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紙の本

真の意味で、信念を持つ者とは

2002/07/23 18:16

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:麒麟 - この投稿者のレビュー一覧を見る

自由惑星同盟のクーデターは決着へとむかい、銀河帝国の内戦も最後の決戦を迎えつつあった。自由惑星同盟のヤンは相変わらず、人の命を奪うことを嫌い、犠牲を少なく戦いを終えようと努める。
戦争につきまとう信念というもの、この言葉をヤンは嫌う。
「信念なんて願望の強力なものにすぎなくて、なんら客観的な根拠を持つものじゃない」
けれど、そういうヤンこそが強い信念の持ち主なのではないかと思われてならない。
ラインハルトは、銀河帝国での内戦を有利に進めるため、貴族軍がなんの罪もない民衆を攻撃するのを止めに入ることをしなかった。そのために、だれもが目を覆いたくなるような惨劇が。
ラインハルトには、世界を手に入れるという目的がある。そのために、ひとつ道を踏み外してしまった。
ヤンには、己の目的がない。目的=願望や野心がないということは、つねに自分の心に忠実でいられるということ。他のだれにも惑わされることもない。それこそが、真の信念を持つ者ではないかと思えるのだ。
ラインハルトは、民衆を助けなかった件で、キルヒアイスとの間に溝を作ってしまう。ヤンのように己の精神が強い者は、ひとりでもまっすぐに進んでゆけるが、ラインハルトのように精神面に弱い部分を隠し持つ者には、心の許せる助言者が必要なもの。キルヒアイスは失ってはならない存在なので、これ以上、溝を深めてはならないのだが……。
不吉な影を落としたまま、読者に不安な気持ちを抱かせたまま、次巻へと続く。

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