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紙の本
6月12日今日のおすすめ
2001/07/23 21:00
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:bk1 - この投稿者のレビュー一覧を見る
【エディターズ・コメント】
ヒトは、自らの運命をテクノロジーで変えようとしている。『人体改造の世紀』はインターネット上のコンテンツとして製作されたルポルタージュを加筆修正、再構成した書籍である。
ヒト遺伝子を導入した「動物臓器工場」。無断で解析された数千人分の遺伝子。クローン作りを切望する人たち。矛盾を孕みつつも進み続ける生殖医療現場。著者は研究者たちはもちろん、遺伝子診断の結果、保険金を支払ってもらえなかった人や、皮膚移植で大やけどから奇跡的に助かった人、不妊治療の斡旋業者まで、幅広く現場の人間に取材して、生命科学の現状を探っている。
本書は、日本のジャーナリストが日本の関係者たちの生の声を聞きだした本である。読者も、組織工学や生殖医療はどこか遠い国の出来事ではなく、ごくごく身近な話なのだと実感できると思う。予想を遙かに超えたスピードで進行する生命科学の現状を把握するために最適の一冊だ。
(森山和道/サイエンスサイト・エディター)
紙の本
著者からコメント
2001/07/23 20:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:森 健 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、「ヒト」に関する生命科学の現在をダイレクトに取材したものです。
柱は4つ。ヒトゲノム、人工臓器、クローン技術、生殖医療。どれも'90年代後半になって、大きな成果が挙げられた項目です。
'90年代も半ばをすぎてゲノム研究の成果があがりはじめ、2000年6月にヒトゲノムプロジェクトは成功をもって発表されました。他方、ゲノム以外でも、クローンヒツジドリーの誕生やヒトES細胞(あらゆる臓器をつくれるとされる)の樹立、遺伝 子組み換え作物の開発など、生命科学全般が次々と新しい研究成果をものにするようにもなりました。
日々読む新聞はそれらを速報で伝えていますし、あまたある書籍にも丁寧に解説しているものはあります。けれども、いまある現在の生命科学の姿を、俯瞰的、横断的に描いているものはそう多くはありませんでした。
そこで、私は2000〜2001年の生命科学とそれを巡る社会問題を「ヒト」を中心として、ジャーナリズム的手法でレポートしてみることにしました。つまり、メカニズムの解明だけに止まらず、その効果の真偽や妥当性、社会的影響、対立する立場からの意見の紹介など、複眼的な視点で取材し、報告するというものです。
これまで治療が困難だった病気が治るという医療の発達、ヒトとは何かといった根元的な謎に迫る生命科学の発展は大いに肯定されるべきものです。その反面、これらの技術は使い方を変えれば生命を恣意的に操作することも可能で、そうした利用で社会が混乱する可能性もある。見方を変えれば、功罪相半ばという側面をもっているのも事実です。
クローンをつくると宣言したある宗教団体の教祖は、取材に対し、「将来的には自分のクローンにいまの自分のメモリ(記憶)を移し替えようと思う」と語りました。 かりにクローンといえども、生まれ落ちた瞬間からヒトはヒトであり、(実現性は低いとしても)そのような押しつけが許されるのか疑問です。
一方、生命科学に伴う産業は、今世紀莫大な市場になるとも言われています。米国では、2025年に300兆円、日本でも2010年に25兆円という市場が控えているとされます。多くは遺伝子やたんぱく質など特許(知的財産権)に関わるものですが、これらも医療問題として考えれば決して遠い問題ではありません。
生命科学の成果はヒトに何をもたらそうとしているのか。
社会は人体を操作/改造する技術をどう扱うべきなのか。
そんなテーマをもとに、国内外の研究者、医師、患者、企業人など100人以上の方に取材してできたのが本書です。2000年4月から12月までオンラインマガジン「Web現代」での同名記事を連載し、それに2001年での新規取材/再取材を加え、大幅に加筆修正しました。
もし自分がこうした生命操作の場に出くわすことになったら、どうするか。そんな身近な問題として読んでいただけると幸いです。
森 健(もり・けん/ライター)
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