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男の人の前で何もいえなくなる雪子にいらいらするとわかっていても、結局読み返してしまう一冊。蛍狩の描写の美しさには、心が震えます。
貞之助はできた夫ですねえ。
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有名な谷崎潤一郎の名作。
大阪船場の旧家・薪岡家の美人四姉妹の話。
名前は上から鶴子、幸子、雪子、妙子。
三十路を過ぎても縁談のまとまらない雪子の見合いを軸に、
季節の移り変わりと行事などが幸子の目線で書かれています。
鶴子は長女だけあって人情に厚い部分もあるしっかり者。
旧家出身で世間に若干疎い部分もありつつ
多くの子供を抱えるお母さんだけあって結構きついくらいだらしないことに反応もする性格。
物語途中で東京に引っ越してしまうので影が薄くなるものの
なんだかじーっとどっしり背後で存在感出してます。
幸子は下の妹にちょっと甘い部分もあったりする次女らしい次女。
甘いとか言いつつ若干自分の思い通りにならないことにイラっとしたり、
そのくせあっさりそれを流したり自分が可愛い気分屋の一面も。
こういう性格なので幸子視点の細雪は
幸子と一緒になって驚いたり感動したり怒ったりつい共感してしまいました。
雪子は・・・なんか面倒臭いお嬢様。
ほっそりしたかよわい外見と控えめで内気な性格で
「見合い相手なんて誰でもいいわ」とかいう感じでいるくせに、
結構これは嫌だのあそこが駄目だの土壇場で厄介だったりするのがこの三女。
でも普段は幸子の娘の悦子を構ってやって細やかに世話をするし、
いざ病人が発生すると看護婦よりよく尽くしたり女性らしいといえば女性らしい。
でも私は嫌いです。むきーってなる(笑)
で、末っ子の妙子。もうこれでもかというくらい末っ子気質の女性。
自分で稼ぐ手段を見つけたと言ってはアパート借りて暮らし始めるわ、
自由恋愛だと言っては姉達に内緒でそこらへんの坊と付き合ったりするわ、
着物より洋服が好きだと言ってあれこれハイカラなものを蒐集するわ奔放な性格。
嵐の様にあれこれ起こしてくる性質で
この話の中の事件の半分以上は妙子関係だと言っても問題ないくらい。
でも末っ子らしく人との付き合いがしたたかで憎めないんですよね。
彼女が最後にああいうとこに落ち着いたのはなんか納得。
こんな四姉妹。
ざっくりまとめると
「グチグチ思いつつ問題を引き受けてしまう天然の苦労性の幸子が
いいと言いつつなんだかんだゴネる雪子の縁談を一生懸命なんとかしようとするけど
長女の鶴子に肝心なとこは抑えられててそちらとの苦労が堪えない上、
台風のような妙子の奔放っぷりに振り回される」っていう話。
ただ、こんな生々しい感じの一方で、桜に白木蓮などの季節の花と共に
時節移り変わりが本当に美麗に描かれていてうっとりさせられる雰囲気も特徴。
舞踊や雛祭り、花見などの日本文化の描写も綺麗。
頁数は900ページ以上と少し長編ですがとても読みやすかったです。
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ある夏は安部公房、またある夏は坂口安吾。
今年の夏は谷崎潤一郎でした。
日本版若草物語!
順番的に、私はジョーで、幸子です。
それはさておき・・・
昭和に生きる上方中流階級の華やかな4姉妹。
サガンもそうだけれど、中流階級の話がなぜか好きな私。
戦争、という大きな波に翻弄されながら
(途中の大洪水も、市民の力ではどうにも出来ない『戦争』を仄めかしていると推測)生きる家族と谷崎自身が描かれています。
すごく面白かった!
検閲が厳しかった時代を経て
いまこうして多くの人々に読まれるこの作品に出会えてよかったと思います。
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妄想キャスティングしてみた(四姉妹を、今をときめく女優陣で。あくまで妄想)
長女:天海祐希→着物が似合ううりざね顔の美人 かつしっかりしてそうといえば、私の中ではこの人!!東京の人だけれど。
次女:藤原紀香→ネイティブ関西弁で姉御肌、そして迫力のある美貌。中あんちゃんのイメージに全てかなっている。と思う。ちょっとスタイル良すぎな気もするけれど。
三女:松たか子→吉永小百合の役どころが彼女を置いて他に見つかるだろうか、いや見つかるまい。蒼井優ちゃんもいいんだけど、年がなー。
四女:上野樹里→奔放で現代的で気が強そうなイメージがこいさんと重なる。更にネイティブ関西ということで(妄想上の)起用。
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雪子の左目の目尻に浮かぶシミ。あれは完全なシーニュで、当初からそれとしての価値しかない。川端の『千羽鶴』に出てくるやり手ババァ(主人公の父親の愛人の一人だったかな)の胸にあったアザはもっと肉感的だった。
ところで、この小説では「戦争」(時局、ナチズム)あるいは「死」(木下の死、妙子の伝染病)は常に底流にあるが隠されていて、いずれもある日突然に(まさに「洪水」の後から)湧き出す。普段はシーニュでしか現れないものが、やがてシーニュではすまされなくなってゆく。そういうものの代表が雪子のシミで、最初は「ほうっておくか、結婚すれば治ってしまうもの」であったが、結局「体の一部として身についてしまった」当のシミなのである。
中村真一郎によれば谷崎はプルーストを読んでいたらしい。本当なら興味深い。いずれにせよ、いらぬ「批評の誘惑」を喚起する小説。
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関西に住む四姉妹の日常生活を綴った話。
(長女は東京やったっけ?)
関西独特の言い回しとか。
風景&人物の描写が細かい細かい(笑)
関西人には馴染みのある風景やら地名やら(笑)
DVDでは、どんな風に表現されてるかを見てみたい作品。
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これが本当に男性の作家の筆によるものなのかと驚きました。谷崎潤一郎の名前を知らなければ間違いなく女性の作家の作品だと思っていたところです。
大阪の裕福な家庭に住む四姉妹を、主に三女雪子の見合い話を中心として描いていますが、四季折々の日本の情景やあれこれと気をもむ次女幸子の細やかな情緒、雪子と対照的に描かれている四女妙子の華やかな恋愛模様なと、多くの読みどころがあります。阪神大水害についての貴重なレポートになっているのも興味深いところ。
当時の時代背景もあるのでしょうが、今の感覚ではさして不良娘だとも思えない妙子の扱いの悪さが不憫に思いました。
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3巻分まとめた文庫で、びっくりの分厚さなんだけど、毎日少しずつ、朝ドラでも見ている気持ちですいすい読んでしまった。三番目の雪子の縁談話が中心で、日常の些細なことや、大事件にハラハラしたり、ヤキモキしたり。華やかな事もあれば、戦争の匂いも少しする。こんなに長編なのに飽きさせないってすごい。
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そうとうな長さですが、話が面白かったのでページを気にせずに読み終わりました。しかし、挫折する人も多数いる模様。エピソードにおもしろさを感じられればはまるかと。
雪子がウサギの耳を片足でひょいと持ち上げたことを作文に書かれちゃう話がすごく好きです。
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夏の長編読書.初の谷崎潤一郎である.長い長い文章で文字のぎっしり詰まった900ページ超の文庫に書かれているのは,端的にいえば,旧家の姉妹におこる恋愛,結婚話である.それが徹底的に女性の視線,女性の思考回路で描かれている(ように私には思えると言った方が正確か).家庭の中の出来事を描いた小説であるにも関わらず,ここには不思議なことに,とんでもないスケールを感じさせるものがある.その根源が上方に脈々とつたわる女性の文化なのであろう.とんでもなく懐の深い小説.これだから読書はやめられない.
あとは雑感.
多分この小説は高校生が読んでも面白くないだろう.これを楽しむにはある程度,年を取ることも必要なのかなとも思った.
もう一つ.幸子の夫の貞之助の余裕がすばらしい.こういう夫になりたいが私には無理だろう.
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ストーリーの起伏や展開を楽しむという小説ではないと思う。蒔岡姉妹と起居を共にして、生活する時間そのものに入り込む体験をするのが醍醐味の小説。暮らしの時間自体を出来る限り写し取ったものと考えると、この長さの意味が分かる気がする。
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これ程までに繊細で美しい日本語の本は初めてな気がします。移り行く四季と些細でかけがえのない日常を眈々と。谷崎潤一郎作品の中でも卓越していると思った。なんとも形容しがたい心がふるふる悦ぶこの甘い読後感は何なのだろう。先日ちょうど御盆に、谷崎潤一郎のお墓参りをしてきました。同時代を生きることは出来なかったけれど、こうして同じ日本語を操る者として彼の此の本に出会えてよかった。
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素晴らしく清々しい一冊。終わりを意識する間もなく最後のページにたどり着いた。ゆるやかな時間の、循環していく流れを感じた。
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これは昔から思っていたことだけど、東京は男社会で、関西は女社会だと思うんです。京都しかり大阪しかり。女性は美しい。和服美人は言うまでもない。芸者さん舞妓さんといちゃいちゃランデブーしたいなあ。おっと、本音がつい出ちゃったぞ。男より女が好きな私でした。
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繊細な日本の美を上方の文化、風俗を加えて緻密に表現されている。四姉妹のうち次女の幸子を中心に大人の日々とその中での成長を描いている。