紙の本
警視庁捜査一課の中に存在する誘拐,企業恐喝などを専門とする特殊部隊の実態
2002/09/16 15:31
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投稿者:格 - この投稿者のレビュー一覧を見る
警視庁捜査一課の中に特殊班なるものが存在する.担当するのは,身代金誘拐,企業恐喝,立てこもり,そしてハイジャックである.捜査一課の課員は全体で298人(平成13年三月現在)で,32の係があるが(そんなに多いとは),そのうち,2つの係で約30人が特殊班だそうである.かなり大きな数字と思われる.
特殊班は「昭和38年の吉展ちゃん誘拐事件の大失態で誕生し,59年のグリコ・森永事件で陣容の拡大や,技術の要請,装備の充実が迫られた…そして,62年の八大産業社長宅立てこもり事件によって,初めて拳銃所持犯による立てこもり事件への対応技術を真剣に検討することになった」というように,事件への対応に失敗するごとに整備・強化されてきている.外圧によってしか,変わることのできない日本の政治とまったく同じ状況か.情けないものがある.
もっともこれだけの陣容を1年に1回程度おきるかどうか,という事件のためだけに,常時確保しておくのは,かなりの無駄と思えなくもない(発足当時は毎日のように事件が起きていたという話との関係が不明.このあたり,データはきちんと載せてほしい).事件がおきない限りはかなり厳しい訓練を日々行っているようではあるが.何か事件がおきるたびに陣容を拡大し,それを必ず維持させておかなくてはならないものなのか,適正規模というのがどのようなものか,議論されているとは思えない.さらに,捜査力はあるが,機動力のない特殊班と,捜査力はないが技術と体力のある公安警察内にある特殊部隊の問題もあるようだ.このような情報公開が行われたのは初めてか.本書の意義として認められる.
「『サントリーオールド』の箱,あれば1千万円の札束の大きさです」というのは何かのちょっと違うような気がするが.
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“交渉人”の文献見て読みたくなった。
刑事警察の特殊部隊・SIT
警備・公安警察の特殊部隊・SAT
殺人一課は終わったことを探る。
特殊班はこれからを予測して動く、オペレーション。
SIT:捜査一課特殊班 Special Investigation Team
SAT:忘れた・・・・
平成7年のハイジャックは職場の昼休みにTVでみて衝撃だったのを覚えてる。
誘拐犯の今までの教訓をいかし、過去から学び、事後検証から発達。
でもちょっとした甘さや、緊迫の欠けからまねく悲劇。
こわいと思った。
麻原、グリコ・森永、ハイジャック、少年バスジャックなど。
2008/12/2
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「本当にこんなやりとりをしたの?」と思うほど事件関係者、警察関係者の言動が詳細に書かれてある。取材は大変だと思うけど今後もこのシリーズが楽しみだ。
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9月15日 ~ 9月19 日
意外に失敗も多いのだなと思った。
失敗を認め公開する点では優れた自浄能力を持っているのか、それとも著者の取材力のなせる技か。
SATの機動力、制圧力も特殊班の情報収集分析能力があってこそ発揮できるのだな。
自分の中ではSATと特殊班を混同していた。(「漂流トラック」は特殊班だったな)
最近発生した福岡の幼女人質篭城事件も最終的にSAT(たぶん福岡県警)が突入したようだが、地方ゆえの経験不足か著者(関係者)が危惧した通りの結果になってしまった。特殊班の技術レベルが低下した証拠なのか。
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フィクションだと思ったらノンフィクションでしたが、普段表に出ない特殊班の内幕が描かれていて興味深く読めた。社会的にも大きな事件が中心になるので記憶にある事件が描かれているのも興味深かった。
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捜査一課特殊班とは、身代金誘拐、企業恐喝、立てこもり、ハイジャックの4つの事件を主に担当している警察刑事部の捜査一課に属する特殊班捜査係のことを指します。いずれの事件も報道で大きく報じられ、その社会的影響は計り知れません。警察のメンツに係わるような重大な事件ばかりです。これとは対照的に、特殊班そのものについては機密扱いとなっており、その本当の姿は秘密のベールに包まれています。
その刑事部の超エリートである特殊班にスポットを当て、実際に起きた事件での緊迫する場面を再現し、担当する捜査官の行動や考え方に迫ります。「小1男児誘拐事件」「グリコ・森永事件」「麻原彰晃逮捕」..その詳細な記述がすごい!
そこまで書いてしまって大丈夫なの? と一般人である私が見ても心配になります。
「第八章 特殊班の知られざる技術」では、遠隔操作でブレーキがかかる乗用車(犯人の要求に応えて逃走用に渡す)や閃光弾、盗聴マイク等の道具の使い方まで、こと細かく記載されています。他の章でも随所に、使用する武器や防弾チョッキ等の装備の詳しい記述が見られます。
「第九章 SITとSAT−ハイジャック事件」では、『踊る大捜査線』で一躍有名になったSATとSITのハイジャック事件における役割や、その対立姿勢までが描かれています。当時のものとは言え、現場でのオペレーションについて書くことはテロ犯に手の内を晒すことにもなりかねず..
SITとは、ズバリ捜査一課特殊班のことを表します。"Special Investigation Team"の頭文字を取ったものだとの通説がありますが実はそれは後解釈で、真相は『捜査のS』『一課のI』『特殊班のT』という略称なのだそうです。
「いかつい顔をしたデカ連中にそんな発想があるわけないでしょう」とは、当時を知る捜査一課OBの談です。
我々はどちらも似たような組織なのかと勘違いしてしまいますが、実は二つの組織はまるで異なるものです。下記に違いを簡単にまとめてみました。
SIT:刑事警察の特殊部隊、30代〜50代のたたき上げの男女刑事→捜査力のSIT
SAT:警備・公安警察の特殊部隊、25歳以下の独身の男性警察官→技術と体力のSAT
著者は決して興味本位で事件を調査したわけではなく、知名度を高めるために内情を暴露したわけでもありません。その緻密で力強い文章からは「過去や現在の警察組織の矛盾や捜査の問題点を抽出して教訓を汲み取り、今後に役立てほしい」という熱い想いが感じられます。
最後に、著者の言葉から。
今の警視庁特殊班を生かすも殺すもトップたちの判断次第。現在の日本警察はそういう局面に入った。