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紙の本
前途多難な野生動物問題への提案
2002/03/13 18:15
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投稿者:岡埜謙一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書でいうところの「野生動物問題」とは、野生動物が人間社会にもたらしているさまざまな被害と、逆に人間が野生動物におよぼしている生息環境の変遷や悪化など、その両面である。著者・羽山氏は獣医であると同時に、野生動物の保護、研究の専門家だ。羽山氏自身のスタンスは、まえがきで「野生動物問題をどのように解決するのが正しいのかということよりは、むしろ野生動物問題というものが野生動物自身の問題でなく、人間社会のありようの問題である」と触れていることからも明らかだ。
野生動物にまつわる問題は、昨今のニュースをよく見ているとじつに多い。たとえばシカやイノシシ、クマなどによる食害であり、サルの人家への侵入である。カラス軍団のゴミ荒らしもそうだ。また、外国から移入されたペットの野生化もよく知られている。さらに、観光資源としての野生動物に対する餌付けの問題も加わって、話がややこしくなる。人間の都合で増やしておいて、増えすぎたから今度は間引いてしまえ、という。こういった問題に対し、役所の関係者や地元民は、まず野生動物を悪者視して手っ取り早い「駆除」という方法論に走る。逆に動物保護団体や動物好きは、何が何でも「動物保護」という感情論からこれに反発する。どちらも無責任であり、一方的だ。マスコミは本質を探ろうともせず、ただ面白半分で騒ぎを煽るだけ。
たしかに一歩踏み込んで考えると、それらの原因はほとんど人間側にあるのだ。とはいえ、動物ばかりかばって、人間の生活は脅かされてもいいというものでもなかろう。羽山氏はきわめて冷静かつ中立的なスタンスでこの問題の本質を解き明かす。しかし、本書を読めば読むほど難しい問題だということがわかってくる。なにしろ、片一方は話してわかる相手ではないし、時代をさかのぼれば彼らの側に理があるからだ。おまけに、鳥獣保護法と、野生動物に関係する制度や条例というものがまったくのザル法に近い。役人の常として、責任の所在がきわめて曖昧で、とにかく成文化すれば事足りるという姿勢が見え見えだ。
前途多難な野生動物問題、本書でも即効的な解決策が示されているわけではないが、いくらか前途に光明が見えそうな提案がなされている。一般の人はもとよりだが、むしろ関係者全員が読んで勉強してもらいたい本だ。(岡埜謙一/フリー編集者兼動物里親)
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