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ショパンの生涯 決定版 みんなのレビュー
- バルバラ・スモレンスカ=ジェリンスカ (著), 関口 時正 (訳)
- 税込価格:3,850円(35pt)
- 出版社:音楽之友社
- 発行年月:2001.1
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紙の本
ポーランドの生んだ天才、ショパンの生涯は孤独なドラマである。貴重な書簡を含む待望の一冊
2001/02/07 18:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:廻由美子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ショパン〜最高に気高く香り高く、優雅にして大胆、古典美と前衛感覚をあわせもつショパン帝国の王者。あまたある下品でベタベタした演奏でショパンに媚びようとする輩はことごとくバカにされ、その門をくぐることすら拒絶され、ショパン帝国はますます燦然と光り輝いている。
しかし我々は常に気をつけてなければならない。なぜならば、数多いケバい演奏にあてられてしまい、王国の、作品のせっかくの光りが見えなくなってしまうかもしれないからだ。
この『ショパンの生涯』は気軽に読めるし、作曲家のニュアンスに近づくのに丁度よい。ケバケバした演奏をしばし忘れて、本物のショパン王国を垣間見ることができるのだからうれしいではないか。
しかし、なんといってもこの本の「ウリ」は「ポーランド語から直接日本語に訳した」という点であろうと思われる。ポーランドには言うまでもなく、御国の英雄、ショパンのことを書いた本が沢山でているわけだが、書かれている言葉はポーランド語、なかなかむつかしくきちんと訳せる訳者が少ないということがネックになり、我が国人気ダントツの作曲家でありながらも文献は充実しているとは言いがたい状況であった。ところが今回、ポーランド文化とポーランド語に精通する訳者、関口時正氏がこの状況を憂い、やっと重訳ではないポーランド語からの直訳本がでたというめでたい話なのである。
とにかく音楽にたずさわらない人にとってもショパンというのは魅力的な人物にはちがいなく、20歳で祖国ポーランドを出てから、革命のために二度と祖国の地をふむことなくフランスで「亡命者」として暮らし、貴族サロンの寵児となり、ご存じジョルジュ・サンドとの大恋愛、破局、病気、あまりにもはやい死など、彼の一生はドラマにことかかない。
本書はどちらかといえば一般むけの「ショパン物語」といった風であるから、音楽からはなれて、ひとりの天才のドラマとして読むのもおもしろいであろう。
ショパンの霊感に満ちあふれた、少々シニックな人物像、厳選された交友関係、サンドとの火花、けっこう家庭臭溢れる別れかた、絶対の孤独、などがショパンの書いた手紙や彼がもらった手紙、同時代の音楽家や批評家たちの証言などを織りまぜて綴られており、外見は弱々しいが、内面は芸術家魂につらぬかれ、針のように鋭いショパン像がうかびあがってくる。
しかし、現在、最高に美しいピアノ曲を書いた作曲家として知られるショパンの作品を「耳も裂けんばかりの不協和音」「恐ろしくねじくれ曲がった旋律・リズム」などと罵倒する評論家がいたり、ショパンの熱烈な支持者であったシューマンすらも「ソナタ変ロ短調」のことを「しかし、何といっても音楽ではないのだから、義理にもほめるわけにはいかない」と言ったりしているのだからわからないものである。あのショパンの名曲が当時は相当にゲンダイオンガクだったのだろうか。芸術というものは本当に奥が深い。 (bk1ブックナビゲーター:廻由美子/ピアニスト 2001.02.08)
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