紙の本
「ローマ圏の大きさ」に圧倒され、「ローマ人の暮し」に人間味を堪能する
2023/09/18 19:52
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投稿者:大阪の北国ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
文庫本ながら500ページを超える大著である。「ローマの父」といわれる双子の赤ん坊がオオカミの乳で育てられるところから、東西ローマ帝国に分裂し、コンスタンティノポリスの帝国が残り、ローマの帝国が崩壊するまでの大歴史絵巻である。
著者は歴史学者ではなくローマ在住のジャーナリストである。私も含めて予備知識の薄い一般読者を対象に平易に綴られるのでわかりやすい。学者先生の著書とは一味違う。著者は「おもしろい歴史書」を目指したとのことで、一般的に聖人君子的な賢帝と思われている為政者が実はそうでもなかったというような暴露話も随所に織り込まれていて興味がそそられる。それよりも読んでいて楽しかったのは、ハンニバル、スキピオ、キケロ、カエサル、アントニウス、クレオパトラ、アウグストゥスなど有名役者が目白押しに登場してくる所謂「編年体」のような歴史の積み重ねに加えて、「教育」「立身の道」「神々」「市民生活」「ローマの晩餐」「享楽のローマ」「経済」「娯楽」などの人々の生活に根ざしたトピックスが章として設けられ、読みながら人間臭いローマ人の日常生活に触れられたことである。
そしてもう一つ、本書は「ローマの歴史」というタイトルながら、それを語る際に欠かせない重要なテーマである「キリスト教」の発祥からローマ帝国の国教となるまでの展開も教えてくれる。何と言っても「ローマカトリック教会の総本山の町」である。われわれが日頃目にする文庫・新書の中でキリスト教そのものがイスラエルの地に発祥し、ユダヤ教からみれば邪教であったものが途中小アジアを経てローマに伝播しそこで国教化され、バチカンという総本山になっていく過程に触れたものは少ない。なぜあの場所にサンピエトロ大教会が存在するのか。旅行ガイドには数行で書いてあるのかも知れないが、本書はそれを長い歴史の中に位置づけて教えてくれる。貴重である。
私が若い頃駐在していたドイツにも、ケルン・トリアー・アーヘン・クサンテンなどローマ古代の遺跡が残り、それが発祥となっている町があった。アウトバーンを時速200キロ以上で何時間も疾走してもローマからだとすぐに到達できる距離ではない。それどころではなく、隣のフランスやさらにそこから海を越えたイギリスにまでローマ人の痕跡は残っている。インドに迫ろうかとしたアレキサンダー大王もすごいが、ローマ人の行動力にも脱帽である。当時訪ねたハンガリー・ブダペスト近郊の都市遺跡やドイツ・クサンテンの円形競技場の記憶を辿り、壮大なローマの勢力圏の大きさに感慨を新たにしている。
ローマの長い長い歴史が凝縮され、大変読み応えがあった一冊である。
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もの凄く面白いローマ史です。専門家じゃない分、筆はすべるし、人物は誇張されるし、爆笑しながら読める入門歴史書。
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ローマの神話から繁栄、そして滅亡への道がわかりやすく書かれている。 農耕民族が帝国の繁栄によって堕落していく様は、現在の日本と重なるとこがあると思う。
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20090716
モンタネリ著
ローマ帝国を虚飾なく書き、発表当時は批判も浴びた良作。
読み物として面白かった
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易しく笑えるローマ本。世界史が苦手な高校生やローマに興味があるけど敷居が高いかな…と感じている方は必読です。
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ローマ市の建国から帝国の崩壊まで1冊で読める。簡潔な記述ながら生き生きとした描写で飽きずに読める。興味深いのは古代ローマには既に銀行があり、ディオクレティアヌスは社会主義・計画経済の実験までしていたということ。家族の崩壊と避妊、中絶の普及で人口が減ったなど現代と同じだ。「全ての道はローマに通ず」は街道だけではないようだ。
モンテクリスト伯でファリア司祭が語っていたうまく選択した150冊の本はほとんどギリシア・ローマの本に違いない。少なくとも18世紀までは古典古代の叡智への注釈をしているにすぎないのだから。
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ローマ建国から西ローマ帝国の滅亡までを叙述の範囲としたローマ史の概説書。500ページ近くの中々に分量の多い著作だが、スエトニウスに通じる読み物としての面白さを持っている。
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軽妙洒脱なローマ史。質量ともにいまのぼくにはちょうどよく、楽しく読んだ。
「エルトリア人は楽天的で陽気な種族だった。だから、悲観的で陰湿なローマ人が相手では、負けるに決まっていたのである」には笑った。たしかにローマの歴史は陰湿だ。戦争ばっかしてるし、王様や皇帝の半分くらいは畳の上(?)で死ねなかったんだし。でも今のイタリア人のイメージって、この本に出てくるローマ人よりエルトリア人に近い。結局勝ったのはエルトリア人だったのかもしれない。
皇帝と元老院の関係とか、市民の支持が皇帝の権力に直結していたとか、政治事情が興味深い。ギリシアが手本だったのかもしれないが、この時代の政治機構は、中世よりずっと民主的に見える。ストライキだってやってるし。
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塩野七生のローマ人の物語を何年かにわたってのんびり読書中だけど、すっとばして読みたくなり。で、意外に面白かった。次から次と目まぐるしくはあるけども、堅苦しくなく勢いのある文章で、読みやすかった。
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高校の頃読んだ。
大変面白かった。
赤茶けた文庫探せばある筈だ。
新刊が出たのは大変喜ばしいことだ。
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ストーリーによる、限りなく人間臭いローマの歴史。
本書は小説ではないが、もしかしたら小説以上に生き生きと躍動する登場人物たちに出くわし、小説以上に楽しく読める本かもしれない。
ローマ史には既に膨大な学術的な研究が存在する。
本書はそこには挑まない。あえて一面的な解釈と指を差されることを恐れないで流れを重視する。
主に同時代の歴史書などをもとに、思い切って登場人物をデフォルメし、当時のローマの空気を、歴史の流れを興味深く分かりやすく書いている。
暗記するのではなく、流れでローマの空気を理解できる、一般書としては名著中の名著だと思う。
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為政者を辿ることで、古代ローマの歴史を纏めた一冊。
著者は、カエサルもハンニバルも、人間的弱さにフォーカスしたシニカルな評価故に、歴代皇帝、英傑全員が愚帝の様だが、国家・仕組みとしてのローマを評価している。 “アリは愚かだが、コロニーは賢い。” 元老院が、帝国500年の栄枯盛衰を担ったとも読める。
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塩野七生の名作「ローマ人の物語」を読んでいない人にとっては、ざっと古代ローマ帝国の歴史を知ることができる。
それ以上に素晴らしいのは、著者のあとがきにある。
ローマ帝国のヨーロッパでの役割や、キリスト教に関する論評は、ローマ文明が1番というシンプルすぎる論評とは一線を画し秀逸。
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初めてしっかり歴史ものを読みました。
ローマの歴史についても予備知識がなく一回ではわからないことだらけだったので通読。
現代にも当てはまる感情や、価値観などいろいろと考えされられました。
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ローマの歴史は、とてつもなく長く、大作の有名な書籍が色々ある。
非常に読み応えがあるものが多いが、手軽に読むというわけにはいかない。
その点この本は、非常に読みやすい構成となっている。ローマの歴史をトピックスで綴っているのである。
例えば ”ローマの起源”とか”SPQR”、”ピュロス”、”ハンニバル”、”ルビコン河”、”アントニウスとクレオパトラ”、”ネロ”、”イエス”、”経済”、”娯楽”といった具合。
もともと連載ものだったものを、一冊の本とした為にこのような構成になっている様だが、興味のあるトピックだけを読んでも充分楽しめるので、良いんじゃないかと思う。
この本では、作者のウィットに富んだ人間観察眼が、古代世界の人間に血肉を与え、彼らを生きた人物として活写するのに成功している。多分、著者の波乱に富んだ人生経験に基づくものであろう。
最近では、日本でも様々なメディアでローマ史が取り上げられる機会が多くなってきたので、ローマ史のエッセンスを吸収したい方にはお勧めの一冊だと思う。