紙の本
作家・松井計の出生の証
2001/12/31 01:55
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投稿者:Y’s cafe 店主 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、作家としての収入が途絶え、妻子と離れて路上生活者となることを余儀なくされた著者の、半年あまりにわたる苦闘の記録であり、そこには彼の真情が吐露されている。彼は自分が「良人失格」であり、「父親失格」であることを認めたが、「作家失格」の烙印を捺されることには耐えられなかった。ホームレスとなった後も、路上では眠らないと決め、なるべく浮浪者と見られないように努めながら、夜は歩きつづけ、昼間に図書館やマンガ喫茶、電車の車内などで眠る生活をおくりながら、そこからなんとか抜け出そうと足掻きつづけた。そして路上生活の中にもいくつかの希望を見出すものの、それは幻であったかのように消え去り、再び奈落の底へ落ちてしまう。彼は本書を遺書として書き始めたという。しかしそれは遺書ではなく、新しい自分—作家・松井計—の、出生の証となった。彼は、愚かな作家はあの凍てついた夜、新宿の街頭で死んだと言った。
紙の本
路上の作家
2001/10/28 21:00
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投稿者:すいか - この投稿者のレビュー一覧を見る
最初この題名を見た時ホームレスの人が本を出したのかと思ったが違った、作家だった人がホームレスになったのだ。少し前までは、作家として活動し、妻子を養って普通に暮らしてた著者が、少しずつ歯車が狂い、路上に出るまでになってしまった。今の時代、決して人事ではないなと思った。
紙の本
男でも家庭と仕事の両立は難しい
2001/10/30 14:02
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投稿者:MM - この投稿者のレビュー一覧を見る
今までの常識なら、男が家庭を守るというのは経済力のことをさしていたが、家事をする人がいないなら男だって両方をやらなければならない。たまたま不定期な収入の職業だったためにホームレスになってしまった。切り捨てられない大事なもののために、望まない生活をしなければならないのは悲しい。誰にも起こりうることなら、そうならないためにどうしたらいいのかも考えたい。
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『文学的商品価値』読了後、図書館でいきなり見つけました。ちまたに”ホームレス”本も”作家”本も溢れていますが、両方を自分自身の体験としてテーマにした、ノンフィクションは希有な存在です。
貧乏が背景にある「放浪記」「東京タワー」とこの本が成り立つ為には、あるていど多様性を受け入れる街(東京)の存在が大きいこと、”貧乏”と”貧困”、それに”貧しさ”が少なくとも作者の内部で区別されていることが必要だと分からせてくれます。
逆読みすれば”金持ち”と”幸せ”の区別にも繋がるのですが、今度はそっち方面の本を見つけて読んでみます。
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ぼちぼちと小説を書いていてごく普通の生活を送って来た著者の奥さんがおかしくなり、彼を家庭内暴力をふるうと訴えたために、彼は仕事が出来なくなり、子供とも会えなくなり、収入が無くなって家賃も納められず、ホームレスになった。それでも、携帯だけは持っていて、出版社と連絡は取りながら創作を続ける。今はどうなっているのか、続編も出たと思うが。気の毒な人。
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平和ボケして危機感のない頭にちょうど良く刺さる。現状が良くても、どうしても生活レベルを下げなきゃいけない時は誰にでもありうることを痛感させられる、新宿から立川まで歩く時間とか、デニーズでコーヒー一杯で粘ったりする生活がリアル。
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ホームレスが作家になる話かと思ったら、作家がホームレス状態になってしまった話でした。一線を越えて落ちるか落ちないかのギリギリの数ヶ月・・小説家だけに筆力があって読ませます
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区役所職員の見た目で判断する対応は明日は我が身であり気をつけないといけないと感じた。ルーチンで対応するとああいう対応になってしまうのかもしれない。
一方でいつじぶんが筆者と同じ立場になるかわからないという恐怖も感じた。ただ、アルバイトを首になったところを読んで、これまで社会に適応できてきた実績は大きいだろうと考え直す。
この歳になるまでに団体生活を送れてきていた経験は大きいと思う。
身だしなみは大切。見た目で判断されてしまうというのは少なからずある。自分はそうしないようにしても、他人は変えられない。
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だれにでもホームレスになる可能性はあるよなあと実感。
この本を読んで、ホームレスの方々への見方が変わりました
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作家として、そこそこの収入を得て、妻子を養っていた著者が、一時的に収入が止まったことで、賃貸アパートを追い出される。妻子を施設に預けることはできたものの、自分はホームレスとなり、東京の街を当てなく彷徨うことに。
筆者は出版社を巡り、仕事や借金を求める。行政はあてにならず、デパートの試食コーナー、駅のホーム、図書館、公園、ハローワーク、風俗街と歩き続ける。
ホームレスになったことで一番恐ろしいのは、飢えや寒さじゃない。社会から切り離され周囲の人間から否定されてしまうことだ。体験者自らの筆で語られるその恐怖のリアル感に圧倒される。そんな恐怖に抵抗できず自死すら考えた著者だが、唯一の救いが神山という友人の編集者。彼だけは著者を人間として、作家として扱い、自分ができる範囲でささやかな施しを行う。その結果、著者は作家である自分にできることは、今の自分を記し、発表することだと閃く。
自分を肯定してくれるたった一人と、作家としてのプライド。その2つに著者はすがり、本書を完成させ、作家人生を再開させた。ハッピーエンドでなによりと思う一方、人は簡単にホームレスになり得る恐ろしさが心に残る。
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実話で読み応えたっぷり、筆力強く、一気に読んでしまった。作家とは経済的にも不安定な職なのだろう、それに加えて精神的に不安定な妻と、子持ち。ある日、立ち退きを命ぜられて宿無しに。どう生活していけば良いのか、生きることはこんなにもハードなのか。実話だから勿論の事、本著の醸すリアリティさはある意味では明日は我が身という恐怖にも繋がる。眠る場所のない辛さ。衣食住の安定しない暮らし。疑似体験しながら、ページを捲る手が止まらない。