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紙の本
春日大社宮司が伝える神道の「ことば」
2000/11/29 17:32
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:宮島理 - この投稿者のレビュー一覧を見る
快挙である。神道関係の本が売れている。春日大社宮司の葉室頼昭さんによる語り下ろし<神道>シリーズ(春秋社)が好調だ。
1997年10月に第1作『<神道>のこころ』が出て以来、『神道と日本人』(99年2月)、『神道 見えないものの力』(99年11月)と、続編も含めてこの種の本にしては確実に部数を伸ばしている。今年8月にはエッセイ集『神道 感謝のこころ』も上梓された。
これら<神道>シリーズに一貫して流れているメッセージは「感謝」ということだ。と言うと、卒業式で決まって「先生やご両親に感謝しましょう」と説教をたれる訓辞オヤジの顔が思い浮かぶかもしれないが、葉室氏が言うのは信仰の素朴なあらわれとしての「神様への感謝」である。
最新刊『神道<いのち>を伝える』にもそのメッセージは絶えず流れている。本書では、宮司になる以前に医者をしていたという葉室氏が、特に<いのち>について語っている。また、随所に散りばめられている、春日大社の美しい風景写真も、素直にわれわれの心を洗う。
簡単な科学用語を交えながら神様について語る場面には少々面食らうが、神道の「ことば」を聞きたいと潜在的に願っている者にとって、本書はこのうえない価値を持つ。日常、知らず知らず接しているわが国の神様について、あらためて考え直し、心の糧とするには絶好の一冊である。
以下、余談になるがさらに少し。
私の家は神道で、昭和の初期までは岡山の田舎で神職に就いていたということもあり、現代における神道について密かに関心を抱いていた。
キリスト教には説教が、仏教には法話があるけれども、神道には信者が良い意味で反芻する「ことば」が存在しないといわれる。教義や教祖を持たず、「言挙げ」しないことを旨とするのが神道であるから、当然と言えば当然だ。
しかし、戦前のような国家の庇護もなければ、神道の拠り所である稲作共同体もますます解体されつつある。そんななか、いわば「義兄弟」の関係にある仏教とは別に、神道独自の「ことば」を紡ぎ出していくことは、潜在的に神道を信仰する者が望んでいることでもある。実際、戦後になってから、神道界はさまざまな試行錯誤を繰り返してきた。
まだまだ神道の「ことば」は難しい。葉室氏の<神道>シリーズは、その難しさを噛み砕き、われわれに直接響く「ことば」を与えてくれる。これだけでも快挙だが、その本がめでたく売れているというのだから、二重に快挙である。
森首相が「日本は神の国である」と発言した。この発言自体は間違ってないと思うが、聞き手のなかにはかつての軍国主義を嗅ぎ取る人がいるのも事実だ。ただし、信仰まで歴史の闇に葬り去るという愚挙だけは防がなければならない。神道界の地道な試行錯誤をこれからも注視していきたいと思う。
(宮島理/フリーライター)
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