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バルタザールの遍歴 みんなのレビュー

文庫 第3回日本ファンタジーノベル大賞 受賞作品

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みんなのレビュー79件

みんなの評価4.0

評価内訳

高い評価の役に立ったレビュー

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2001/07/16 03:15

落日の音。或いは甘い香り

投稿者:あきら - この投稿者のレビュー一覧を見る

 読むことが酩酊することでもあるとは、なんて心地いいのだろう。火酒に溺れるような快感を感じつつ、一気に読んでしまった。真昼の明るい部屋で、酔ったように。止められなかった。没落貴族の出自、血統の秘密、絵を描く美貌の従姉妹、近親相姦、仮面舞踏会、ナチの拷問、砂漠への置き去り、決闘…と目が離せない。
 それにしても主人公たちのことをなんと形容したらいいのだろう。彼等は自分たちのことを、バルタザールとメルヒオールと呼び交わす。でも、「物質的な」身体は一つ。ナチス台頭期のウィーンを逃れ、パリ、チューリヒからバーゼル、バーゼルからミュルーズ、ミュルーズからディジョン経由でマルセイユ、そして海路でチュニスから海岸を南下し、美しいオアシス都市ジャナダン島へ。共和制への移行期の貴族の、「傷口から溢れ出る朱色の鮮血に似た夕闇のなかに、歪んだ鏡に映して引き伸ばしたような」太陽の下、船と酒に揺られる終わりなき転落と酩酊の旅。それは、死が二人を分かつまで。
 「私は左手でグラスを、バルタザールは右手でエンピツを持ち、私は過去を出来るだけ遠ざけにかかり、バルタザールは手元に引き寄せて検分し、書き付けた。……この人物の中で極限に至る明晰さと人間に可能な限りの酔眼朦朧が依存しているなどと、誰に想像できただろう。」

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低い評価の役に立ったレビュー

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

2001/08/28 14:19

ファンタジーってつまりは「教養の遍歴」なのだ・・・

投稿者:山田登世子 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 たとえばプルーストのようにクラシックかつ耽美的なフランス小説と、いわゆる今どきのファンタジーノベルと仲が良いだろうか? 「断じて!」と思っていた。そんなわたしの偏見をみごと破ったのが佐藤亜紀のこの作品。知ってはいたものの、このジャンルの書き手にどれほどの「教養」が要るか、痛感させられた。
 だいいち、舞台設定がいい。1910年代から1930年代にかけてのウィーン、ヴィスコンティの『地獄に堕ちた勇者たち』を思わせるような、あやしく堕ちてゆく貴族階級と、おぞましきナチス。胸苦しいタンゴの狂騒が聞こえてきそう。そんなウィーンからパリ、それから一転して北アフリカと、元祖SF『80日間世界一周』本歌取りの手際の良さ。きわめつけはラストシーンの豪華客船だろう。舞台はここで一挙にアメリカにジャンプ、1910から30年代にかけてのこの時代がハリウッドと豪華客船の時代でもあったことをハタと思い出す。
 ファンタジーってつまりは「教養の遍歴」なのだ-----そう思わせる佐藤亜紀の力量、ほんとにすごい。(山田登世子/フランス文学者)

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79 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

落日の音。或いは甘い香り

2001/07/16 03:15

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:あきら - この投稿者のレビュー一覧を見る

 読むことが酩酊することでもあるとは、なんて心地いいのだろう。火酒に溺れるような快感を感じつつ、一気に読んでしまった。真昼の明るい部屋で、酔ったように。止められなかった。没落貴族の出自、血統の秘密、絵を描く美貌の従姉妹、近親相姦、仮面舞踏会、ナチの拷問、砂漠への置き去り、決闘…と目が離せない。
 それにしても主人公たちのことをなんと形容したらいいのだろう。彼等は自分たちのことを、バルタザールとメルヒオールと呼び交わす。でも、「物質的な」身体は一つ。ナチス台頭期のウィーンを逃れ、パリ、チューリヒからバーゼル、バーゼルからミュルーズ、ミュルーズからディジョン経由でマルセイユ、そして海路でチュニスから海岸を南下し、美しいオアシス都市ジャナダン島へ。共和制への移行期の貴族の、「傷口から溢れ出る朱色の鮮血に似た夕闇のなかに、歪んだ鏡に映して引き伸ばしたような」太陽の下、船と酒に揺られる終わりなき転落と酩酊の旅。それは、死が二人を分かつまで。
 「私は左手でグラスを、バルタザールは右手でエンピツを持ち、私は過去を出来るだけ遠ざけにかかり、バルタザールは手元に引き寄せて検分し、書き付けた。……この人物の中で極限に至る明晰さと人間に可能な限りの酔眼朦朧が依存しているなどと、誰に想像できただろう。」

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紙の本

ファンタジーってつまりは「教養の遍歴」なのだ・・・

2001/08/28 14:19

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:山田登世子 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 たとえばプルーストのようにクラシックかつ耽美的なフランス小説と、いわゆる今どきのファンタジーノベルと仲が良いだろうか? 「断じて!」と思っていた。そんなわたしの偏見をみごと破ったのが佐藤亜紀のこの作品。知ってはいたものの、このジャンルの書き手にどれほどの「教養」が要るか、痛感させられた。
 だいいち、舞台設定がいい。1910年代から1930年代にかけてのウィーン、ヴィスコンティの『地獄に堕ちた勇者たち』を思わせるような、あやしく堕ちてゆく貴族階級と、おぞましきナチス。胸苦しいタンゴの狂騒が聞こえてきそう。そんなウィーンからパリ、それから一転して北アフリカと、元祖SF『80日間世界一周』本歌取りの手際の良さ。きわめつけはラストシーンの豪華客船だろう。舞台はここで一挙にアメリカにジャンプ、1910から30年代にかけてのこの時代がハリウッドと豪華客船の時代でもあったことをハタと思い出す。
 ファンタジーってつまりは「教養の遍歴」なのだ-----そう思わせる佐藤亜紀の力量、ほんとにすごい。(山田登世子/フランス文学者)

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2004/11/20 20:12

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2005/05/03 20:34

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2005/05/18 02:38

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2005/07/02 19:28

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2005/12/08 05:51

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2006/01/22 18:16

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2006/03/04 19:01

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2006/04/15 18:06

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2006/07/09 19:31

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2006/09/26 23:56

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2006/12/22 08:25

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2007/02/20 01:39

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2007/12/07 12:07

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