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紙の本
読書の折々、これまで見過ごしていた事柄を引くと、必要十分な知識が即座に提供される。読書人必携の辞典。
2002/01/16 22:16
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中条省平 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「辞典」は引くものであって読むものではない。そして、手軽に引くためにはコンパクトであることが好ましい。この「世界史辞典」は、コンパクトな引き易さに関して、最高の水準に立つものだろう。縦2段組みの1244ページに、読みにくくない程度に活字がぎっしりと詰まり、手にした感触もしなやかで、持ち重りもしない。
それでは、中身のほうはどうだろうか。この種の中辞典を使うのは、新聞や本を読んだりしているとき、その内容とは直接関わりがないのだが、ちょっと気にかかった言葉を引きたいという場合が多い。本格的にその事項について調べるためには、図書館で百科事典や歴史大事典を引くか、専門書を読まなくては話にならないからだ。
例えば、いま私は、マイケル・オンダーチェの新作小説『アニルの亡霊』を読み終わったところだ。オンダーチェは、アカデミー映画賞を受賞した『イングリッシュ・ペイシェント』の原作者で、スリランカの出身である。『アニルの亡霊』はスリランカの内戦を題材にした小説だが、まったくお恥ずかしいことに、私はスリランカで現在も内戦が続いていることを知らなかった。そこで『角川世界史辞典』を引いてみた。
「スリランカ」の項目に、この国の人口構成が、「シンハラ人(74%)、タミル人(18%)、ムスリム(7%)」で、シンハラ人が仏教徒、タミル人がヒンドゥー教徒、とあるから、スリランカは民族国家ではなく、東欧によく似た多民族、多宗教国家だと分かる。それでは、なぜ、内戦状態に突入したのか? それには、「タミル分離独立運動」を見よ、とある。その項目によると、シンハラ人政権によるシンハラ中心主義にタミル人が反発したのが原因であった。72年に憲法改正し、国名セイロンをシンハラ語のスリランカに変えてしまったのも、シンハラ中心主義の一環だった。初めは、タミル人の主張は連邦制採用とタミル語公用化だったが、シンハラ政権が仏教を準国教にしたため、タミルの分離独立運動となり、現在も「政府軍と激しく戦っている」という。
こういう「常識」(!)は、オンダーチェの本には書いてないんですね。たった2項目で『アニルの亡霊』の理解がぐっと深くなり、ほんと勉強になりました。今後とも、机上から離せない一冊である。 (bk1ブックナビゲーター:中条省平/フランス文学者・学習院大学教授 2002.01.17)
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