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絵が語る秘密 ユング派分析家による絵画療法の手引き みんなのレビュー
- グレッグ・M.ファース (著), 角野 善宏 (訳), 老松 克博 (訳)
- 税込価格:4,180円(38pt)
- 出版社:日本評論社
- 発行年月:2001.6
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紙の本
絵を描くこと、絵を解釈することによる癒し
2001/07/06 18:15
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:海野弘 - この投稿者のレビュー一覧を見る
癒しと芸術というテーマに興味を持っている。かつて芸術は、癒しなどという問題をあつかわなかった。芸術は純粋中立なものであるから、治療の手段などに使うべきではないと考えられていたのである。
しかし、八〇年代ぐらいから、芸術も世間とは無縁でいられなくなり、癒しに役立てようとする方向があらわれた。その柱となったのはカール・ユングの心理学である。ユングは、人間のイメージは、無意識を語る象徴〈元型〉によって構成されていると考えた。したがって、ある人が書いた絵は、その人の無意識世界を映しており、その元型を解読することで、その人の問題点(悩み、欲望)がわかってくる。
この本の著者は、アメリカのユング派の心理学者で、絵画療法のエキスパートであるという。その多くの体験をもとに、絵画による癒しを解説している。その方法は、ある図式を押しつけることなく、具体的で、経験的であるから、まだるこしい感じもするが、私には公式的でないだけ、好感を持てる。
癒しと芸術について考えていくと、いくつかの問題にぶつかる。まず、絵画療法に使われるのは、芸術作品ではなく、うまい下手は関係ないことである。この本では「無意識由来の絵」といっている。ある問題を抱えた患者に絵を描かせる。意識的にうまく描こうとしない方がいい。ファースは、この本で芸術作品をはずすといっている。
では、芸術作品と癒しの関係はどうなるのかを私は気になっているが、ここでは触れない。
なぜ絵を描くことで癒されるのか。ユングによると、人間の心は意識と無意識からなり、無意識は意識の欠けているところを補っている。したがって、絵を描くこと(無意識の表現)によって、意識の欠けた部分が補償され、心のバランスがとれるというのだ。
絵画療法は、絵を描かせること、その絵を解読すること、という二段からなっている。絵として表現するだけでなく、それをことばに翻訳することが大事なのだ。
しかし厄介なのは、ユングは絵の解読のための体系的なアプローチを示さなかった。彼の直感的な解釈が語られているだけなのである。そこで彼の弟子たちが体系的アプローチをつくろうとしている。ファースの本もその試みの一つなのである。
注意すべきなのは、なんでも解読できる法則というのは今のところ見つかっていないことだ。テレビなどでやっている心理テストなども、大ざっぱにいえば、そうもいえるというくらいのもので、あまりあてにならない。
この本は、絵の読み方の図式を押しつけることなく、人間のそれぞれの個性をできるだけ柔軟に読んでいこうとする。その姿勢は共感が持てる。 (bk1ブックナビゲーター:海野弘/評論家 2001.07.07)
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