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紙の本
香港のホンコンフラワーな魅力。星野博美『ホンコンフラワー』
2001/03/21 13:11
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投稿者:石塚雅人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
香港が英国から中国に返還された1997年7月1日。その前後(1996-98年)に、作家の星野博美はホンコンで暮らしていた。香港について著者は「香港はホンコンフラワーに似ている。私は、この街のそんな切ない美しさを愛している。」とコメントする。
『ホンコンフラワー』は、作者が香港の裏町に住み、香港人の生活を写しとった写真集だ。この本の前に出版された『転がる香港に苔は生えない』(情報センター出版局)のヴィジュアル姉妹版という位置づけのようだ。
星野が写し撮った香港は、昼と夜の違う貌を持つ。昼、強い光によって照らされ、風化があらわになった、ちゃちくて、古びているところが逆にいとおしい建物などの人工物と、強い南の陽の力ではびこり育ったハイビスカスや芭蕉。その上にはPLフィルターをかけたみたいな青い空に立体感のある雲がそびえ立つ。
夜が香港の「本当の」貌なのかもしれない。さまざまな色の人工的な光の中で、モノのちゃちさは暗闇の中に消え去り、偽物も、いや偽物だからこそ、ネオンの光の中で美しさをみせる。香港人は、むしろ夜という時間のために、ネオンに映えるように街を作り込んでいくのかもしれない。そんな昼と夜がめぐる街の中で、人々の暮らしは活気に満ちている。しかし一方では、写真集の最後の方にさみしい家族の食事風景がある。3世代家族のような10人が冷たい薄暗い蛍光灯下で食事をしている。テーブルの上には、なんと一品のおかずしかない。それも青菜をただ炒めただけです、という感じの。これが、おそろしくうすらさみしい。家族が集まった風景であるがゆえに、より荒涼としている。パック旅行でみさせられるような、ステレオタイプな香港しか知らないものには、「これも香港か」となにかしら感慨がある。
視覚効果で、とりわけおもしろかったのは、途中、見開きにタテイチの写真を2枚使っているところ。この本を90度回転させると、縦に細長い写真集になる。狭い香港の、街がたてにのびているところとリンクしているようで、ふだん使わない回路から画像を把握させられる感覚がある。
作家の好きな中国語「相見恨晩」(もっと早く出会っていればよかった。たとえ遅すぎても、あなたに出会えてよかった)という言葉は、この写真集にもあてはまる。もっと早く、この写真集を手に取ればよかった。
http://homepage2.nifty.com/mitropa/index.htm に、星野博美(とその師匠の橋口譲二)のサイトが公開されている。展覧会情報や日記などの情報はこちらへ。
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