紙の本
中国という国が見えて来る
2007/07/27 13:31
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐伯洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
史記といえば、漢書なども含まれる二十四史中の筆頭であり、司馬遷の手になる。それを「サリーちゃん」の横山光輝がマンガで叙述したのが本シリーズである。その試みはまことに素晴らしいのひと言に尽きる。
第1巻の本書には、管仲列伝がある。菅仲は諸葛孔明が伏竜期に自身の例うべき存在筆頭としてあげた斉の名宰相である。華々しい軍略家というよりも稀代の政治家ともいうべき人柄がマンガの中で鮮明に踊っている。菅ぽうの交わりと言う言葉があるが、そのオリジンは菅仲伝にある。菅仲は、自分を生んだのは両親だが、自分を誰よりも知るのはホウシュクだとまでその友情を表現している。
さらに本書のカバーする範囲から生まれた言葉として「死者に鞭打つ」というものがある。これは、呉越同舟で有名な、呉の宰相であるゴシショという人物が、自分の兄と父を無残に殺害した楚の平王に対してなした復讐劇の顛末である。
ゴシショの気持ちは分からぬではないが、およそ日本では考えられ無いことであろう。彼は、復讐鬼と化し、祖国楚を打つことを心に誓ったが、呉の重臣となってようやく願望実らんかとの矢先、あえなく平王は平穏に死んでしまった。それが悔しくて堪らず、平王のミイラに鞭打ち300を加えたのである。分からぬでは無いが、やはり今の中国人との連続性を感じる。
呉越同舟の話しは、呉が国力を傾け、宰相ゴシショの宿願を叶える為(もあって)楚に遠征していた間隙をぬって越が呉に攻め込んだ事から始まる因縁に由来する。ゴシショの運命もそこに極まっている。これから始まる中国史から演繹できる最大のことは、おそらくゴシショやショウオウといった名臣たちが残虐極まる死を迎えた原因の部分にある。それを上手く切り抜けた
例えば秦の大宰相ハンショの処し方などは参考になるだろう。
ちなみに、ハンショの話しは、史記の中で最も好きな話しのひとつである。確か第4巻だったと思うが、「便所の屈辱」から始まる彼の人生は見習うところがある。復讐鬼と化したゴシショの末路と見比べれば、いずれが一般化に適するかは一目瞭然であろう。復讐のパワーの活かし方とはこうあるべきだ。
歴史は教養の王様である。国際政治も何もかも歴史が出発点である。まあ、西洋では中国史など蛮族の地方史くらいにしか思っていないが、その残虐さ、卑劣さ、裏切り親殺し、子殺し・・西洋史よりもよほど命のやり取りが現実的である。ローマ史は塩野七海の功績でやや世間に広まった印象があるが、やはり中国史もおさえねば、教養人とはいえまい。
つくずく、日本という国の歴史とはその残虐さは比較にならないと思うのである。日本の2000年間は本当に平和で幸せな歴史だったなと思う。江戸以降になると残虐を嫌う家康の後光も差してか、残虐な話しは滅多に聞かない。こんなルーツを持ち、こういう歴史を崇拝する漢民族を相手にしなければ行けないのだから、それは苦労するだろうと改めて思う至第である。
紙の本
言わずと知れた史記
2022/12/22 06:33
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投稿者:ないものねだり - この投稿者のレビュー一覧を見る
白文・漢字かな交じり文・注釈が同じページにまとめられている本が一番良かった。原作に対する真摯な姿勢・敬意の表れ。他は娯楽作品。
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周代から春秋戦国を経て、始皇帝、項羽と劉邦、そして漢の時代へと古代中国史をはじめて歴史家の筆で明らかにした名作。
原作もぜひご覧ください。
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三国志ほど有名ではないがこちらも負けず劣らずよく描けてます。史記の有名どころがすごく面白く読めます。歴史ファン必読。
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中学生までならこの作者と同じ三国志を読むことをオススメする。
高校生から大学生にはこの史記を絶対オススメする。世界の歴史に残る司馬遷の史記を見事に描ききった傑作だと思います。
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春秋戦国時代から漢時代までの偉人にスポットを当てて
分かりやすく読める一冊。
故事成語も多く生まれていて、「完璧」や「一攫(画)千金」などよく使う言葉から
「呉越同舟」や「屍に鞭打つ」など慣用句なども自然と身に付きます。
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中国の古い歴史の本で、あまり馴染みが
ある本ではありませんが
「完璧」「背水の陣」と言った、
現代でも使われている言葉やことわざの
元になった出来事や背景が描かれています。
日本語訳などを本格的に読もうとすると
大変ですが、漫画から中国4千年の歴史に
親しんでみるのはいかがでしょう?
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現実の中国史は残酷きわまりないネタが沢山あるが、この辺は横山先生のタッチでさらりとしたバランス。手塚治先生はじめ昔の大御所の先生方はキャラの単純化が上手い様に思う。この表紙の様なイメージで描かれてしまってはかったるい。
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最近戦略という言葉に弱いので、買ってしまいました。
だって帯に 「人生」最高の戦略本 なんて書いてあるんだもの。
中国の古典書をマンガで読む。
最近 難しい本にはだんだん手が出なくなってきた、というか昔から難しい本には余り手を出してこなかったので、史記なんていわれてもピンとこなかったんですが、先日レッドクリフ(赤壁の戦い)の映画を見に行ってから、息子に三国志とか、魏・呉なんていう言葉について聞かれても答えられないので、少しだけ勉強してみようと手にとって見ました。
恐るべし中国の歴史です。
紀元前にすでに武器を持って争っていたんです。社会をしっかりと形成していたんですね。
日本で言えば弥生時代のころらしいです。
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横山光輝御大謹製の漫画版史記。
コミックス版を途中までしか持ってなかったので、文庫版で大人買いした。
中国の春秋戦国時代〜漢の武帝辺りの壮大な歴史を楽しく読める。
全11巻。
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人間の欲・・。ほんま昔っから、権力者の欲によって、たくさんの人が巻き込まれていくな・・。さて、まだまだ一巻。これからどうなるのだあ☆
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▼第1話/司馬遷▼第2話/名宰相・管仲▼第3話/驪姫の陰謀▼第4話/漂白の覇 者・文公▼第5話/復讐の鬼(前編)(後編)
●主な登場人物/司馬遷(第1話)、 管仲(第2話)、驪姫(第3話)、文公〔耳子〕(第4話)、伍子胥(第5話)
●あ らすじ/幼少時から天才の誉れ高かった司馬遷。その才能は誰もが認めるものであっ たが、漢の官僚となってからは、長く不遇の時代が続いた。しかも彼の才覚がようや く認められつつあった頃、その身に悲劇が起こる。武帝の逆鱗に触れ、男根を切り取 られるという屈辱的な刑罰"宮刑"に処せられてしまったのだ。
だが"過去の歴史を 後世に残さなければならない"という、尊敬する父の遺志を継ぐべく、司馬遷は発 奮。武帝も刑は与えたものの、彼の才能を高く評価していたので、司馬遷のために 「中書令」という新しい役職を作る。
司馬遷は、宮廷の書を自由に見ることのできる この役職をフルに利用し、歴史書の執筆に取り組み、約10年の歳月ののち、全130巻 にも及ぶ歴史書を書き上げた。彼が命を懸けて記した一大歴史書『史記』は、こうし て完成したのである…(第1話)。
●本巻の特徴/中国、前漢の歴史家・司馬遷は、 波瀾の半生を経たのち、父・司馬談の遺志を継いで『史記』を完成させた。壮大な物 語は、この第1巻から始まる。「司馬遷」、「名宰相・管仲」ほか、全5話を収録。
●その他の登場人物/司馬談、武帝、李陵(第1話)、鮑叔、桓公(第2話)、献公 (第3話)、恵公[夷吾](第4話)、平王、孫武(第5話)
●本巻に登場する故事 成語・諺・歴史用語など/封禅の儀式、陰暦、宮刑(第1話)、管鮑の交わり(第2 話)、覇者(第4話)、日暮れて遠し、屍に鞭打つ(第5話)
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史記全巻を読み途中。
横山光輝はさすが読ませる・・・
ドンドン先に読んでしまう。
・・・けど、始皇帝のところがかなり端折られていて少し残念。
(例で言うと『三国志』が10話くらいで終わりになっているくらいの感じ)
それを差し引いても素晴らしい。
歴史嫌いな人も子供にもお勧めしたい。
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横山光輝「史記」1巻。
司馬遷、管仲、晋の文公、伍子胥。
復讐の鬼、伍子胥。彼を含めて呉越の争いは好きな物語です。呉王闔盧と夫差、越王勾践、孫子に西施。呉越の結末が語られるのは、2巻かな。
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歴史は繰り返すとか、歴史に学ぶとかいうけれど、これがいうほど簡単ではないのだろうか。先日読んだ「悟浄出立(万城目学)」には、項羽と虞美人、荊軻、司馬遷の話が出てきた。
史記にあたれという啓示であろうか。というわけで、横山光輝版「史記」。
横山光輝の漫画の多分に洩れず、見た目の描き分けは厳しいものの、持っているキャラクターはとてもわかり易い。阿呆は阿呆として、ストレートに描かれている。人間、そこまでひといろでもあるまい、と思うが昔は違ったのか、演出なのか、本質はそうなのか。
史記から出来た言葉は多い。とくに、今はここら辺が気になる。
「鹿を指して馬と為す」
「焚書坑儒」
「匹夫の勇、婦人の仁」
偉い人も、きっと史記をつまびらかに読んでおりませんことでしょうけれど、歴史に学びたい人は読んでおきましょう。横山先生、素晴らしい。
さて、天道是か非か。