紙の本
編集者コメント
2001/01/26 14:23
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投稿者:滝藤正廣 - この投稿者のレビュー一覧を見る
チグリス川とユーフラテス川流域に発祥した、世界最古の都市文明といわれるメソポタミア文明。この一帯の遺跡には、湾岸戦争後、およそ10年ぶりに調査隊がはいりました。ということで、遺跡の実情を知ってもらいたい。最古の文明の発祥地の「今」がわかります。
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シュメール人に想いを寄せているので図書館で借りた。ギルガメッシュ叙事詩の人間には教育・文化・友人が必要で欲しい物があれば労力・努力を惜しまなければ得る事ができない、そして死は逃れられない宿命。今の時代も通用するし、ハンムラビ法典の「もし○○なら○○しなければならない。」と様々なパターンの法律は分かりやすいし都市国家ならではの法整備。目には目を、だけじゃなく弱者救済も記載されてる。本は写真も満載で出土品等はルーブル美術館にもあり今後も安全保管を頼みたい。現在のイラクで遺跡発掘調査は無理だろうが素晴らしいメソポタミア文明を後世に残して欲しい。ひとつ気になった王妃の墓の発見で出土した装飾品のデザイン。イラクの地下金庫に保管で門外不出になってるようだが、写真は無理なのかな?現在の装飾デザイナーがカタログにしたい程の出来栄えらしいが…。
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(2015.06.22読了)(2002.08.24購入)
2000年を記念して、NHKスペシャルとして「四代文明」が放映され、展覧会も開催されました。テレビも見たし、展覧会も見ました。
「エジプト文明展」東京国立博物館、会期2000.08.02~2000.10.01
「メソポタミア文明展」世田谷美術館、会期2000.08.05~2000.12.03
「インダス文明展」東京都美術館、会期2000.08.05~2000.12.03
「中国文明展」横浜美術館、会期2000.08.05~2000.11.05
この本は、テレビ放映のための取材記と古代メソポタミアを研究・調査している方々の解説が収録されています。
座談会では、四代文明の各巻の編集者による各文明の特徴を比較考察しています。
メソポタミアは、チグリス川とユーフラテス川に囲まれたところ、ということで、現代の南イラクのあたりに該当します。取材にあたるころは、イラク戦争の戦火がまだ治まっていない時期で、取材自体が危ぶまれたということですが、何とか取材にはいれたけど、時々、空襲警報で取材が中断したり、軍事施設の撮影は禁止ということで、思うようにカメラを回すことができなかったようです。
2015年の現在でも、イラクとその隣国シリアは、内戦が続いており、遺跡や遺物の破壊が行われているようで、古代ファンには、気のもめることです。
こういう事態のときは、多くの遺物が、イギリス、フランス、ドイツに持ち出されていることを喜ぶしかないのかな、と複雑な心境です。
メソポタミア文明を支えたものは、小麦ということです。小麦の原種は、トルコ高原ということですが、灌漑によって、メソポタミアでも可能になった、とのことです。
イラク博物館や南イラクの数々の遺跡に行ってみたいものですが、安全に観光できるようになるのは、いつなのでしょうか?
【目次】
文明への旅立ち 松本健+小口裕通
取材記 それは一粒の麦から始まった 佐藤寿一
よみがえるメソポタミア文明 松本健
古代文明への視点 文明の美とかたち 松本健+小口裕通+小口和美
メソポタミアの文字の歴史 渡辺和子
ハンムラビとハンムラビ「法典」 中田一郎
ハンムラビを凌ぐ王 シャムシ・アダド一世とその王国の興亡 小口裕通
遊牧民と文明―古代メソポタミアの牧人たち 赤堀雅幸
座談会 四代文明をめぐる[二]都市 松本健、近藤英夫、鶴間和幸、吉村作治、
井上隆史、司会 後藤健
遺跡ガイド 小口裕通+小口和美
メソポタミア文明年表
あとがき 井上隆史
参考文献・関連図書
●メソポタミアの四代文明(49頁)
メソポタミアの3000年の歴史のなかには、古い順にシュメール、アッカド、バビロニア、アッシリアというまったく異なった四つの文明が盛衰している。
●麦(60頁)
麦の野生種と栽培種の違いは、背丈がとても低いこと、野生種のほうが栽培種にくらべて病気に強いこと。そして、最大の相違点は、野生種は穂の下のほうから順々に実がみのり、自然に離脱していくことだという。
●シュメールの資源(70頁)
肥沃な泥、水、太陽そして瀝青。それがすべてであった。その他はすべて人知によって得られたものである。
●宮殿の下の王墓(86頁)
「宮殿の下に王墓がある」のは、ウルも同様である。メソポタミアでは居住空間の真下に墓を造った。生者と死者が共に暮らすというのが、メソポタミアの死生観なのだろうか。
●ギルガメシュ叙事詩(106頁)
(ギルガメシュ)叙事詩は何を我々に伝えているのか。野獣そのものであったエンキドゥは教育によって成長した。これは人間が人間らしく生きていくためには教育・文化が必要であり、また友人も必要であるということを教えている。また、欲しいものがあれば、いかなる苦労も惜しむことなく努力しなければ得ることはできないことを伝えている。そして、人間にとって死はいかなる努力をしても逃れることができない宿命である、と。
●強盗の場合(ハンムラビ法典)(181頁)
強盗の犯人が捕らえられた場合と捕えられなかった場合に分けられ、犯人が捕らえられた場合は、その犯人が処刑されることで正義が回復される。次に、犯人が捕らえられなかった場合、被害が生命以外の場合と生命の場合に分けられ、生命以外の場合は、強盗事件が発生した市と市長が損失を償い、生命の場合は、銀一マナ(約500グラム)を同じく市と市長が遺族に支払うことで生命の償いをすることが要求されている。
☆関連図書(既読)
「旧約聖書 創世記」関根正雄訳、岩波文庫、1956.05.06
「帝王と墓と民衆」三笠宮崇仁著、光文社、1956.04.30
「神・墓・学者」ツェーラム著・村田数之亮訳、中央公論社、1962.07.25
「発掘」曽野寿彦著、中公新書、1964.03.30
「ギルガメシュ叙事詩」作者不詳・矢島文夫訳、山本書店、1965.07.30
「ギルガメシュ」梅原猛著、新潮社、1988.10.15
「古代オリエント」(世界の歴史1)杉勇、講談社、1977.02.20
「ヘブライの神話」矢島文夫著、筑摩書房、1982.12.15
(2015年6月24日・記)
(「MARC」データベースより)amazon
チグリス川とユーフラテス川にはさまれた、古代文明発祥の地といわれるメソポタミア。湾岸戦争後初の本格的取材が行われ、貴重な遺跡の現況と新たな発掘の様子が明らかにされる。NHKスペシャル「四大文明」を書籍化。