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紙の本
このシリーズは、続編が書かれてもおかしくないレベルのものだと思うんですが、その後はどうなったんでしょう。スキーの時代が終わったということでしょうか
2006/08/30 23:29
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
《八神村の村営スキー場で起きた四つの不思議な事件。その謎にプロ・スキーヤー大鳥安寿が挑む》連作推理。
私にとって笠井潔といえば、矢吹駆がデビューした『バイバイ エンジェル』との出会いが忘れられません。それから、笠井を一躍人気作家にした作品『ヴァンパイヤ・ウォーズ』。時代と言ってしまえばそれまでなのですが、昔はスパイ小説とSFを合体させた冒険小説が評判で、平井和正のウルフガイや、幻魔大戦など壮大なシリーズが評判だったことがあるのです。
その笠井がスキーヤーを扱った推理小説を書いたというのですから、驚き。BSつけた、世の中、変わった、ですね。ま、スノボでないところが、笠井の年齢といえば、言えるのですが・・・。
舞台は、スキー場の乱立とブームが去り斜陽気味の八神村村営スキー場。そこで起きた「空中浮遊」「屍体切断」「吹雪山荘」「白骨屍体」の漢字だらけで如何にもお堅い推理を連想させる四つの事件。斜陽のスキー場を舞台に、スランプに陥った推理作家がワトソン役となって、ダウンヒル・レーサー大鳥安寿の推理を描く、設定だけは軽めの連作推理。
村に進出した新興宗教 天啓教の関係者のリフトでの消失と空中浮遊、そして殺人と展開する最初の事件「空中浮遊」は、連作の全体構成が見えてこないので、若干論理が上滑り気味のところがあるのですが、後の三編と関連付けると実にうまく出来ています。
推理作家と女性の探偵という設定から、島田荘司の御手洗潔シリーズでの石岡のロマンスを連想するむきもあるかもしれませんが、あの的を外したような上滑りの甘さは全くありません。文章が硬質で、贅肉がないせいか、いわゆる情緒的なものは感じませんが、日本刀で切り裂くような切れ味を堪能できます。
また、新興宗教といえば、どうしても特定のものを思い出してしまうのは、現代日本人としては致し方ないところで、笠井がそれを意識しないはずもないのですが、それが安直に見えないのが笠井の力量でしょう。
それにしても『バイバイ エンジェル』で颯爽と推理小説の世界に登場した笠井も、もう五十を越えてしまいました。探偵矢吹駆が活躍するシリーズは、『オイディプス症候群』で或る意味頂点を極めた、という印象ですが、この安寿の登場する作品は、あの神学的な作品とは違った意味で代表作となる作品だと思います。
見事な推理の裏に哲学的な問いが隠されている、と思うのは、全共闘の闘士だったという笠井の経歴に、私が惑わされているせいだけではない、そう思うのですが如何でしょう。
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