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投機バブル根拠なき熱狂 アメリカ株式市場、暴落の必然 みんなのレビュー
- ロバート・J.シラー (著), 植草 一秀 (監訳), 沢崎 冬日 (訳)
- 税込価格:2,640円(24pt)
- 出版社:ダイヤモンド社
- 発行年月:2001.1
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紙の本
行動経済学もそれなりの水準に到達しつつあるということ
2001/04/06 19:27
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:FAT - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の原著は、昨年のNASDAQの株価が下がり出す直前に出版されており、その頃からエコノミスト業界の一部では評判になっていた本だそうある。絶妙のタイミングで世に出たことで、皮肉なことに本書は、米国の相場水準が「根拠なき熱狂」によるものであり、相場の大幅下げの「根拠」を逐一明らかにすることになった。いわば著者のシラーは、大恐慌の時のI・フィッシャー(そう言えば、フィッシャーもイェール大学の先生でした)とは全く逆の役回りを果たしたことになる。
ただ、本書の議論のポイントを日本風に言えば、要するに「株価は付和雷同によって形成される」という事につきる。こんなことは、ケインズが株式市場を美人投票と例えているように、昔からしつこく指摘されてきたことだ。相場が好調であった当時のアメリカでは、本書のメッセージには強いインパクトがあったのかもしれないが、はじけたバブルの後遺症に悩む目下の日本では、今更という感じがしなくもない。
もちろん、本書に知的貢献が全くないということではない。
本書はかなりの紙幅を割いて、「熱狂」の原因を分析しようとしているが、その分析のツールとなっているのが、行動経済学である。昨今だと、見た目には安手のノウハウ本のようではあるが、たとえば『賢いはずのあなたが、なぜお金で失敗するのか』といった本が、この行動経済学を踏まえたものとして公刊されるようになっており、この学問も一定の成果を出しつつある。
本来、この学問は、行動経済学は経済学の公理としてのホモ・エコノミクスの仮定を実証的に確認する必要があるという問題意識から発展してきたものであり、思弁的なものであったホモ・エコノミクス批判を実証的なものへと進化させてきた。この行動経済学を株式相場メカニズムと結びつけようとする学問的鋭意の部分については、一定の評価をすべきであろうし、逆に本書のような成果が出てくるということは、行動経済学が到達しつつある水準がそれなりのものになってきたということなのかもしれない。
紙の本
日本経済新聞2001/2/18朝刊
2001/02/23 00:17
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:滝田洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題である「根拠なき熱狂(イラショナル・イグジュービュランス)」は、グリーンスパン米連邦準備理事会(FRB)議長の米国株バブルへの警句である。同議長が疑問符を投げかけたのは一九九六年十二月だった。実際の株価はそれからさらに三年余りも高騰し続けた。
本書の原書は、二〇〇〇年三月に刊行された。その直後の昨年四月に、米店頭株式市場(ナスダック)のバブルは破裂した。日本に置き換えれば、バブルの頂点だった一九八九年十二月に、警鐘を鳴らしたようなものだ。
エール大学の経済学部教授であり、ニューヨーク連銀の諮問委員も務める著者の勇気は称賛に値する。タイミングの良さが紙価を高め、ベストセラーに顔を出したが、一読すれば明らかなように際物ではない。
インターネット時代の到来、ビジネス至上主義、ベビーブーマー世代による株式投資など、本書は株高を促した十二の要因を冷静に分析。投資家たちの自信過剰と楽観が熱狂を増幅するメカニズムを活写している。
投資に成功した人が道徳的にも優れているとみなされるようになり、出遅れた人はほぞをかむ。株式投資は精神的な満足感をも約束してくれる。単なる経済学の枠組みを超えて、文化的、心理的な要因にまで踏み込んでバブルという社会現象を解き明かしていることも、本書の説得力を増している。
効率的市場仮説に浸り、複雑な数式作りに淫(いん)するエコノミストたちは、バブルの渦中にあってしばしば熱狂をも合理化してしまう。彼らが見逃しているのは、「期待」のちょっとした変化によって右往左往する人間という頼りない存在である。設備投資や消費も「期待」の産物にほかならない。
「期待」の下振れを恐れているからこそ、グリーンスパン議長は年明け早々からあわてて金融緩和に踏み切ったのではないか。バブル崩壊後、十年たっても、投資家心理の機微が分からない日本の政策当局者やエコノミストたちこそ、猛省して本書に学ぶがよい。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000
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