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紙の本

折口信夫の筆名釋迢空が法名であること、その事実の背後に同性愛が隠されていることを発見した画期的評論

2000/12/20 18:15

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:岡谷公二 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 釋迢空とは、国文学者の折口信夫が、短歌、詩、小説といった文学作品を発表する際に用いた筆名である。本書の題名は、彼の文学作品、とりわけその短歌を読み解く作業がテーマとなっているところから来ている。

 短歌的な抒情の否定を一生の課題とした大阪生れの詩人小野十三郎を師に持ち、「ずいぶん長い間……歌(短歌)に近づき学ぶことを避けて通ってきた」著者が、釋迢空の短歌に親しむようになったのは、加藤守雄『わが師折口信夫』、岡野弘彦『折口信夫の晩年』のような弟子たちの回想を読んで、その人間に強い関心を抱くようになったからである。


 数多い折口信夫をめぐる書物の中で、本書が類書と異なる点は、大きくいって二つある。一つは、彼の同性愛を正面切ってとりあげていることであり、もう一つは、同じ「大阪の場末」に生れ育った人間として、迢空の故郷や家について持つ複雑な心理を共感を以て分析していることである。

 折口信夫の同性愛は、加藤守雄の本によってそのなまなましい姿があばかれて以来、公然の事実となったと言ってよく、『死者の書』を書くきっかけとなったとされる中学の同級生の辰島桂二、今宮中学時代の教え子の伊勢清志、藤井春洋、加藤守雄という名前は、その相手として、伝記の上ではよく知られている。しかし彼の同性愛が、彼の生涯と仕事の上において持つ意味については、これまでほとんどまともに考えられたことがなかった。

 著者は、感性の鋭いメスによって、折口信夫・釋迢空の心の襞に分け入り、その奥にかくされた秘密に迫ろうとする。そしてこれまで彼の伝記の上で全く無視されてきた藤無染なる人物を発見する。藤無染は、折口の「自撰年譜」の中に、明治三十八年九月、国学院大学入学のため上京した折、「新仏教家藤無染氏の部屋に同居、年末、藤氏に具して、小石川区抑町に移る」として、ただ一回だけ出てくる。著者は、歌集にさえ採録されなかった初期の膨大な短歌をくわしく読み、さまざまな実地調査をおこなって、藤無染が折口より九才年上の、早逝した浄土真宗の僧侶であり、折口の一生を決定した恋の相手であり、釋迢空という名前は、単なる筆名ではなく、藤無染によってつけられた法名であることをつきとめる。といって、以上の事柄は確証されたわけではなく、すべては状況証拠にもとずいていて、今のところは仮説の域にとどまっているが。この仮説には強い説得力がある。実際、迢空の作品や生涯が、「藤無染というピースをはめこむと、一挙に絵柄がはっきりするジグソーパズルのような気」がしてくるのは、著者だけではないのである。

 たとえば折口が、生前自ら釋迢空を戒名にしてくれるように菩提寺の住職に頼んでいた事実は、それが単なる筆名でないことを、はっきりと裏付けている。そして著者の言うように、「詩歌散文を問わず、文学的行為にのみ用いられる筆名に法名を撰ぶと決めた時、それは自分の「文学」をすべて死者への晩歌──供養とする意志だった」ことも確かである。

 今後折口信夫=釋迢空に近づく人たちは、本書を避けては通れないだろう。 (bk1ブックナビゲーター:岡谷公二/評論家 2000.12.21)

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