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あやしい絵展で水島爾保布の人魚の嘆きの挿絵を見て、帰りに買いました。谷崎や耽美派には最近ハマっていたけど、これは幻想小説の色が強いように思えました。作品の怪しさに、特に魔術師の世界には深入りすると戻ってこられなくなるような没入感があり、それがゾクゾクとする魅力でありました。
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水島爾保布の細微で流麗なカバーや挿絵もそうですが、『人魚の嘆き』『魔術師』は、主にイギリスの天才夭逝画家オーブリー・ビアズリーや、ワイルド等の世紀末文学の影響を色濃く受けたエキゾチックな風情に仕上がっています。エキゾチック…と言いましたが、まるっきり外国風情か言われればそうではなく、「美」を表現するのに多用されるペダントリーに満ち満ちた語彙や、数多の香水の名前、美食、珍酒の羅列などは、やはり「耽美派」と呼ばれた谷崎潤一郎という作家にしかできないと思います。要は、西洋への憧憬を日本文学という形で表現している谷崎潤一郎がスゴすぎる…! ということです。個人的に谷崎潤一郎の短編で好きなのは、ダントツでこの二篇です。中井英夫の解説も素晴らしいかったですね。
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谷崎の初期作品。「人魚の嘆き」と「魔術師」はどちらも大人のための童話といった趣きがある作風で、豪華絢爛に飾り立てた文章で構築されています。話の筋は単純だけれども、贅の限りを尽くした煌びやかで色彩豊かな言葉によって物語に不思議と奥行が感じられます。作品の評価はあまり高くないようですが、谷崎らしい美意識に貫かれた本作は個人的にはお気に入り。ビアズレーふうの挿絵も素敵です。
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旭屋書店の特設コーナーで見付けた文庫。その時は、手に入りにくい書籍特集が組まれており、美しい装丁と谷崎の名に惹かれて購入した。
満州が栄えていた頃の南京が舞台である「人魚の嘆き」。
由緒ある血筋、山のような財産、世にも珍しい美貌と才智を持つ若い貴公子の贅沢な悩み。
商人から人魚を買うが…。
谷崎は西洋に憧れがあったんでしょうかね。。。
本書は初めての谷崎潤一郎には不向きだけれど、異色作ならではの面白味はある。
サロメの挿し絵(オーブリー・ビアズリー)のような水島爾保布(みずしまにおう)の挿画は妖しく耽美で、ルビがふられていないと読めない漢字が並ぶのも、このお伽噺の世界に迷い込む手伝いをしてくれる。
続く「魔術師」でも、まず舞台設定で読者を迷わす。
異色作とは思うけれど、谷崎潤一郎の妖しく美しい世界は存分に味わえる。
少し変わった、男と女の愛のかたち。
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どっちもわりと好き。
お話。って感じだったなぁ。本は絵本だったとかなんとか。解説によると。漢語表現が多くて難しいところも多かった。
人魚の嘆き、商人の言葉が本当なら貴公子は、ヨーロッパでも再び無気力な生活を送るのだろうか。いっときは新しいものに囲まれた新鮮な生活が待っているのだろうが、人魚の美しさに適うものはないことに気づくのだろうかと思った。人魚の美しさを回想して思い出の中に生きるのだろうか。
魔術師。女側ではなく、男側が魔術師に陶酔するのか。切ない。女の自己犠牲に胸を打たれる。自身を一度捨てた男のために半獣になることを乞い願うとは。公園の描写をしっかり読み込めなかった。疲労で難しい言葉を頭の中に入れられなかった。どうやらギラギラしているということはわかった気がする。