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紙の本
先進国化を目指しての構造改革が一時挫折した韓国,金大中政権の政策は着々と成果を上げているという
2001/06/05 18:17
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投稿者:松本 厚治 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1990年代に著者が経済雑誌に寄稿した幾つかの論稿に手を入れ,書き下ろしの体裁にした。詳しく書き込まれており,3件のインタビューをはじめ要人の発言が数多く盛り込まれ,臨場感のある内容のものに仕上がっている。しかし基本的には,その時々に書かれた独立の論文の寄せ集めの感は免れず,90年代全体を統一的視点から捉え直したものではない。この時代,韓国が先進国への急速な接近から一転して経済危機に陥り,21世紀初頭の今なお新たな発展の方向を模索中という,劇的な変化のあった時であることを考えれば,その総括的な分析が期待されるが,それに答えるような内容のものとは言い難い。時代の語り部の記録といった趣だ。
たとえば,歴代政権が取り組んできた財閥改革と,それへの財閥の反応にかなりのページが割かれている。何回も同じことが繰り返されているような印象を与え,10年を通観してどのような方向に向かっているのか,何が変わり何が変わらないのか,流れが見えてこない。金大中大統領のイニシアチブを高く評価しているが,2001年前半の時点では財閥改革は停滞状態に陥っているとみなさざるを得ないのが実情。韓国金融産業に改革的変化が起きたとしている点(P220以下)についても,これはどう見ても過大評価である。エピソードは豊富だが,通時的比較と構造の分析が手薄なためか,その時々の事件の印象に引きずられているようなところが,ないとはいえない。
日韓経済摩擦について日本側の逃げ腰を批判している。これも構造的な問題が捉え切れていないからではないか。在日韓国人の執筆者にしばしば見られるように,一方的に韓国側の言い分に組しているように見うけられるが,韓国の識者の実態認識もかなり改まったはずで,その点についての目配りがないのが惜しまれる。
分析の書としては物足りない。しかし,時代の語り部が淡々と書き残した記録として見れば,それなりに価値のあるものである。
(C) ブックレビュー社 2000-2001
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