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ハンディキャップのある方がものされる作品に、健常者の読者が期待するものとは何か?一言で言えば「その本を読むことによってウルウルする自分に感動できる」ということだろう。こうした動機を美しいと呼ぶべきか、劣情と呼ぶかは見解の分かれるところではあるが。本書は、そうした「感動したい」読者が最も手にとらない類の本である(そうした人たちこそ、本書を読むべきなのだが)。
人間である以上、霞を食うわけでなし、排泄もすれば性欲も当然持つ。しかし、健常者の多くはそうしたリアルなものを「あってはならない現実」としがちである。以前田中長野県知事が障害者の性の問題について発言したときに、「女性蔑視だ」という批判はあっても、障害者の性にまで言及をしたものは殆ど無かった。この事例は、あってはならないものを無いものとしようとする「建前」を端的に反映したものといえる。
本書は刺激的な事例に満ち溢れている。大いに笑える。芸人ホーキング青山の面目躍如といったところだ。そうした笑いの背後に、建前を超えた現実を考えさせるきっかけがある。そうした意味で本書の歴史的な意義は大きい。