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『源氏物語』の現代語訳や『細雪』などから、谷崎といえば一般に日本古典への回帰と和風のイメージが強い。しかし、ここでの谷崎は別人の如く違った風貌を見せている。すなわち、モダニストの谷崎である。しかも、大正期のロマネスクを身に纏いつつ。本書は19世紀末にパリで刊行されたワイルドの『サロメ』が強く意識されているようだ。表紙と挿絵は水島爾保布のものだが、これも明らかにビアズリーだ。「人魚の嘆き」は、谷崎の描く物語も、また水島の絵にも陶酔的なシノワズリーが加味されている。一方の「魔術師」は究極のマゾヒズム小説。
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<人魚の嘆き>は初読。<魔術師>は既読だけど、挿絵付きは初めて読んだ。再読でももちろん美しいな。挿絵がまた素敵で、幻想的な童話のよう。薄暗い妖しみに満ちてて大好きな二編!
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むかし話の異国と都会の街、相反する舞台の物語がならびますがどちらとも共通する艶やかさがありました。童話調、短篇ということで谷崎のなかでも読みやすい本ではと思います。全体にただよう人ならざるものの蠱惑的な雰囲気は澁澤龍彦の『狐媚記』などにも近しく感じました
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友人から借りた本。
私が思っていた谷崎のイメージとはずいぶん違った。綺麗で、でも明るくない。好き。
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所謂、言葉を楽しむ作品。ストーリーや登場人物云々というものではなく、谷崎潤一郎が表現している、言葉の美しさを楽しめた。
他レビューを拝見していると、耽美派と呼ばれる反自然主義文学の一つに位置付けられている作者(若しくは作品)ということで、なるほど、これが耽美というものなのかと新たに学ばさしてもらった。
しかし、どちらかというと言葉の美しさよりも言葉の巧みさを私は欲しているから、また気の変化ぎ起こった時、谷崎潤一郎の他作品を読んでみようと思った。
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挿絵や表紙のイメージとは合わない作品が最近多いように感じる。個人的に漫画は好きだけど、その絵柄が表紙の作品は内容がどんなに真面目だったり、硬派だったとしても手に取れない。(ライトノベルならともかく)
読み進めてもその絵柄で頭の中をキャラクター達が動きまわってしまうい気が逸れてしまうからだ。
その点この表紙と合間合間の挿絵は作品を壊したりしない。むしろ美文調の作風を二人の絵師は生かすのだ。引き立て役に徹するのではなくなくてはならないものとしての存在感を見せつけてくる。
正直、上手く言葉にならない。難しいわけじゃないのだが、いざ感想を、と考えると途端に自分の拙い語彙では表現しきれずもどかしさに襲われてしまう。
ただ一つ、氏の作品を読めば日本語の語彙の豊富さ、美しさを再確認させてくれるとハッキリ言える。最近の小説も面白いが氏のような優美な日本語を巧みに扱える作家がすぐに出てこない。
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挿絵とあいまって、2つの話どちらも面白く読んだ。美しいものについて、ここまで明確なものを訴えてくる作家の表現は今日日ないだろう。
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「人魚の嘆き」と「魔術師」の二つの短編を収録。人魚、あるいは魔術師というそれぞれの美に取り憑かれた男が、何もかも擲ってでも美を求める姿を描いた話。
耽美文学の真骨頂とは思うが、力の限りに美文調なので読みにくい。
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人魚の嘆き・魔術師
(和書)2010年04月01日 15:10
1978 中央公論社 谷崎 潤一郎
耽美小説はあまり好きではないけど、これらの作品は面白かった。
漢語など多用されていて読むのにとまどうところが多かったが短い作品なのでそれほど苦にはならないと思う。
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リズミカルで美しい谷崎の文章の中でも特に何度も繰り返し読みたくなる。美に全てを捧げることのできた大正だったからこそ生まれた耽美派の真骨頂。語りの美しさ。清朝の時代、南京の貴公子が美しき人魚に惑う「人魚の嘆き」と恋人同士が魔術師に魅せられて半羊神と化していく「魔術師」。この世のものではないほどの美しさの極みを流麗な文章で表現する。その美は幻のように儚いが、幻だからこそその中にいつまでも留まれることを語る。この「魔術師」と芥川の「魔術」とが混在してあの街を彷徨う夢を昔からよく見る
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「美を得るためには地の涯まで追い求め、身を滅ぼすことも半羊神に変ずることも厭わぬ」というのが主題らしい。
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あやしい絵展で水島爾保布の人魚の嘆きの挿絵を見て、帰りに買いました。谷崎や耽美派には最近ハマっていたけど、これは幻想小説の色が強いように思えました。作品の怪しさに、特に魔術師の世界には深入りすると戻ってこられなくなるような没入感があり、それがゾクゾクとする魅力でありました。
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水島爾保布の細微で流麗なカバーや挿絵もそうですが、『人魚の嘆き』『魔術師』は、主にイギリスの天才夭逝画家オーブリー・ビアズリーや、ワイルド等の世紀末文学の影響を色濃く受けたエキゾチックな風情に仕上がっています。エキゾチック…と言いましたが、まるっきり外国風情か言われればそうではなく、「美」を表現するのに多用されるペダントリーに満ち満ちた語彙や、数多の香水の名前、美食、珍酒の羅列などは、やはり「耽美派」と呼ばれた谷崎潤一郎という作家にしかできないと思います。要は、西洋への憧憬を日本文学という形で表現している谷崎潤一郎がスゴすぎる…! ということです。個人的に谷崎潤一郎の短編で好きなのは、ダントツでこの二篇です。中井英夫の解説も素晴らしいかったですね。
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谷崎の初期作品。「人魚の嘆き」と「魔術師」はどちらも大人のための童話といった趣きがある作風で、豪華絢爛に飾り立てた文章で構築されています。話の筋は単純だけれども、贅の限りを尽くした煌びやかで色彩豊かな言葉によって物語に不思議と奥行が感じられます。作品の評価はあまり高くないようですが、谷崎らしい美意識に貫かれた本作は個人的にはお気に入り。ビアズレーふうの挿絵も素敵です。
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旭屋書店の特設コーナーで見付けた文庫。その時は、手に入りにくい書籍特集が組まれており、美しい装丁と谷崎の名に惹かれて購入した。
満州が栄えていた頃の南京が舞台である「人魚の嘆き」。
由緒ある血筋、山のような財産、世にも珍しい美貌と才智を持つ若い貴公子の贅沢な悩み。
商人から人魚を買うが…。
谷崎は西洋に憧れがあったんでしょうかね。。。
本書は初めての谷崎潤一郎には不向きだけれど、異色作ならではの面白味はある。
サロメの挿し絵(オーブリー・ビアズリー)のような水島爾保布(みずしまにおう)の挿画は妖しく耽美で、ルビがふられていないと読めない漢字が並ぶのも、このお伽噺の世界に迷い込む手伝いをしてくれる。
続く「魔術師」でも、まず舞台設定で読者を迷わす。
異色作とは思うけれど、谷崎潤一郎の妖しく美しい世界は存分に味わえる。
少し変わった、男と女の愛のかたち。