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美と恍惚、それと退廃。50pほどのお話が2編だけのちっちゃな本です。
お話がシンプルなせいか、ディープなんだけどどこか童話的な雰囲気。
古い小説だけあってか読み慣れない言葉が満載で文章としては取っつきにくいんだけど、雰囲気だけで情景が読めちゃうのでそれでも楽しめます。
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ビアズリーに似た雰囲気の挿絵が多く入った幻想小説。
収められた二篇はどちらも伝説めいた幻想的な話だったが、どちらかというと「魔術師」が好み。
谷崎の文章はやっぱり艶やかで美しい。毒気も少ないし、文章の美しさにゆったり酔えた。
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話の内容よりも文体の美しさを鑑賞する本。
挿絵がまた素敵です。
この人は本当、女性の美を書き出したら止まらないですね。
11.05.10
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谷崎の作品で、これ程に情景と色彩を意識した作品は無いだろう。
文学と云うよりも絵画と云う芸術に等しい、オスカー・ワイルドの"サロメ"(或いは"ドリアン・グレイの肖像")を想わせる箇も屡々見られる劇的な作品である。
表紙絵・挿絵の水島氏の作品も、"サロメ"にあるビアズリーの作品の雰囲気を意識した、日本特有であって、幻想的・異端な美の描写が何とも云えず文面を誇張する。
"人魚の嘆き"では、憂う情や退屈の苦痛さえも情景として色彩と変える様で、此処では特に水島氏の作品が活きている。
美麗で繊細な描写に絶句する。
"魔術師"も又、感情よりも情景を意識した作品であるが、これはまた別の悲劇を映している様に感じた。
最上の美を有った者こそ真の孤独者であるのだろう。妖艶たるは即ち孤高である。幻惑させ得る魔術師は現実から隔絶され、最も哀れな存在であろう。
対照的な"女"は最後に醜悪な姿に変えられるが、其れは誰かを愛し愛される事の出来る女への魔術師の嫉みでもあり、羨望でもある様に感じた。
対極の存在を魔術を以て、美と醜と云う両極に、虚と愛の両極に、容貌でさえも変えて仕舞う。酷く悲しい噺。
全体の作品としては、矢張り小説としての評価は低い様に想う。
芸術としては魅力のある物で、評価は4にしておく。
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江戸川乱歩や横溝正史にも影響を与えた耽美主義、悪魔主義が全開の谷崎潤一郎の両作品。今、読むと言葉の問題や感じ方の違いがあるので古色蒼然となってしまうのは、否めないけど、それも含めて本作の魅力なのではと思ってしまいます。また、本文庫に収録されている挿絵も綺麗です。題材に選ばれているものが人魚や魔法使いという事で、大人のための寓話と言った感じがしました。寓話だからって、決して子供に読ませちゃダメですよ。
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マイナーな系列に属するラインナップかと。
解説が中井英夫先生だったので、
ちょっと得した気分(* ̄m ̄)
こんな言い方もアレですが、
お話としてはそんなに……もにょもにょ(笑)。
でも「魔術師」の雰囲気は乱歩の先を行っていた感じで、
なかなかです。
全面に付された水島爾保布画伯の
ビアズレー風の挿画にウットリ( 人´∀`)
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人魚に夢中になる南京の貴公子を描いた「人魚の嘆き」.一組の男女が魔術師のもとに惹き付けられていく過程を幻想的に描いた「魔術師」の二編の短編.谷崎潤一郎を読んでいるというより,芥川龍之介を読んでいる気分になった.
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たっぷり挿し込まれた水島爾保布挿絵がふつくしい・・・!内容自体は後の谷崎自身も赤面モノというのが分かるTHE幻想耽美。めくるめく極彩色絵図に乱歩が影響されたというのも納得。個人的には引き出しの一つとして読んで損無しでした。ゆったりした字組みにして函入りの頑丈な絵本風にすると女子は喜ぶと思います。
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「人魚の嘆き」は物語の設定は面白かったけど、その他の点においては期待外れだった。この作品に対して一体どのような評価がなされているか気になるところ。
「魔術師」はさらっと読んだけど、良くも悪くも江戸川乱歩的という印象。「人魚の嘆き」よりは面白かった。
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【人魚の嘆き】
放蕩の限りを尽くすうら若き貴公子が女や酒に飽き飽きし、「冷えかかった胸の奥に熱湯のような感情を沸騰させたい」と願う様に共感してしまった。
金さえあれば誰もが出来るような、ありふれた遊びはつまらない。
今まで体験したことのない変わった遊びを追い求める。
博識で美形。幼いころからすりよられ、誉められなれているので、美貌や金目当ての者に騙されることもない。
ぼんやりと頭に霞がかかるつまらない日々を打破してくれたのは、旅人が運んできた人魚だった。
【魔術師】も美しい文章で読みやすい物語風。
大正6年に発表。
装丁と中の挿絵、文字装飾がレトロモダンで素敵。
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文章が艶やかで、挿絵は妖艶。
「私の体は魚のように冷かでも、私の心臓は人間のように暖かなのです」ー 46ページ
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江戸川乱歩や横溝正史が受け継いでいった世界観。
不可思議で妖しげな美の世界へ誘われます。
読めない漢字や、意味の分からない言葉も多々ありますが、それがかえって、物語に格調高さを演出していると思います。
話としてはさほど面白いものではないのですが、美しい文体が支えている。
究極の「美」というのは空想の中にしか存在しないのかもしれない。
視覚的なモノではなく、モノから間接的に感じるものが「美」なのかもしれない。
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書店で平積みになった表紙を見て、気が付いたら買っていました。
絢爛で幻想的。そこが気に入っていますが読むタイミングによっては過剰に思えることもあります。
真夜中の暗い部屋でぜひ。
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わずか二編を含んだ華奢でレトロな
文庫本の風情が美しい。
静かに書棚の片隅に眠らせて仄暗い
時間にそっと手にとる。
そんな、まとわりつく様な芳香が
似合う。
本編は遡った時代の退廃が息遣い
となってエレガントな作品。
解説も秀逸。
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部分的に綺麗だと感じる箇所はありましたが、
全体を通してその高まりが続いているとは言い難く、
習作のような印象を受けました。
こんなもんじゃないだろうというのと、
はじめて谷崎潤一郎を読むなら、
ほかにもっといい本があるだろうということで、星ひとつで。
あ、随所に挟まれる挿絵は良かったですね。雰囲気出してます。