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南総里見八犬伝 1 妖刀村雨丸 みんなのレビュー
- 滝沢 馬琴 (原作), 浜 たかや (編著), 山本 タカト (画)
- 税込価格:1,540円(14pt)
- 出版社:偕成社
- 発売日:2002/03/01
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紙の本
八犬伝読み比べ
2012/07/02 11:19
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GTO - この投稿者のレビュー一覧を見る
子ども向けの八犬伝を読み比べてみた。
読み比べたのは、
(1)『南総里見八犬伝』(くもんのまんが古典文学館)
(2)『八犬伝』(青い鳥文庫)』
(3)『少年少女古典文学館 22 里見八犬伝』(講談社)
(4)『南総里見八犬伝』(偕成社)の4種類である。
他に『里見八犬伝』(ポプラ社文庫)も候補だったが、今回は手に入らなかった。
結論から言ってしまえば、(4)が一番面白い。ただし、小学校高学年以上向けである。
順に、特色を述べていくと
(1)は、マンガである。比較的原作に忠実であらすじを短時間で知るには一番向いている。八犬士が順に有名なエピソードとともに登場、あるいは出会うシーンが描かれ、あっと言う間に大団円。小学校低学年までの子どもには、これが向いているでしょう。
(2)は、(1)では少し物足りないと感じるであろう小学校中学年向けである。高学年以上でも長い物語を読み慣れていない子どもには、この本を薦めます。(4)と比べると艶のない文章であるが、あの長編を1冊にまとめるにはしかたがなかっだろう。(4)は、4冊組である。)ちなみに、この「青い鳥文庫」シリーズは『西遊記』も1冊にまとめてあり、安価で多くの児童に多くの名作に触れてほしいという編集方針と思われる。ルビの振り方も適切である。
(3)は、SF作家の栗本薫訳ということに期待して購入した。「少年少女」とあるが、「古典文学」という点にも眼目があるため、予想に反してプロットが原作に忠実であり、語彙も(詳しい解説付きだが)原文のリズムを伝えようとしていてやや難しく、高校生あるいは、古典好きの中学生向けである。時代背景・文化・風俗に関する解説も豊富で、やや参考書的な香りがする。残念なのは、八犬士のうち6人が登場したところで、本編が終わってしまうことである。残りは「そののちのあらすじ」として述べられるが、欲求不満の感はまぬがれないだろう。語句説明がある語は、ルビが左につくので読みにくい。ルビは右、解説は左と統一すべきだった。
(4)が、この4種の中では一番のお薦めである。小学校高学年以上であれば、この本がよいでしょう。一気に八犬伝の世界に引き込まれ、ハラハラドキドキのまま最後まで読ませてくれます。第4巻に人物辞典がついているので、4冊一度の購入することを勧めます。ルビの振り方も丁寧でよい。唯一の難は、価格である。1冊1400円(税別)は高い。980〜1050円(税込み)だとよかった。
紙の本
『八犬伝』の格好の入門書
2004/02/06 13:39
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:InvisibleGreen - この投稿者のレビュー一覧を見る
滝沢馬琴『南総里見八犬伝』は、日本有数の伝奇文学としてつとに有名ですが、あまりに長大な小説でまたやや冗長な部分もあり、その原典を読破した人は意外に少ないのではないでしょうか。『八犬伝』を現代人に読みやすくリライトした本がこれまで数多く出版されていますが、そのなかでも浜たかやさんのこの『南総里見八犬伝』は、全4巻の中に原典の主要なエピソードが網羅されており、『八犬伝』の格好の入門書といえましょう。山本タカトさんの挿絵も素晴らしく、これだけでも一見の価値があります。
紙の本
あなたは、この山本タカトのカバー画を見て冷静で居られるだろうか
2002/11/04 20:26
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この全四巻の本を、書店で見つけたときは衝撃だった。ともかくカラーのカバー画の素晴らしさに圧倒される。思わず、過去が甦ったかと思うくらい、この小説にはぴったりの挿絵。いつかは原典で読もうと思って先延ばしにしてきた本だが、今回は児童書のダイジェスト版と分かっていても手を出さずには居られなかった。
洲崎の明神から帰る赤子を見た老人は、その子に邪悪な力を持った女人の呪いがかかっていると言い、子供を守るために自分の首に巻いていた水晶の数珠を置いて消えていく。数珠の百八個の珠のうち大きい八個のものには、仁義礼智忠信孝悌の八文字が。赤子の名前は伏姫、安房の国滝田城主、里見義実の娘である。
全ては、この人のよい義実の軽率な一言から始まった。謀反を企んだ山下定包と玉梓。捕らえられた二人の風情、特に美貌の玉梓を見ているうちにふと情け心を起こし、刑を軽くすることを約束してしまう。しかし、部下に諌められ己の不明に気付いた義実は、改めて玉梓を死刑にする。怒り狂った毒婦は、死の直前に里見家を呪って逝くのである。
安房の国の片隅で生まれた犬、一頭だけ生まれたことから珍しがられ、犬好きの義実のもとに届けられる。大きく成長した犬を見た城主は、小姓の止めるのも聞かず、その犬を城で飼うことにする。犬は、伏姫によって八房と名付けられる。美しく成長した十六歳の伏姫。その美貌を我が物にしようと、里見家に闘いを仕掛ける安房館山城主・安西景連。
激しい攻撃にさらされた滝田城は陥落寸前、助かりたい一心の義実は、犬の八房に向かい「もし敵将の首を取ってきたら、伏姫を褒美にやる」と約束してしまう。そして見事、八房は景連の首級を咥えて、義実の前に現れる。これが壮大なドラマの始まりである。
有名な話なので、内容はこれまでにしておく。この版は、もし分類するならば挿絵担当者の名前をとって山本版とでも言われるべきものだろう。山本タカトのカバー画の魅力は、横尾忠則の全盛期のポスターを思わせるとでも言ったら良いのだろうか。紙芝居を思わせるレトロ感。髪の一本一本まで表現されるような線描。睨みつける剣士の灰色がかった目の色の妖しさ。
いわゆる健康な、誰もが喜ぶ絵ではないかもしれない。しかし、馬琴の原作も決して単純で長いだけの伝奇ものではない。大人を引き込む妖しさをもっている。だからその面を上手く表現している。昔の江戸川乱歩全集、あの横尾忠則のイラストに心震わせた人なら、分かるに違いない。この内容にして、このデザインあり。新しい世紀の児童書として屈指の名作である。