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アンディ・ウォーホル50年代イラストブック みんなのレビュー
- アンディ・ウォーホル (画), アイヴァン・ヴァルタニアン (監修), ゴリーガブックス (監修)
- 税込価格:3,080円(28pt)
- 出版社:新潮社
- 発行年月:2000.9
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紙の本
「アーティスト」誕生以前のすてきな絵画やイラストはいかが?
2000/10/20 00:15
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投稿者:赤塚若樹 - この投稿者のレビュー一覧を見る
マリリン・モンローの肖像、キャンベル・スープの缶、コカ・コーラの瓶とくれば、思い浮かぶのはもうアンディ・ウォーホルしかない。実際に、一度でもその絵を観たら──たとえ本のなかの一枚の図版であっても──もはやその画家の名前を忘れることができないだろう、といえるくらい、それらの題材を描いたウォーホルの絵は印象的なものだ。逆にいえば、ウォーホルと聞くと、すぐにマリリン・モンローの肖像やキャンベル・スープの缶やコカ・コーラの瓶の絵を思い出すほど、彼の名前はこうしたポップ・アートの作品につよく結びついている。
ところが、本書に収められた作品は──もしさがせば、面影くらいならみつけられるのだろうが──どうも「ウォーホル」らしくない。ドゥエイン・マイケルズによる若かりしころのウォーホルの写真がところどころに掲載されているおかげで、ウォーホルの「存在」はそれなりに意識されるものの、何かがちがうのだ。これはどうしたことだろう?
あらゆる芸術家と同じように、ウォーホルにもスタイルの変遷があり、じつはウォーホルが「ウォーホル」になるのは1960年代にさしかかろうとしているころのことだったのだ。この『50年代イラストブック』に収められているのは、したがって、ウォーホルがポップ・アートの作家になる以前の作品ということになる。
解説として収められたテクスト「芸術家の発明」によれば、そのときの「方向転換」はかなり大きなものだったらしい。──ほぼ1960年を境にウォーホルは「商業イラストレーター」から「芸術家」へと転身しており、それにともなって、商業作品の特徴だった「純粋さと健気さ」は「鋭さや冷たさ」に取って代わられ、活動拠点だった広告業界はそれ以後のポップ・アート作品においては標的となる。ウォーホル自身の筆跡があった点で、商業作品のほうが「人間的」だったが、イメージ転送のテクニックにもとづくポップ・アート作品は「機械化された」ものであり、それによって、「作家の手によって創り出されたパーソナルな表情からの完全な、そして意図的な離脱」がはかられたのだという。
本書をとおしてみることができるのは、つまり、「アーティスト」誕生以前のウォーホルの「人間的」で「パーソナルな表情」であり、その「ともすれば彼の芸術作品によって抹殺されかねない過去の経歴」の記録はじつに興味深いものだ。図版のキャプション、ならびにテクストのなかの新聞雑誌名や作品名などが横文字のままというのは、どんな判断があるにせよ「日本語の本」としてはすこしばかり不親切だが、本書のおかげで、ウォーホルの貴重な「初期の作品」がまとめて鑑賞できるようになったことは、とても大きな意味があると思うし、なによりたいへんよろこばしい。
そして本書を実際に開いたとき、そのよろこびは、眼のまえにあらわれる絵画やイラストが、ウォーホルの作品であることを知らなくても充分楽しめるくらいすばらしいものばかりだという事実によって、よりいっそう大きくなることだろう。 (bk1ブックナビゲーター:赤塚若樹/現代小説・詩学・表象文化論 2000.10.20)
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