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紙の本

ビルマ(ミャンマー)辺境に生きる山の民の生活を、ゲリラに参加しながら見つめたノンフィクション。

2001/04/09 18:16

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投稿者:挾本佳代 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ビルマ(ミャンマー)という国はあまり馴染みのない国だった。仏教に篤い国であるということぐらいは知っている。最近ではスーチー女史の活躍で政情が穏やかではないことも知っている。けれど、この国に生きている普通の人々の暮らしはほとんど伝えられてこない。まして、山岳地に住み、焼畑農業を行っている人たちの暮らしは、調査を行う文化人類学者か、ルポルタージュを書くためにそこに分け入った人でない限り、実際のところは目にすることはできない。
 本書の著者・吉田敏浩氏は後者のジャーナリストである。彼は1985年から1988年にかけてビルマ北部のカチン州とシャン州に取材で入った。ビルマは1989年に、国名をミャンマーというビルマ語での呼称に変えているが、吉田氏がこの地に足を踏み入れた時はビルマという呼称だったから、本書では国名がビルマで通されている。吉田氏は、1996年にこの『森の回廊』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞している。本書はそれに、新たに「あとがき」を加え再版されたものである。

 著者は単に旅行者としてビルマに入ったのではない。彼はビルマという国を、ビルマ人だけで優位に押し進めようとする国家として見ようとはしなかった。彼は当時、中央集権国家体制に対して自治権を求めるために戦火を交えていた、少数民族から成るゲリラ組織に加わり、ビルマという国の抱える問題を直に捉えようとした。というのも、著者は、祖先から営々と受け継いできた文化と生活様式を守ろうとする人々に共感したからだ。アジアの一角にはこのような人々がいるという事実を深く記すことを、彼は自らの使命にしたといっても過言ではないだろう。
 ゲリラ戦は常に行われているわけではない。野営生活を長く続けることの方が多かったという。そのため、ゲリラたちと話をする機会が多かった著者は、ビルマ軍が第二次世界大戦中に日本人が中国に対して行った破壊作戦を手本にしていることを知らされた。この破壊作戦は有名な「三光作戦」だ。殺光(殺しつくす)、焼光(焼きつくす)、搶光(奪いつくす)——この残虐な3つの行為がビルマでも行われていた。著者は打ちひしがれた。しかし老革命家の言葉に励まされた。「真実を記録して、日本の人たちに伝えてくれたまえ。……日本人は、多様な民族が住むこの国の複雑な現実をよくわかっていないみたいだからね」。著者のジャーナリストとしての魂をより強靱なものにしたのが、この時に抱いた言葉にならない憤りと悔しさだった。ここが本書で最も重要な部分だ。

 ゲリラは山岳部にも分け入る。どちらかというと山岳部での活動がメインになるといってもいいのかもしれない。そのため、ビルマ北部の山岳部で行われている焼畑農業を営む人々の暮らしが著者の目を通して語られている。普通、人類学者の調査でしか読むことのできない焼畑農業が記録されているのが興味深かった。4月下旬から5月中旬にかけて、陸稲を主として、粟やトウモロコシなどの種まきをする。6月の雨期は草取り。9月下旬に早稲が実り、11月に陸稲の収穫を迎える。12、1月は農閑期で、狩りや魚獲りを行う。人々の1年の暮らしは、焼畑の循環とともに行われている。この土地に根ざした人々の暮らしは、明らかにビルマ人優位の中央集権的な支配体制とは相容れないものである。ゲリラ戦と焼畑農業のコントラストがそれを際だたせている。 (bk1ブックナビゲーター:挾本佳代/法政大学兼任講師 2001.04.10)

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