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2月15日読了。
10年ぐらい前に出た本で、出版業界における20世紀の宿題みたいな内容だった。出版社も取次も書店も業績が悪化していて、出版社は出版点数を増加させ、書店は店舗の大型化を進めているが、それは出版業界の崩壊への道である。無謀とも言える拡大策を進める原因は、取次の商慣習にあるというようなことだった。
編集者は商品に対するコスト意識を持てということが書いてあったが、10年前は、出版は文化だから、金銭には頓着しないという気分がまだ残ってたのかとちょっと驚いた。
ITに関してもちょっと触れられていたが、ネットが普及する以前に書かかれ、ネット自身どういうものなのかまだよくわからない状況だったためか、ネット(本書ではIT)に対して切実な危機感を感じているようではなかった。著者は、オン・デマンド・出版に将来性を感じているようだった。
本書に書かれていることは、出版業界の現在の問題とたいして変わらないというか、10年前のまま来ちゃったというか。ただ、今は、商慣習の問題に加えて、ネットの普及で活字文化=出版でなくなってきたという問題が加わって、出版社が扱う商品とは何なのかというより根本的な問題に直面しているように思う。
著者は、盛んに崩壊する崩壊すると言っていたが、崩壊するとはどういうことなのかという話がなくて、ちょっと物足りなかった。当時は、いくらこのままだと崩壊すると言っても、まだまだ体制は盤石で、現実味はなかったのだろう。おそらく、長年のゆがみが出てきたという話であって、新しい局面を迎えたという認識は乏しかったのではないか。
具体的な数字やどこの会社が何をしたという細かい話が多いわりに、全体像の見えづらい書き方をしていて、煩雑で読みづらかったが、10年前と今とを比較する意味ではおもしろみがあった。