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紙の本
お手頃な『全史』ではあるけれど
2002/07/02 06:31
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:FAT - この投稿者のレビュー一覧を見る
非常に読みやすくて、面白いんだけど。何となく物足りない。なんというか、あっさりした著述になっているのである。朝鮮戦争の全体の進捗(特にその政治的意志決定の側面)は淀みなく描かれているのであるが、あまり強い学問的主張がないようなというか、歴史事象の因果の関係に新しい知見を加えようと言う意欲が感じられず、あまり良くない意味で『全史』になってしまっているという感じである。
本書の構成は、朱建栄氏の『毛沢東のベトナム戦争』に雰囲気は似ている。これは恐らく、ソ連の崩壊によりオープンになった新資料の活用による叙述という点で共通する部分があるからだろうと思う。要はスターリンや毛沢東の動勢・意志決定を、より鮮明かつ中心的に記述することができるようになり、その過程をトレースすることに両書とも、力点を置いているように思える。
しかし、『ベトナム戦争』におけるある種の迫力というか、説得力のようなものを、本書『全史』からは感じることができない。『ベトナム戦争』において、文化大革命の「震源」をベトナム戦争介入への毛沢東の決断過程に見いだそうというような挑戦的かつ学問的営為を、本書から読み取ることはできない。その分、読後大きな満足感を得ることはできなかった。
でも、叙述自体はすっきりと整理されているので、朝鮮戦争の政治的側面を知るには手頃で、途中で飽きることはない。
紙の本
東西冷戦以前の「熱戦」の歴史過程を世界史の中に位置づける
2002/05/20 22:15
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木力 - この投稿者のレビュー一覧を見る
人は、第二次世界大戦終了後、語るに値する戦争はなかったものと勘違いしている。だが、1950年夏から53年夏の停戦条約まで、ひとつの国、それも日本の最近隣国の帰趨をめぐる戦争があった。本書が記述の対象としている朝鮮戦争である。その戦争で、朝鮮人民は南北合わせて、300万から400万人ほどの命が奪われたと言われる。第二次大戦の一部としてアジア太平洋戦争で死んだ日本人は約300万人と言われているから、それ以上の犠牲者ということになる。とくに、アメリカ軍の空爆によって北朝鮮の国土は荒廃し、その国家の困難は今日に及んでいるという。朝鮮戦争の構図はある意味でヴェトナムの地に引き継がれ、1975年にヴェトナム側の勝利に終わったことは周知の事実である。東アジアの激動が今日に及んでいることは、沖縄や日本本土の米軍基地の存在、そして現在国会で審議が進んでいる有事法案を見れば一目瞭然である。現代日本のアメリカへの従属、そしてアメリカの傘の下での「繁栄」は、実にこの戦争の上に立った「繁栄」であると言っても過言ではないのである。
本書は、朝鮮戦争の全過程を克明に再構成して成った労作である。その特徴は、南北朝鮮の歴史文書だけではなく、中国側、ロシア側の文献まで調査し、東アジアを取り巻く国際関係史として詳細に記述していることである。本来はロシア史家である著者によって本書が書かれたのは、ソ連邦の崩壊によってロシア側史料が大量に公開されたためであるという。アメリカ側、韓国側の史料にももっと綿密にあたって欲しかったと思わないでもないが、それは無い物ねだりというものであろう。ともかく、本書によって明らかにされたのは、朝鮮戦争が金日成、毛沢東、スターリンの戦争であったことである。
大戦後アメリカの帝国主義的野心をも強調して欲しかった憾みが残るが、それは今日の著者に要求しても無理というものであろう。戦争に関連した年表が付されていれば、本書の価値はさらに高まったであろうことは疑いない。 (bk1ブックナビゲーター:佐々木力/東京大学教授 2002.05.21)
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