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紙の本
新宿で無認可保育園を営む探偵“ハナちゃん”こと花咲慎一郎が大活躍するハナちゃんシリーズの第1弾!
2006/01/11 00:56
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
さすが稀代のストーリーテラー、柴田さんだけあって登場人物それぞれが個性的だけでなく生き方もドラマティック。
他のシリーズで大活躍のあの山内さんまでも登場、柴田さんのサービス精神ぶりにうっとりされた方も多いことでしょう。
読みやすさと言う点においては柴田さんのシリーズ物の中では一番かも。
誰からも好かれるハナちゃんのキャラが大成功。
彼の悪戦苦闘振りの忙しさ(ハードな生き様)には読者もページを捲る手が止まらなく、思わず嬉しい悲鳴をあげた方も多いことであろう。
今から8年前の作品なんで、通信関係(パソコン)の表現にどうしても古臭さも漂っているのであるが、いつの時代になっても共通な家族問題のあり方やジェンダー問題・不法就労問題や福祉問題など、慌しい展開の物語の中にも鋭いメスを入れている点は見逃せない。
やはり子どもを育てることの大変さを痛感された方も多いことであろう。
あと、女医・奈美先生と恋人(と言えるのであろう)理沙とのコントラストも読ませる。
男性読者はこんなところ敏感です(笑)
どうやら理沙に心を奪われつつあるようですが・・・
2人とも素敵な女性なんで(笑)、どうしても比較しちゃうものね。
次作以降の展開がどうしても気になります。
少し読み違えかもしれませんが、この作品には大勢(前述の2人・元タレント・保母たち・漫画家など)のそれぞれの過去を持った女性が登場します。
たとえば女性読者が読めば、自分に近い性格(生き様と言った方が良いのかな)の人物に投影することも出来るはず。
彼女達がハナちゃんと接し、結果として彼の危機一髪な状態から守り抜きます。
そう言った観点から読者一体型のミステリーかもしれませんね。
もちろん、ハナちゃんの根っから優しい性格がより読者を身近なものとしているのでしょうが・・・
ラストの「にこにこ園」の園児ミッキー(10歳の少年)が起こす事件がなんとも印象的である。
子どもはとっても敏感であると痛感した。
お子様がいらっしゃる主婦が読まれたら心が痛んだはずである。
どんな苦しいことがあろうとも、支えてくれる人がいるハナちゃん。
彼が眠る時間を惜しんでまで“必死に”生き、周りの人々に“勇気”を与えてくれているからだ。
本のタイトルともなっている“フォー・ディア・ライフ”(「一所懸命」)、柴田さんからの大いなるメッセージだと思います。
活字中毒日記
紙の本
表があるなら裏もあるのよね
2002/04/01 21:43
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読ん太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
新宿2丁目で無認可の保育園を営む、花咲(通称ハナちゃん)は、園の苦しい経営を助けるべく探偵の仕事もしている。ハナちゃんが引き受けた依頼に基づいて話は進んでいくので、自然とジャンルはミステリーになる。ヤクザ絡みで問題を起こした少年を探したり、家出をした大金持ちの少女の行方を追う。
ハナちゃんの、園長先生という表の顔と、ヤバイ仕事も引き受ける探偵という裏の顔が交錯する。ハナちゃんはこの二つの顔をスマートに使い分けているのではなくて、できることなら園長先生一本でやっていきたい気持ちは山々なのだが、保育園はいつも火の車で、やむなく探偵に成り代わるという、生活臭プンプンのアップアップ状態だ。読者は何時の間にか、「あまり危ない仕事は引き受けないで」という気持ちになり、依頼を引き受けたなら引き受けたで、「早く事件が解決してお金が入りますように。そしたら、八百屋さんの支払いやあちこちのツケが払えるから」なんて、所帯じみた応援をしてしまっている。読者一体型ミステリーとでも言おうか。
わけがあって警察を辞職したハナちゃんを筆頭に、ここにはわけありの登場人物がたくさん出てくる。
無認可で低料金、24時間営業の保育園に子供を預けに来る母親たちは、それぞれにわけありだ。不法就労で夜の仕事をする母親は、無国籍の子供を養っている。離婚をした母親は、女手一つで子供を育てるために夜の仕事を選んだ。路上でアクセサリーを売る女性は、子供に対して愛はあるが責任感に欠け、薬の快楽から抜けることができない。園児が急病にかかると連れて行かれる医者は、わけあって医師免許を剥奪された女医さんだ。園で働く保母さん達にしても、わざわざ無認可の『にこにこ園』で働くにはわけがある。
大人はそれぞれに抱えているものがある。それがどれだけやっかいでも、抱えていなくては仕方のないものだってある。どうしようもないことってのが、生きている内に一つや二つ、いや、三つや四つ出てきて当たり前だよな。
ミステリーとしての展開とは別のところで、園児ミッキーが小さな事件を起こす。これは、大人が「どうしようもない」と思いながら抱えているものが生み出した事件である。ハナちゃんが男泣きに泣いたように、私も胸がつまった。
虚しさと勇気、悲しさと嬉しさやおかしさが混ざり合った、奇妙な読後感を味わった。