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バタフライ・エコノミクス 複雑系で読み解く社会と経済の動き みんなのレビュー
- ポール・オームロッド (著), 塩沢 由典 (監修), 北沢 格 (訳)
- 税込価格:2,530円(23pt)
- 出版社:早川書房
- 発行年月:2001.9
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紙の本
2001/10/28朝刊
2001/11/08 22:17
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投稿者:日本経済新聞 - この投稿者のレビュー一覧を見る
原著の副題が「社会経済行動についての新一般理論」と大きく構えている。「一般理論」というとすぐにケインズの著書を思い浮かべるが、彼が当時の主流派経済学を批判したのと同様、本書も、現在主流の経済学への根底的な批判を試みたものだ。
著者が経済現象に切り込む角度は書名にあるバタフライ(蝶)が示している。大陸のどこかでの小さな蝶の羽ばたきが地球の裏側での竜巻を起こす、という例の複雑系の議論の象徴になっている蝶である。つまり、複雑系の考え方を応用して、従来の経済理論では十分説明しきれない現代経済社会を解き明かそうというのである。
その基本的なスタンスは明快だ。経済を機械的なシステムと見るのではなく、もっと生物学的に見よ、という。経済社会のアナロジーが機械的システムなら、システムを構成する個別の部分を解明すれば、経済全体のパフォーマンスは部分をすべて足していけば良い、という考え方になるが、現実の経済は部分の総和以上の効果や機能を発揮する。それを理解するには部分が線形でつながれた機械システムよりも、お互いが影響しあい、学習する生物の行動に経済社会のアナロジーを求めるべきだという。
例えば著者が注目するのはアリの行動パターンである。巣穴から等距離に置かれたふたつの砂糖の山があるとき、穴から出てきたアリがどちらの山に向かうか。実験結果はどちらにも均等というわけではなく、完全にランダムでもない。アリ同士の情報交換などで一方の山に集中することもあれば、何かの拍子に突然方向を変えることもある。こうした挙動の考察が、機能的に劣った商品、非合理的な商品でも選好することがある個人や企業の行動を理解する助けになる。
経済学的にいえば、完全な情報のもとで、効用最大化の合理的行動をとるという前提で分析するのではなく、ヴェブレン的な制度の重要性をも取り込んで経済を見るという統合の視点だろう。英国流の辛らつな筆致と相まって新鮮な刺激を与える。
(C) 日本経済新聞社 1997-2001
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