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頭蓋骨のマントラ 上 みんなのレビュー

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みんなのレビュー10件

みんなの評価4.3

評価内訳

  • 星 5 (3件)
  • 星 4 (4件)
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  • 星 1 (0件)
6 件中 1 件~ 6 件を表示

紙の本

2002年このミス14位、週間文春傑作ミス6位。ミステリーという枠より、永遠の命と限りない富を求め続けてきた人類多くに対し、別の価値に貫かれてきた「チベット」を読み解くために読みたい。

2002/01/31 11:20

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 この本、まずタイトルに強烈に惹かれた。
 「頭蓋骨」というのは、葬礼として宗教に結びつくけれど、どちらかというと自然科学的な響きのある言葉である。そこに「マントラ(真言)」という密教の言葉が被さる。アンビヴァレンスな印象で、科学と宗教のせめぎ合いのようなものが感じ取れた。
 期待しながら上巻を読み終えてみると、やはり西欧の近代的価値観とチベットの時空を超越するような価値観が、鉱山の現場で衝突している。
 資本をもって乗り込んできている米国の開発会社の技師と、神聖な山にダイナマイトで穴を開けたので魔神が目覚めると怯えるチベットの住人たちの対立する場所で、頭部のない死体が発見される。それが発端である。

 しかし、単なる二項対立でないところが、この小説の読み応えを増している。近代化を推し進める中国が二項の間に割り入っているのだ。
 神を信仰させるのではなく人民解放軍を信仰させることで大国の仲間入りをしていきたいと願う政府にとって、チベットの少数民族は中国の鬼っ子のひとつである。
 米国の資本力・技術力を借りることなしに自力での開発は進められないが、政府の落ち度はじめ外国人に立ち入ってもらいたくない領域というものがある。そのグレーゾーンを白黒はっきりさせたいと願う男女の登場人物ふたりが輝きを放っている。

 主人公は、中国人の単(シャン)という男。かつて中央政府の大物が絡んだ汚職事件を告発したかどで経済部主任監察官というエリート職を解かれ、北京を追われた。チベットの奥地の収容所で強制労働に痛めつけられる毎日であるが、同じ囚人の立場にあるチベットの人びとの敬虔な祈りに安らぎを感じている。
 この単が、囚人の立場でありながら、州の軍最高責任者のいかなるもくろみあってか、頭のない死体を殺害した者の調査の命を下される。気が進まないが強制命令を拒むわけにいかない。
 中国人の探偵が主人公なんて、すごく珍しい。おまけに、この中国人は道教の薫陶を父に受けながらも英語教育も受けたというコスモポリタンである。国際派ビジネスマンとして長く中国と仕事をしてきた作家の、中国に対する深い思いが結晶している。
 この単という人物の魅力を発見しながら、チベットの奥深い世界に触れていくのが女性技師のファウラーである。曲がったことやなれあい、汚職が許せないという働く女性の生真面目さや潔癖感の典型が出ていて頼もしい(田中真紀子元外相は、権力保持に熱心な薄汚いおやじたちに潰されて残念だったな)。

 誰が殺したのか、何で首から上がないのか、何を隠すために行われた殺しなのか…といった謎に引き摺られて、するすると読まされてしまった上巻である。確かにミステリー小説なのだけれど、そういった興味と並行して、実に多くの要素に触れさせてくれるのが楽しい。
 漢民族と満州民族が争っていても、四人組が権力を席巻しても追放されても、高山で変わらずマントラを唱え続けていた。信仰を試されているだけだから、何年も沈黙を守るのも死んでいくのも当たり前のこと。魂を飛ばせるワザも会得できるなど、密教の精髄や奥義が私には一番の興味であった。それを表現するのに中国と西欧が置かれ、殺人事件が起こされたのではないだろうか。 

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紙の本

チベットを舞台とした異色の秀作

2001/06/03 21:11

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:エンドルフィン - この投稿者のレビュー一覧を見る

 探偵や刑事が主人公を勤めないひねったミステリの中には、囚人がわけあって捜査に協力するといったストーリーのものがある。エディ・マーフィー、ニック・ノルティが主演の映画「48時間」もそんなお話だった。その意味では、まったく目新しい物語ではない。しかしだ、その舞台がチベットとなると話は違う。そう、2000年のアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀処女長編賞受賞作、エリオット・パティスンの「頭蓋骨のマントラ」である。

 かつて中国経済部の監察官として汚職事件などの捜査を行っていた単道雲(シャン・タオユン)は上層部の逆鱗に触れ、今ではチベットの強制労働キャンプでの生活を強いられている。しかし、その作業場の近くで首のない死体が発見される。おりしもこの地域の検察官が不在のため、捜査経験のある単が捜査を命じられることになる。単は監視役の軍曹、助手役のチベット青年の三人で捜査をすすめるが、やがて最近連続して発生している中国高官の殺害事件やチベット内の反政府過激派の存在などが浮かび上がってきた。しかし、一方で山奥の隠遁僧が容疑者として逮捕され、裁判までに真相をつきとめる必要にせまられるのだが…。

 なかなか重厚な作品なのだが、ミステリとして難を言えば、ストーリーの展開が理解しにくい。単が聞き込みにあたる人物は、硬直した中国の官僚やチベットの僧侶たちで、その会話ときたら、それこそ禅問答のようなもので、単はわかった気になっているが、読者のこちらは一体何を言っているのかピンとこないことが多い。そんな欠点はあるものの、充分に楽しめる秀作といって良い。監視役の軍曹や中国に同化しようとしているチベット青年の心の揺れ、チベットの歩んだ苦難の歴史などが丹念に描かれており、興味をひきつける。
 そして何よりも全編にわたって底流をなす仏教的な精神が日本人にはあっているように思われる。ストーリーと無関係に読んでもなかなか含蓄にとんでいる言葉が多い。単道雲は、厭世的な態度をとり、協力を拒む女医に向かって言う。

 「あなたは世の中に幻滅しているのではない。人にそう思わせようとしているけれど。実は自分自身に幻滅しているんだ」

 なお、海外ミステリに関心のある方は、小生のホームページThe day of wine and mysteryを一度のぞいてみてください。

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2004/10/09 15:10

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2006/03/13 01:37

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2010/07/13 22:56

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2012/12/21 00:44

投稿元:ブクログ

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