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みんなのレビュー4件

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紙の本

「経済のエコロジー」はあるか

2001/06/08 12:19

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:小田中直樹 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 知りあいの料理人から、「ゲランドの塩」は美味しいっていわれた。僕の住んでる仙台でも、高いけど、「ゲランドの塩」が買えるようになった。仕事でフランスに行くとき、「お土産は〈ゲランドの塩〉」って頼まれた。「〈ゲランドの塩〉は昔ながらの方法で作られる」って話を聞いた。「手作りで、美味しくて、日本でも有名で、高いけど買える塩」って何なんだ。
 この本の著者のコバヤシさんは、その「ゲランドの塩」の歴史や作り方を知り、そこから「生態系」の問題を考えてる。フランス西部のゲランドでは職人が海水塩を作ってきたけど、二〇世紀初めには先細り状態だった。ところが、一九七〇年代、「六八年世代」(大学紛争を担った、日本でいえば「団塊の世代」)の人たちがやってきた。生態系を重視する「エコロジー思想」に影響されてた彼らは、「この伝統的な手作業は、ローカル(地域密着)で、生態系と調和してる」って考え、伝統的な方法で塩を作る職人になった。協同組合ができて直接販売をはじめ、職人養成センターができて後継者を育成した。彼らの努力のおかげで、「ゲランドの塩」の価値が認められるようになった。
 「ゲランドの塩」を紹介してるこの本には、同時に、著者のコバヤシさんのメッセージが込められてる。今の農業の基本は「生産拡大の思想」。食料は経済的な「商品」になり、むかしのような「自然のめぐみ」じゃなくなった。生産のコストを下げるため、伝統は軽んじられて新しい科学技術が導入された。生産も消費もグローバル化が進み、消費者は「自分は何を食べてるのか」わからなくなった。その弊害として、ヨーロッパでは狂牛病や農薬汚染が問題になってる。世界全体をみれば、公害や遺伝子操作や環境ホルモンが問題になってる。これは生態系や人命や健康に反する事態じゃないか。今こそ「経済性ばかり考えるんじゃなくて、伝統を重視し、地域に根差した農業」(有機農業や自然食品生産)を始めなきゃいけない。コバヤシさんはこう考えて、「ゲランドの塩」に関心を持った。つまり、それは、コバヤシさんが理想とする農業の実例なんだ。
 コバヤシさんの思想や危機感や理想はよくわかる。でも、彼女の「〈経済性〉より〈自然や文化〉、〈科学技術〉より〈伝統〉、〈グローバル〉より〈ローカル〉」っていうメッセージには、僕は不満や疑問を感じる。二点だけ挙げとこう。第一、ゲランドの塩職人は、研究者の力を借りた品質管理や、色々な「マーク」制度を使ったブランド戦略など、広い視野と経営センスにあふれた戦略を展開してる。「伝統」じゃなくて「科学技術」を積極的に利用してるわけで、コバヤシさんの立場とはちょっと違う。このことはコバヤシさんも感づいてるけど、はっきり書いてない。第二、コバヤシさんは「今おこってる問題は科学技術の行きすぎが原因」って考えてる。でも「科学技術が進歩すれば問題は解決できる」って意見もある。今の時点では、どっちが正しいかはわからないと僕は思う。それがわかるには時間が必要。だから「時間をかけよう」っていう「予防原則」が大切。
 「ゲランドの塩」が高いけど日本でも買えるのは、塩職人が科学技術を「ちゃんと」使い、「ちゃんと」グローバルに「ちゃんと」経済活動してるからだ。今の「経済性+科学技術+グローバル」路線に対抗したかったら、「自然や文化+伝統+ローカル」路線もいいけど、「ちゃんとした〈経済性+科学技術+グローバル〉」路線もしっかり考えとこう。生態系と経済活動は、どっちかだけ採るのも駄目、適当に折衷するのも駄目。「衝突のなかの両立」って道を考えなきゃならない。「経済のエコロジー」ってことかな。この本を見ると、ゲランドの塩職人は、もう現場で考えて実行してるみたいだけど。
 というわけで、情報源として役立つけど、著者のメッセージにちょっと不満なので、評価は「三つ星」。

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2007/12/17 19:39

投稿元:ブクログ

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2008/09/30 22:32

投稿元:ブクログ

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2012/02/24 14:51

投稿元:ブクログ

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