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紙の本
現代人の生活と不可分になりつつあるレジャーについて、アラン・コルバンを中心とする研究者たちの論文集。
2000/09/14 18:15
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投稿者:宇波彰 - この投稿者のレビュー一覧を見る
レジャー産業、レジャー人口など、「レジャー」ということばがしばしば使われている。かつてこのことばは「閑暇」などと訳され、「レジャー・クラス」は「有閑階級」と訳されていた。ヴェーブレンの代表的著作 の邦訳は今日でも『有閑階級の理論』というタイトルで刊行されている。今では死語かもしれないが、「有閑マダム」といった表現には、「レジャー」に対する軽蔑の意識がある。つまり、「レジャー」には何かしらうしろめたいものが含まれてきたのである。「レジャー」に積極的な意味を持たせ、それを「カルチャー」の一つとして考え直そうとするのは、カルチュラル・スタディーズの一つの特徴である。フランスでは、カルチュラル・スタディーズは一向に話題にならないが、それにもかかわらず、伝統的な意味での「文化」を追いかけているだけでは、本当の人間のカルチャーを理解できないということは、フランスの知識人のあいだでも暗黙の了解事項になっているように思われる。実際、この『レジャーの誕生』に収められている論文を読むと、もはや従来の伝統的・保守的な「文化論」が破綻し、レジャーや遊びを含めた日常生活を対象とする新しいカルチャー論がフランスにおいても展開されつつあることが感じられる。この論文集の監修者であるアラン・コルバン自身が、すでに『においの歴史』『浜辺の誕生』『音の風景』『娼婦』(いずれも藤原書店から翻訳が出版されている)といった著作を刊行していて、彼の関心が具体的な日常生活に向けられてきたことがわかる。
本書によってわれわれは、近代のヨーロッパ人が、どのようにして「レジャー」についての考え方を変え、それをどのように獲得してきたかを知ることができる。それが本書ではイギリス、フランス、イタリアなど、それぞれの国について具体的な考察がなされている。レジャーを楽しむことは、最近の言い方を使うならば、「グローバル」なものではあるが、それにもかかわらず、それぞれの国で独自の展開をしてきたのである。また、レジャーは「遊び」と密接にかかわっている。レジャーの時間にすることは基本的には「遊ぶ」ことである。遊びの中で、もっとも重視されてきたのは「旅行」である。本書でも、近代のヨーロッパ人がどのようにして、レジャーを過ごすものとしての旅行に熱中してきたかが豊富なデータとともに、論じられている。そして、イギリスのトーマス・クック旅行会社の仕事がアルコール中毒の撲滅運動と関連していたことなどが説かれている。つまり、レジャーの問題は、道徳の問題とも関連し、鉄道をはじめとする交通手段の発達ともつながっていることが明らかにされている。
暇な時間に何をするかということは、「自由」の問題と絡んでいるのであり、「遊び」というテーマと直接につながっている。この論集はそのような問題を考えるためのヒントを与えている。 (明治学院大学教授、宇波彰 2000.09.15)
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