思います。
何度も読む本ではなく、一度さらっと読んで、読み終わった後に「ぬーん」と感じて欲しいです。
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小学校に上がる前に父親がアニメで借りてきました。「美しい女の人は美しいから内臓洗浄されて刺身にされて食べられるんだ、頭は頭だけ生かされて肉の良し悪しを見届けるんだ」と思っていました。子供の想像力と大人の無頓着恐るべし。
漫画で見たのは大人になってからです。藤子・F・不二雄はどれを読んでも薄気味悪い。しかしSF作家として素晴らしい作品ばかりです。
宇宙飛行士が漂着した惑星では人間は家畜でウシが飼う側です。美しい女性は食用家畜で、美味しく食べられることが無上の幸せだと思っている。彼女に恋する宇宙飛行士。宇宙からの客人としてもてなされる宇宙飛行士。彼女に一緒に逃げようと言い、ウシに人間を食べないよう訴えます(菜食主義者が肉食の悪を訴えるがごとく)が、彼女は自分の食用肉としての価値が認められないことで悲しむ。のちに宇宙飛行士は救いだされますが、その船の中でステーキを食べる。美味しい。涙が出ます。
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「みんなが持っている」ものがほしい。
牛は殺してもよくて、人間はダメ。っていうのは身勝手かしら。そういえば犬を食べる韓国中国や、鯨を食べる日本は、欧米でよく非難されるけど、牛は?鶏は?豚は?羊は?家畜化されているものなら食べていいけど、野生はかわいそうというのなら、ゲームパイはどうなの。これ、そういう人たちに読んで欲しいな。
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ドラえもんやパーマンで知られる藤子・F・不二雄先生の、1話完結で語られるSF(でないものも中にはありますが・・・)短編集。
ドラえもんに親しんだ方には特に自然に受け入れられるとは思いますが、これは大人向けに作られた、傑作です。どのような特殊効果を使った映画も決して敵わない魅力と奇想天外さ、そして恐ろしさとリアリティに満ちています。
ドラえもんと同じ画筆で描かれる、宇宙の深遠へのあてのない旅・タイムマシンの功罪・ドロドロとした家族愛・生や性への執着・突拍子も無い発明品の数々・現代の状況を先取りしたかのような近未来社会の問題・そして人類滅亡と再生。
どれもこれも全て間違いなく面白いのですが、この巻で特に傑作なのはやはり表題の「ミノタウロスの皿」。
宇宙飛行士である主人公の男は、周りの仲間が全て病死する中でたった一人生き残り、そして地球型惑星に不時着する。そこである美少女に助けられ、保護されたのは地球の古代ギリシャ時代ほどの文明を持つ世界だった。
たったひとつ地球と異なっていた点は、この惑星では、地球では家畜にあたる牛達が人類を友好的に支配し、そして人間を食べるということ・・・・。
宇宙飛行士は自分を助けてくれた少女を守るべく立ち上がるが、その行動は牛達は勿論、当の人間達にも全く理解されず、やがてタイムリミットは迫ってくる。
この他にもこのような「発想の逆転」を使った魅力ある話は沢山収録されていますが、鮮烈なのはやはりこの1話。子供のときに初めて読んだ時にはこれがドラえもんの作者による作品とは信じられませんでしたが、今では強烈に心に残る名作として大切にしたいと思っています。
あと、この小学館の文庫以外にも中央公論でも同じくSF短編集が発刊されており、今でも古本屋で簡単に手に入ると思います。その中に収録された「みどりの守り神」や「宇宙人」が僕は最高に大好きです。