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消費資本主義のゆくえ コンビニから見た日本経済 みんなのレビュー

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みんなのレビュー8件

みんなの評価3.6

評価内訳

8 件中 1 件~ 8 件を表示

紙の本

労働関係者にもおすすめしたい本

2001/07/04 07:21

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:荻野勝彦 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 すでに何年にもわたり、所得が伸び悩む中で消費性向が低下傾向を示すという、経済学の教科書とは正反対のことが起こっている。パソコンや携帯電話といった、ランニングコストのかかる大型のヒット商品が生まれ、広く普及して、それにはそれなりの消費が向けられているにもかかわらず、国民は所得が減る以上に倹約して、せっせと貯蓄(や負債の返済)に励んでいるのだ。
 こうした中で94年から98年まで、合計15兆円以上の特別減税が行われた。しかし、景気対策としてそれほど有効だというわけにはいかなかった。「それは恒久減税でないからいけないのだ」という意見が出て、99年には制度減税が行なわれ、さらには地域振興券という古今の奇策も講じられたが、結果はご承知のとおりである。
 日経連の奥田会長は、「文芸春秋」1999年10月号の「経営者よ、首切りするなら切腹せよ」というインタビュー記事の冒頭で、日本経済が、雇用や老後に対する不安感が消費を冷え込ませる「不安の経済」に陥っていると発言した。毎年の春闘でも、「賃上げによって所得を増やし、個人消費を活性化することで内需主導の景気拡大」を訴える連合に対し、日経連は「企業業績を回復させて雇用不安を払拭するのが消費拡大の道」と主張した。昨年初の春闘セミナーでは、奥田会長は連合の鷲尾会長との対談で、「賃上げがすべて消費されると約束してくれれば、満額回答してもいい」とまで発言した。
 連合の主張にも一理ある。実際、これまでは、消費をもっとも良く説明するのは所得であった。研究機関などのマクロモデルも、多くは消費を所得の関数としているらしい。しかし、所得が消費を規定するというこの常識も、疑ってみる必要がありそうだ。
 松原隆一郎著「消費資本主義のゆくえ」は、消費を所得の関数ではなく、独立した変数と考え、経済を従来の生産中心の立場ではなく、消費中心の立場から見た本である。この観点から見ると、雇用不安が貯蓄性向を高め、規制緩和が不安を増大させて、消費不況を深刻化させるという連鎖が見えてくる。これは日本の現状をよく説明してはいないだろうか。
 この本は読み物としてもまことにおもしろい。序章で従来の経済学との立場の違いを具体例を交えて述べたあと、欧米の近代と、日本の戦後の経済の歴史を、消費資本主義の立場から再解釈する。社会学や心理学の成果や、ソシュール、バルト、ボードリヤールなどの所論も動員して、学際的な議論が展開される。そして、現時点でのわが国の消費は「コンビニエンスストアや携帯電話は戦後日本経済の到達点」だが、しかし「それは、本当に誇るに足るものなのだろうか」と疑問を投げかける。むしろ「日本の消費資本主義は、その到達点で倦怠に包まれている」という。
 著者はこの倦怠を脱することが消費不況を脱する方途であると考えているようだ。著者は改革そのものを否定せず、いわば市場原理主義(という表現を著者は使っていないが)にもとづく急速な改革が経済に混乱をもたらしたのだから、漸進的に改革を進めるべきだと主張する。それに加えて、企業活動に経済活動以外の社会的・文化的価値との両立を求め(それは会社中心で家庭・地域を省みさせない働き方の否定でもある)るための消費活動のモラル、あるいは商品を使う技術の再興が必要であるという。
 しかし、モラルと技術の再興には、著者はいささか悲観的であるように私には思える。直接的には「異質の意見に耳を傾けて議論を重ねるモラル」の達成の困難さを著者が強調しているからであるが、おそらくそれは、論壇に独自の地位を築いた著者が、論壇における公共性の喪失を憂慮する心情の反映でもあるだろう。
 斬新な論点を提示しているだけではなく、経済読み物としても非常に面白いし、労働政策を考える上でも大いに参考となる点を含んでいる。多くの人におすすめしたい本である。

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紙の本

宇多田ヒカルのメガヒットの理由がわかる

2000/12/30 11:06

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:T.Satoh - この投稿者のレビュー一覧を見る

 著者は、戦後日本の消費の歴史を、欧米社会に見る消費の五つの類型をなぞるものとして解き明かしていくと同時に、戦後日本の消費に関して「まことしやかに」語られる通説を痛烈に批判している。これらの通説の周辺には、「規制緩和」や「多様性と個性を獲得した消費者の出現」や「電子ネットワークの発展」などが不況を克服するという主張がある。

 しかし、著者は、反証をあげ、さらに貨幣経済や消費の根本から論じることでこのような通説の誤謬を指摘している。私は、岩井克人の『二十一世紀の資本主義論』と通ずるものを感じた。

 後半の「消費資本主義」論では、経済学が「均衡モデルにおいては、生産のみを語れば、わざわざ消費を語る必要はない」として、マーケティングや社会心理学にまかせてしまった消費の側から資本主義を考えるという、経済学に縁遠く、消費に身近な者にとって見れば当たり前とも思える視点を提供している。

 ここでは、ジンメルの「我々は、商品に接しそれとの距離を感じた時に欲求を形成する」とか、ハイエクの「商品種についての分類は時と所によって異なる仕方で行われる」など社会学・経済学の示唆的な研究を引用しつつ、宇多田ヒカルやGLAYのメガヒットの原因や、インターネット上のフォーラムやメーリング・リストがしばしば「仲間ほめ」、「バトル」に陥る理由までを分析している。理論として読んでも、また戦後消費史として読んでも面白く、さらに視点の新鮮さは、マーケッターやネット業界の人間に有用なヒントをもたれしてくれそうである。

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紙の本

日本経済新聞2000/10/8朝刊

2000/11/10 21:15

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:井本省吾 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 アダム・スミス以来今日まで主流派経済学は個人消費の重要性を強調しつつも、消費を明示的な分析の対象としてこなかった。対象は地代や賃金、労働、生産コスト、利潤などもっぱら生産・供給側だった。
 今や日本経済の六割を消費が占めるのに、これでは経済はわからないという不満、批判から本書は生まれた。著者は消費活動を軸にした経済を「消費資本主義」と呼び、欧米社会や戦後日本の消費の歴史に分け入り多彩な分析を試みる。
 主流派経済学は消費者は合理的に選択する個人であり、他人に影響されることなく効用を最大化するとされる。市場が健全なら不均衡は一時的であり長期的不均衡の発生は非効率な規制があるためだとして彼らは規制緩和を唱える。
 だが消費者は多くの商品について精通していない。大抵は習慣に従い、また信頼できる店員の意見やブランドを頼りに選び流行にも左右される。さらに雇用不安が貯蓄性向を高めるから、不均衡の長期化もありうる。と同時に性急な規制緩和が雇用不安を増大させ、逆に不況を深刻化させると著者は指摘する。
 と言って単純な終身雇用礼賛論や規制緩和反対論を唱えているわけではない。むしろ終身雇用制を含む「会社中心主義」や経済中心の社会運営が家庭や地域コミュニティーを顧みず、地域文化や歴史的な連続性とのかかわりを断った不安定な消費社会を広げてきたという。
 今やコンビニエンスストアで日常的に欲しい商品がいつでも買える便利な社会を築いた戦後日本の消費資本主義は、その到達点でけん怠に包まれている。けん怠を脱するにはブランド品を買いあさるのではなく、それを使う技術を磨くようなモラルが求められるというのが著者の主張だ。
 規制緩和の効用を過小評価している点が気にかかるが、消費(者)の側から経済に踏み込み、リースマンやボードリヤールの論考を援用して人間心理や文化とのかかわりにメスを入れる作業は新鮮で、既存の経済学にない視点が得られよう。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000

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2007/05/18 12:00

投稿元:ブクログ

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2010/05/25 07:27

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2012/11/11 20:11

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2011/01/22 00:12

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2014/01/03 01:07

投稿元:ブクログ

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