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紙の本

自給自足の暮らしから生まれた植物利用の貴重な知識が満載。

2001/10/30 22:15

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投稿者:赤塚若樹 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 植物を衣食住にフル活用する暮らし——日本の農山村では以前このような生活が基本だった。人びとは樹木や山野草の特性を見極め、用途に応じていちばん適したものを選んで利用する術を知っていた。自然とのかかわりを深めていくなかで蓄えた暮らしの知恵は、その「適材適所主義」とともに、代々受け継がれてきていたのだという。この広範な植物利用の知識と、それをより快適な生活のために役立ててきた山村の人びとの暮らしぶりを紹介するのがこの『植物民俗』だ。

 たとえば、わたしたちにとってもおなじみの「こたつ板」。縦横60センチほどの一枚板が取れ、熱がくわわっても反りが生じにくく、しかも木目が美しい、という条件にかなう材料となると、トチノキが第一となるという。一方「まな板」には木目がなく、柔らかい材質のほうがよい、となるとヤナギ、ホオノキ、シナノキあたりになるらしい。すぐれた薬効をもつ植物といえば、たとえば、あかぎれで水仕事がつらいときはスギの木から出るヤニを塗るとよく、お腹をこわしたときにはキンミズヒキの根やイタヤカエデの樹皮を煎じて飲むと効き目があるという。また、草木染めのさいは、たとえば赤色系ならアカネの根、クルミの樹皮、シソの葉、ウメの樹皮、緑色系ならヨモギの葉、カリヤスの全草、ハンノキの樹皮や果実がもちいられてきたらしい。

 これらは北アルプスを取り巻く長野、新潟、富山、飛騨地方を中心に、おもに関東以北にみられる植物民俗の記録にあるものだ(著者自身、現在の長野県白馬村に生まれ、そこに70年にわたって暮らしている)。しかし、こうした暮らしの知恵の伝承が行なわれていたのは昭和の中頃までだという。高度経済成長期を境に燃料や肥料のほか食生活や子供の遊びも変化し、人びとの暮らしと自然の結びつきが徐々に希薄になっていったからだった。だからこそ、いま、忘れ去られるまえに、植物利用の貴重な知識が1冊の本にまとめられたことには意味があるといわなければならないだろう。

 もちろんなかには過去の記録に留まっているものもあるとはいえ、いまでも役立つ身近で実用的な情報も数多く収められている。たとえば食べ物についていえば、いわゆる山の幸のうち山菜は雪国のものが絶品だという。雪国育ちだと、アクがなく柔らかで、味もすぐれているかららしい。「山菜の女王」と絶賛する食通も多いというモミジガサ、天ぷらにすると最高のコシアブラ、くせがなくどんな料理にも合うナンテンハギ、アスパラのような甘味のあるカラマツソウ……。アザミも北アルプスや東北の山に自生するものならば、刺身より美味しいというひともいるとのこと。「暮らしの知恵が生んだ植物利用法」という章には、こうした山菜や木の実・草の実にかんすることがらが50ページにもわたって記述されている。(これらの山野草とはべつに「きのこ」についても10ページほど解説されている。)

 「子供の遊びと身近な植物」という章は楽しく、そしてどこか懐かしいような内容から成っている。だれもがやってみたことがあるだろう、草花をつかった「笛遊び」などは「プアー」だの「トロロロー」だのといったおどけた擬声語混じりで紹介されていて、ほほえましい。このほか「植物俚言集」、「信仰と植物」、「植物と山村の暮らし12カ月」といった章がもうけられた本書においては、写真や表をもちいて情報がうまく整理してあるために全体に読みやすく、また植物名の索引が充実していることもあって、検索もしやすくなっている。
 暮らしのなかで植物にふれあってきた著者ならではの、生き生きとした筆の運びが読む者を豊かで拡がりのある植物民俗の世界へと引き込んでくれるにちがいない。 (bk1ブックナビゲーター:赤塚若樹/翻訳・著述業 2001.10.31)

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