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紙の本
もし、あの時、東京23区の図書館に司書制度が確立されていたとしたら?
2001/08/10 23:51
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ざぼん - この投稿者のレビュー一覧を見る
読んでいてだんだん空しくなってきた。
本文179ページより抜粋。
項目\年度 1967 1997 1997/1967
図書館数(館) 48 199 4.1
職員数(人) 614 2,452 4.0
司書数(人) 152 595 3.9
出典:『日本の図書館』1967年版,1997年版(日本図書館協会,1968,1998)
これが東京23特別区の区立図書館の状況である。司書有資格者は、職員中1/4でしかない。
日本の文化の中心地たる東京の、最も市民に近い役割を持つ区立図書館が、司書職の採用を行っていないと知ったのは、就職活動の時期か。既にその頃には図書館員になることを目指していなかったので、そういう事情には疎く、友人から聞いたときには耳を疑ったものだ。
なぜ、こういう状況なのか。
1967年東京都公立図書館館長協議会が提出した「都区立図書館の司書職制度確立に関する要望」と、これに対して起こった*現場の職員による*反対運動というのが、これがまあ。
「あとがき」はちょっとどうかと思ったけれども、それを差し引いて考えても、この運動が後々に及ぼしたかもしれない影響を考えると、ため息しか出ないのだった。ことの次第がどうであれ、責任の所在がどこにあったにせよ。
私は図書館のヘビーユーザーである。本を読んだり、借りたり、探したりするのに、物凄く便利な施設であると感じている。でも、周囲の本好きの間では、苦笑交じりに「図書館なんて」と語られることが多い(ような気がする)。それは職員の対応であったり、蔵書の問題であったり様々なんだけれども、もし、仮に1967年、ここで東京都特別区が躓かなかったら……。
もし、東京都23区が司書職制度を導入し、活用することが出来ていたとしたら。単純に考えて、そこだけで数千の司書有資格者の受け皿が生まれたのかもしれないのだ。また当然、影響は全国の公共図書館へ遍く広がったであろう。そうなれば司書資格自体にもフィードバックされ、現状の国家資格でありながら、何だか非常に中途半端な、はっきり言ってどうでもいい資格ではなくて、もっと別の形になっていたのではあるまいか。きっと出版そのものとの関わりも、今とは違うものであったろう。
既に歴史となってしまった事柄に対して、「もしも」なんて言うことに意味はないんだろうけれども、しかし、やっぱり感情の部分で悔しさが滲み出てくるのだ。こんな私ですらそうなんだから、図書館員志望の友人たちが読めば悶え苦しむんじゃないのか? 図書館好きの人や、(特に東京特別区の)図書館を嫌っている人にも読んでもらいたい。
死んだ子の年を数えるような気分になってしまうのだった。
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