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経済政策の政治経済学 取引費用政治学アプローチ みんなのレビュー
- アビナッシュ・K.ディキシット (著), 北村 行伸 (訳)
- 税込価格:2,750円(25pt)
- 出版社:日本経済新聞社
- 発行年月:2000.12
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紙の本
なぜ最適な経済政策が実施されないかが理解できる
2001/01/22 15:51
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:WAKU - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、政策決定の舞台裏をジャーナリスティックに描いたものでもなければ、望ましい経済政策について論じたものでもない。原題の "The Making of the Economic Policy" にもあるように経済政策がどのように作られるのか、を理論的に分析したものの(展望)である。ゲーム論、特に契約論の知識がなければ本書を読みこなすのは難しいかもしれないが、実際に経済政策が決定されてゆく過程を理解にするのに役立つことだろう。
貿易政策を考えてみよう。経済学者なら誰しも自由貿易がもっとも望ましい政策だと教えてくれる。貿易を自由化し、パイを最も大きくした上で、不利益をこうむった利益団体に所得保障を与えるという政策はすべての国民をハッピーにする。
しかし、このような政策が実際に実行されることはめったにない。これを理解するには、政治過程を政治家や官僚といった政策決定者を代理人とし、国民や利益団体を依頼人とする「政策決定ゲーム」と捉えなければならない、と著者は言う。この「政策決定ゲーム」では、政策決定者は政策を立て、依頼人はそれに対する見返りとして、投票や金銭によるインセンティブを与えるという一種の「契約」が結ばれると考えるのである。
このような「契約」が結べるのならば望ましい政策が実行されるだろう。しかし、(ビジネスにおける「契約」と違って)政治的な「契約」を結ぶのは難しい。金銭を渡す契約は違法だし、政治家が公約をやっぶても法的には問題がない、また、ビジネスにおける「契約」では、たいがい一人の依頼人に対して一人の代理人なのに対して政治的な「契約」では、複数の依頼人が契約に影響を及ぼそうとする。このような「契約」を難しくするものを「取引費用」という。政策決定ゲームの均衡で理想的な結果が達成されないのは、取引費用が原因だと分析している。
このような見方に立てば、「市場対国家」という二分法は意味をなさなくなる、と著者は述べている。いかに望ましい介入政策であっても、それがそのまま実行されるわけではなく、政策過程を通さなくてはならない。すると、実行不可能になったり、本来のものから歪む可能性があるからである(また、まったくの自由容認はそもそもありえないと述べている)。政治過程を視野に入れない分析における最適な経済政策はベンチマークとして有用であるが、これからの経済政策の提案・評価は政治過程を織り込んでなされなければならないとも述べている。
紙の本
2001/2/25朝刊
2001/03/06 18:16
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:日本経済新聞 - この投稿者のレビュー一覧を見る
経済学的に正しい政策が、実際は必ずしも採用されないのはなぜか。本書は、経済政策生成をめぐる一見不可思議な政治過程を、ミクロ経済学の「取引費用」概念を用いて解き明かそうとする。広範な分野での革新的研究で知られるインド出身のディキシット・米プリンストン大学教授が、独ミュンヘン大学で行った公開講義に基づく一般向けの論文であり、欧米で最近の同分野研究の蓄積を整理しつつ新たな理論的枠組みを提示している。
著者によれば、「政治過程は直接の政策決定者に影響を与えようとする多くのプレイヤーを巻き込んだ複雑な戦略ゲーム」である。政治家や官僚に、業界、地域などの利益を守るために働きかけるロビー活動を思い浮かべればわかりやすい。「取引費用」概念を応用した「取引費用政治学」アプローチによれば、こうした政治過程は、「取引費用」が存在するがゆえに非効率とされる。同費用の縮小のために、政策決定者の国民への明示的な契約に基づいた約束、機会主義的な裁量を封じるために特定の政策執行者などに権限を「委任」する手段などが必要とされ、その有効性を、理論的な観点から論じている。
取引費用の存在の具体例として、米国の財政改革、関税貿易一般協定(GATT)の歴史を取り上げているが、わが国の政策決定の新しい枠組みである経済財政諮問会議や省庁再編などについても、理論の応用が望まれよう。
(C) 日本経済新聞社 1997-2001
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