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紙の本
傲慢な連中の鼻を明かす快感
2003/06/28 09:54
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かいらぎ - この投稿者のレビュー一覧を見る
時は明治44年。ターゲットは陸軍参謀次長、東。獲物は日本陸軍の武器弾薬。東は武器商社と癒着し、私利私欲を肥やす一方で、利を見るに聡く、用心深い男でもある。その東を騙す詐欺グループの構成には不安がある。日本人で天才詐欺師の伊沢。伊沢を慕う中国人、陳。清を倒すことを目指す革命家の中国人、関(グアン)。日韓併合で日本や日本人を恨む韓国人、パク。それぞれが違った目的意識をもちつつも、壮大なペテンを仕掛ける。
明治時代は決してのんびりとした時代ではなく、帝国主義が跋扈する弱肉強食の国際関係は、国の舵取りが即座に存亡にかかわる時代でもあった。維新の高邁な残り火も消えつつある中で、役人や軍人は派閥争いや利権を貪る。そのような時代背景だからこそ得られる各個人の強烈な動機、緊張感やスピード感あふれる展開がこの物語を引き立てる。そしてなんといっても、傲慢な連中の鼻を明かす快感を堪能できる一冊である。
紙の本
義侠心と冷徹になりきれない詰めの甘さが魅力の詐欺師
2001/06/26 08:13
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投稿者:菅野 - この投稿者のレビュー一覧を見る
舞台である明治末期の混沌とした上海、クセのありそうな登場人物と物語の冒頭からワクワクする展開が期待できる。日本陸軍の最高幹部や武器商社との腹のさぐり合い、次期陸軍大臣を巡る確執、漁夫の利を得ようとする悪徳警官、そして主人公を狙う殺し屋と、実在の人物をうまく織り交ぜながら、手に汗握るコンゲームを展開させる腕は見事。
「T.R.Y.」というタイトル名は意味がわからない。キューバの革命家チェ・ゲバラを描いた「C.H.E.」とそろえたのだろうが、それならば副題をつけるか、改題とともに作中にタイトルの謎解きを入れて欲しかった。
紙の本
「問答無用におもしろい」…綾辻行人氏談!
2001/06/19 15:39
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投稿者:nao - この投稿者のレビュー一覧を見る
明治44年の、上海、そして日本を舞台に繰り広げられる痛快な冒険小説! 主人公の伊沢修は詐欺師。革命を目論む一団とてを組んで、詐欺で武器を調達しようとするのだが…。そんなお話。
しっかりとした小説で、その分文字もちっちゃくて、活字アレルギーの人は開いただけで「うっ…」と思われるかもしれないけれど(そーゆー方は、ここ読まないかも…)、それを超えるだけの内容が詰まってます!
確か作者曰く「ルパンのような冒険小説を書いてみたかった」とのこと。このフレーズに、デザインのいい表紙に魅せられて買っちゃったけれど、ほんと久しぶりに文句なしの小説でした!
明治という時代を彷彿させる資料は詰め込みすぎずに、しかも会話からも窺えて比較的すんなり読むことが出来るのがよいですね。ストーリーの流れも、速すぎず、遅すぎず。あの本の厚さに対して、ちょうどいい展開の流れなのではないでしょうか。naoの好みだと、もうちょいテンポが速くてもよかった気もするけれど。
印象に残ってるのは、随所にでてくるスピード感溢れる描写ですねー。特に中盤、伊沢修が暗殺者に追われて逃げる浅草の場面。文字なのに、はっきりとその場面が見えました! しかも見たことない明治の浅草が! ある意味、マンガや映画では表現できない迫力がそこにはある! ちょっと感動。
絶対詐欺に引っかからないような、狡猾な官僚を果たして詐欺れるのかというハラハラさや、ラストのラストまで結末が予想できない緻密さは、もう必見! ちなみに飼い犬の武丸は、なかなか可愛い(笑)。
どこから敵がでてくるのか、わかんない! 伊沢修は、至る所で狙われている! これも詐欺師の宿命でしょう。
満場一致で横溝正史賞正賞を受賞した力作! 「問答無用におもしろい」と宣った小説家・綾辻行人氏の言葉も納得の一冊、その文庫版でした。