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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
高校の世界史で、科挙という中国の試験のことを習って以来、日本の昔の司法試験以上だなあ…と関心がありました。そして、その後、この本に当たって、読了したのですが、……。なんか、昔のこの本とやや違っているような?
紙の本
受験戦争
2001/03/13 01:35
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投稿者:谷池真太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
たった一枚の紙切れが、自分の運命を決めてしまう。それが、受験である。こんな理不尽な制度をいったい誰が決めたのであろう。
現代の日本の受験戦争の起源はチャイナの「科挙」という制度に端を発している。科挙に合格すれば多額の年俸と最大級の栄誉が与えられ、その受験資格は誰にでも、与えられる。これは画期的なことであった。血縁を廃し、“完全実力主義”によって採用を決める。最高の理想を実現しようとして作られたのが科挙であった。
だが、制度は腐敗する。本来、実力を判断する材料であったはずの科挙が、試験のための試験になってしまい、制度疲労を起こしてしまう。やはり、人の実力をはかるということは簡単ではないのだ。
本書は、そういった「科挙制度」とそこで繰り広げられる人間ドラマの悲喜交々が書かれている。
現代でも人間をどうはかるかというのはやはり大きな問題である。現代では受験戦争に加えて就職戦争まであるのだから。
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中国って面白い。
歴史は繰り返すというけれど、中国史を見れば人間の悲喜こもごもすべてがすでにあるような気がする。
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科挙試験は地方貴族(軍閥)を押さえるために作られたシステムである。中央から派遣する役人を「養成」ではなく「選抜」するシステムである。養成とは教育機関であり、中国では公の教育機関は無かった。このシステムの弱点は新しい西欧の技術に対して何も出来なかったという一点に尽きる。当たり前だ。これは官吏登用試験であり養成するための準備段階としての試験ではないからである。受かったらそこで終わりである。あとは出世争いに明け暮れる。ただこの試験がとても難しい。まさに試験地獄である。
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一般教養書でしかも宮崎先生ということで、読みやすくもなかなか専門的。
口絵でいきなり「カンニング用下着」(言っとくが、パンツじゃなくて肌着の類だ)の写真なんか載ってるあたりがこの本の味だと思う。
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学術論文なので、文章は堅いが、にもかかわらず面白く読める。科挙にまつわる様々な逸話が特に興味をそそる。
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科挙が大変な試験だったということは知っていたが、こんなにたくさんの試験を積み重ねるとは知らなかった。色々なエピソードが挿入されていて予想したよりずっと面白かった。科挙制度が中国に与えた影響がもう少し書いてあればよかったけど、「もっと知りたい」と思わせるほど内容が良いってことなのだろうなあ。
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参考書として読んだのだが、
かなり良い本。
科挙の歴史からこぼれ話まで。
科挙受験者に比べれば、私の受験体験なんて小さい、小さい。
そういう話がたくさん出てくる。
面白い。
なにより
硬質な文章が素敵。
そこらへんの作文本読むよりは、この本を読んだらいいと思う。
もしかしたら「日本語の作文技術」読むよりずっと参考になる。
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おもしろかった。
「科挙」=試験で片付けられてた制度にこれほど複雑で精密なシステムが存在してたことには驚いた。
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学生時代、ゼミの課題で読んだ。日本でも受験地獄と言われていた時期があったが、それとは比べ物にならないほど過酷な試験制度であった。読みながらそれを実体験したような気になる。
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私たちは何かしらの受験を潜り抜けて今があるのではないでしょうか。
科挙は昔の試験地獄。現代のお受験社会につながる内容です。
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大学時代に読まねばならないと思っていた本。やっと読めたのがうれしい。
中国の科挙についての概説本。新書の為に分かり易く書いてあるので便利。その上、中国史の通史で書かれているので勉強になる事が多い。
宮崎市定の文章は読みにくいと勝手に思っていたが、(新書だからかもしれないが)読みやすかった。
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中国の皇帝(天子)は天の命を受けて領土人民を統治する。だが一人でその仕事をすることは不可能なので,手足として官僚を用いる。古代には貴族が天子の補助者であって,王朝が交替しても古い家柄の人間は引き続き権力を握ることができた。それが六世紀に変わる。隋初代の文帝は,生意気な貴族を排し有能な人材を集めようと,公正なペーパーテストによって官僚を登用することを始めた。これが科挙である。以降,千四百年近くにわたってこの制度は続く。中国の歴代王朝では文官による支配が絶対であり,軍人の格は低い。もちろん前王朝の天命が尽きるころには社会が乱れ,腕力がものをいう世界になるが,それは一時的なもの。混乱がおさまれば新たな皇帝のもと再び文官支配が始まるのであり,例外はない。そんなわけで,男子に生まれた以上は,科挙に及第して官僚になるのが人生の目標である。合格者は進士と呼ばれ大変な名誉だし,なんと言っても官僚の役得で甘い汁がたっぷり吸える。それだけに競争率は高く,合格するための努力は並大抵でない。この本は,科挙制度が良くも悪くも最も完備された清代を中心に,その受験事情を解説する。執筆者は,昭和を代表する東洋史学者。
受験勉強は早くも生まれる前の胎教から始まる。妊婦は行いを正しくし,不快な雑音を避け詩経に耳を傾ける。もちろん生まれてみないと性別はわからないから,もし女の子だと一族そろってがっかりする。科挙を受けられるのは男に決まっていた。男の子は幼くして日本の「いろは」に当たる千字文を習得し,少年期には全部で四十余万字という四書五経を諳誦,詩作の腕も磨き,試験に備える。
試験は何段階にもわたる。まず,国立学校に入学するための試験(童試)がある。これは,県試,府試,院試の三段構えになっていて,受験生は各段階でふるいにかけられ,絞り込まれていく。これに受からないと,科挙の受験資格を得られない。つまり童試は科挙の予備試験である。もっとも国立学校に入るといって,そこで何かを教わるわけでもない。皆科挙に向け独自に猛勉強する。学校だから先生がいて,生徒を教育する建前だが,予算も乏しく受験に役立つ指導もできないので,だれも先生を尊敬しない。皆勝手にやる。
次の科挙も大きく分けて三段階ある。各地方で行う郷試,北京で行う会試,天子の面前で行う殿試である。なかでも倍率百倍という郷試は苛烈をきわめ,悲喜交々多くの逸話が残っている。
郷試の様子は次のようである。戸のない独房のような部屋が万ほども用意され,受験生はここで問題を受け取り,二泊三日して一つの答案を搾り出す。これを三回繰り返し,都合三本の答案で合否が決まる。一回の試験中,会場と外界をつなぐ唯一の門は封印され,中で死人が出ようとも決して開くことはない。各部屋では三枚の板を壁の間に渡してそれぞれ物置棚,机,腰掛とし,そこでひたすら答案を練る。腹が減ったら持ってきた饅頭を口にし,あるいは持参の土鍋で炊事をする。睡魔が襲えばこれまた持参の煎餅布団で仮眠を取るが,夜が更けても隣室の蝋燭が煌々としていればそううかうかしてもいられない。落ちれば次の郷試は三年後である。幾度も失敗するうち気付けば五十六十とい���老受験生も珍しくない。儒教にも因果応報の考え方があり,行いの良いものは試験でも得をし,普段から素行のよろしくない者は試験で苦しめられるという。過去にあくどいことをしていた人がよく郷試の場で亡霊に取り殺されるのは迷信としても,試験の苛酷さに発狂する者はひきもきらない。本書の副題に「中国の試験地獄」とあるのは決して誇張ではない。
試験には不正がつきもの。そこで公平を確保するため,周到な仕組みが用意されていた。試験会場への入場時は当然厳重な持ち物検査,身体検査があり,豆本などの持ち込みを防ぐ。答案は,筆蹟で解答者が知れないよう全て係員が書き写し,それを採点する。これは賄賂をとって採点者が手心を加えるのを防ぐため。それだけ念を入れても,カンニングシャツを持ち込むとか,買収した採点者に自分の答案を特定させるため解答に暗号を忍ばせるとかいった不正は後を絶たなかったらしい。発覚した場合の罰は厳しく双方死刑もありうる。
どの段階の試験も,科目はほぼ儒教古典の範疇にある。合理主義的な考え方は要求されない。これは科挙の長い歴史を通じて変わることがなかった。また,非常に狭き門であるため,合格させてくれた試験官を師とあがめる風潮が自然と生じる。これが官界の派閥形成につながり,しばしば政治を混乱させた。そしてついに二十世紀初め,巨大な近代化の波濤にさらされていた時代遅れの科挙は廃止される。とはいえ,公平な試験によって人材を発掘するという科挙の根柢にある思想は,飛び抜けて世界に先んじていた。西洋の多くの国では十九世紀も後半になってようやく官僚になるための試験が始まったという。その前は人の上に立つのは貴族に限られていた。この点に関しては中国は千年以上先をいっていたわけだ。
後序で,執筆当時(1963年)の日本の受験戦争と,科挙の比較考察をしているのも興味深い。進士に及第すれば一生涯官職にありつける。一流大学出の学生がこぞって就職する日本の大企業も,終身雇傭制をとる。出世コースがこのように決まり,社会が固定化していることが,試験地獄を生むのではないか。鋭い観察だ。
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さすがに宮崎市定先生の著作である。巻頭で言っていたとおり、筆者の私情は極力避け、事実関係だけをたんたんとドキュメンタリー・タッチで書き進めている。
そのため物語としても読み応えがあった。
宮崎先生の著書はいたるところで引用されており信頼性の高さも伺い知ることができる。
ぜひ宮崎先生の他の著書も見てみたい。