紙の本
逆説的な美しさに満ちた戦争小説
2002/07/22 23:17
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投稿者:浅知 恵 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1942年、スターリングラードではナチス・ドイツ軍とソ連軍が激しい戦闘を繰り広げていた。そんな中、ソ連軍の狙撃手ザイツェフは戦争の英雄として新聞に書き立てられ、狙撃手養成の任務を与えられる。一方、この情報をつかんだナチスは、ドイツ軍の中でも最高の狙撃手トルヴァルト大佐をスターリングラードに送り込み、ザイツェフの暗殺に着手した。酸鼻を極める戦場で、二人の天才狙撃手は互いの力を探りあい対決するのだが……。
ドイツ軍歩兵たちによって<ラッテンクリーク(=鼠たちの戦争)>と呼ばれたスターリングラードの攻防戦は、ヨーロッパ戦線の中でも過酷な戦場として名高い。その戦場で対峙する二人の狙撃手は、育ちも性格も異なり、当然狙撃に対する考え方も対照的。だが戦場の非情さは万人に平等に訪れるのだ。
この小説を支えるのは、圧倒的な現実感、説得力なのだろう。それは単に実在の人物をもとに描かれているという点に負っているのではない。戦場の兵士ひとりひとりの背後に横たわる物語、いつ消えうせるともしれぬ魂の輝き、それらが至る所から湧き出し作品中に充満している。それゆえにこの物語は逆説的な美しさに満ちているのだ。
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第二次世界大戦中、スターリングラード攻防戦で実在した、ソ連軍のヴァシリ・ザイツェフという狙撃手を採り上げたこの小説。
ザイツェフの組織した狙撃手学校の生徒によって増え続ける被害に対し、
ドイツ軍はカウンタースナイパー、トルヴァルト大佐を送り込む。
トルヴァルトの任務はただ一つ、ザイツェフを殺すこと。
狙撃手対狙撃手の戦いが、スターリングラードの地で、静かに始まる…。
映画で『スターリングラード』という、エド・ハリスが最高だっただけの中途半端な作品がありましたが、それの原作っぽいです。
この作品は、『戦争というマクロな世界で起こる、狙撃手同士のミクロな戦い』という隙間を突いてきた…というだけの感想しか浮かんでこず。
いえね、ただ、戦場で姿を隠しながらの読み合いというのは燃えます。
もちろん、ザイツェフは実在した人物ですし、全くの嘘でもありませんが。
戦争モノとしては次作の『戦火の果て』が優れているし、
狙撃手対狙撃手の話としてはS・ハンターの『極大射程』の方が面白かったり。
…ハンターもアレが頂点で、あとは転げ落ちていく一方ですが。
…ということで、『こういう史実があったんだよ』というのを示すだけに留まってる感が。
もーちょい東部戦線の地獄っぷりが丁寧に丹念に念入りに綿密に書かれてたら、
ハァハァしながら読んで大興奮して悶絶してたと思うんですが(変態め)。
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映画「スターリングラード」と同じテーマを扱うが、内容は全然違う。上巻はトルヴァルトがスターリングラードに現れるまで。
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映画「スタ-リングラ-ド」を見てから読むと、情景がイメ-ジしやすいだろう。原作はよく書かれている。シベリア出身の狩人が人間を狩る。市街戦の様子が、ソ連とドイツ側双方が同時限で描かれる。恐いお話。
下巻ではドイツから、狙撃学校校長の親衛隊大佐がザイチェフ曹長を、倒すため街へ乗り込んで来る。トラヴァルト大佐。
物語の行方は?
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1942年第二次世界大戦転換点の一つとなったスターリングラードの戦いを描いた作品。ドイツ対ロシアの狙撃手の様子を史実に基づいてフィクションにして伝えている。
戦場の兵士たちの過酷な状況が表されており緊迫感がよかった。
小説を通して実際の戦いを知るのはとてもためになる。
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<上下巻を通してのレビュー>
第二次世界大戦における独ソ戦で、戦局を大きく左右した最大の戦闘であるスターリングラードの攻防。
凄惨な市街戦での前線を巡るナチスドイツ軍とソビエト赤軍のメートル単位の鬩ぎ合い。
それぞれの国を背負う二人の天才スナイパー。
ソ連軍ザイツェフ曹長と、ドイツ軍トルヴァルト大佐。
緊張感が漂う中、一気にその世界観に引き込まれる。
ザイツェフがトルヴァルトを倒し、
スターリングラードの攻防の次の段階に進むところで本書は終わっている。
余韻がいつまでも残っていい。