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アンソニー はまなす写真館の物語 みんなのレビュー
- 茂市 久美子 (作), 黒井 健 (絵)
- 税込価格:1,320円(12pt)
- 出版社:あかね書房
- 発行年月:2001.9
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紙の本
ファンタジー
2016/04/09 22:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぽんぽん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ふしぎが起こる7つの連作ファンタジーです。
いやいや写真館を引き継いだ龍平さんが最後には…?
この作者らしいお話でした。
紙の本
海辺の古い写真館に伝わる蛇腹式箱型カメラ「アンソニー」が語り始めた昔ものがたり。そして、次々に現れる不思議なお客や被写体のファンタジー。第48回課題図書。
2002/06/10 16:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
童話作家・茂市久美子さんの書くおはなしには、ちょっとしたパターンがある。
まず、舞台として、あるいは日常からファンタジーへの扉として「お店」が選ばれることが多い。食堂や喫茶店だったり、家具店に洗濯屋さん。鋳掛け屋さんという渋い設定もあったりする。
主人公はたいてい若い男性である。多くは上に挙げたお店の主人、つまり職人的な仕事に従事している。若いということは、さまざまなものに出会う可能性豊かな存在なのである。ものがたりは、そこに不思議なお客が訪ねてくるというところから滑り出していく。
このお話の場合も、茂市ファンタジーのパターンにハマっていると言える。古い写真館の5代目の龍平さんは、継ぎたくて跡を継いだわけではない。プロのカメラマンになろうという夢を幼いころから持ち続けてきたというのに、父親の急逝で、雑誌社の就職試験をあきらめなくてはならなかったのだ。
「ちえっ!」というような人間の心のスキに、ファンタジーという要素はもぐり込んでくるものなのだろう。
明治期に米国で作られた木製スタジオ・カメラは、元々のメーカーの名を取って「アンソニー」と一般に呼ばれていたらしいが、龍平さんの継いだ店に置かれた年代物の蛇腹式箱型カメラ「アンソニー」が、その心のスキに話しかけてきたのである。
ところで、茂市さんの夫君は藤田弘基さんというよく知られた山岳写真家である。アルプスやヒマラヤなどの自然に加え、風俗やガンダーラ美術などを4×5(「しのご」と読む)という大きめのカメラで取りつづけてきた。それは、この世に超然として実在するファンタジーのような対象を、四角い枠に切り取ってみるという作業なのだろうと思える。
茂市さんには、ご主人のトレッキングにずっと同行してきたという経歴があって、デビュー作は、山岳行での経験からふくらんだお話を描いたものであった。
だから、写真に対する思い入れは格別なはずで、本書『アンソニー』の前に、『はまゆり写真機店』という、やはり浜辺の古い写真機を売るお店を舞台にした幼年童話が出版されている。そのお店にも、若い主人のところへ珍しいお客が訪れ、彼はこの世ならぬ不思議な光景を目にすることになる。
写真というものは、かつてそこに「生きた人」や「生きた瞬間」をとらえ、定着させようとするものである。その意味で、一瞬ののちには過去になってしまう時を封印しよう、形に留めようという営みや出来上がった紙焼き自体に、魔法やファンタジーが詰まっている。素材として選ばれる写真というのは、すなわち多くのものがたり性を含んでいるということになる。
船乗りから撮影を依頼されたアンティークのグラスには、青いビー玉を背景にした海の馬が閉じこめられている。
駅前にオープンした薄雪写真館のあるじは、姿を見せないで撮影するなぞの人物。その人物が、ある夜、龍平さんの写真館にポートレート撮影の依頼にやってくる。
カメラを担ぎ、カレンダー用のモミジをさがして山に分け入っていくと、龍平さんは父親のことを知るカエルに出会う…。
こういった感じの7本のアンソロジーから成るこの本には、写真という不思議に魅せられた童話作家の驚きがストレートに投射されている。
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