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1900年代の前半に活躍されたアメリカの黒人公民権運動活動家であったマルコム・X氏の自伝です!
2020/08/06 09:29
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、1900年代の前半に活躍されたアメリカの黒人公民権運動活動家マルコム・X氏の自伝です。同氏は、ネーション・オブ・イスラム (NOI) のスポークスマンとして、ムスリム・モスク・インクおよびアフリカ系アメリカ人統一機構の創立者としても知られる人物です。同氏は、非暴力的で融和的な指導者だったキング牧師らとは対照的に、アメリカで最も著名で攻撃的な黒人解放指導者として知られていますが、彼が活動中に暴力行為にでたことは一度もありません。 しかしながら、同書を読んでいただくと分かりますが、「黒人の解放を叫んで戦った」というような教科書的な善意の活動家というよりは、むしろ物騒な話、例えば、過剰な薬物摂取と銃、女からむしり取る金などの悪事が次々に出てきます。しかし、彼には予知能力のようなものがあったのでしょうか?彼の運命が徐々に変化していきます。中公文庫では上下2巻シリーズで刊行されています。ぜひ、下巻も含めてお読みください。
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アップリンクから出ていた自伝がかなり面白かったので
オススメします。これは上巻。
ギャングスタな青年期を経てイスラム教に改宗し、
さらに指導者にのぼりつめるまでの話はグイグイ読ませます。
思ってるより小難しくないです。面白いんです!
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思想のどうのこうのを話すことではありません。納得できる部分もあるでしょうし、理解しがたい部分も少なくありません。
ただ、ひとりの「誇り高い(なんて陳腐な表現!)」人間の生涯にタッチできる機会。
面白い伝記はやっぱりとことん面白いです。
もちろん、黒人の歴史を学ぶことは、最近の音楽に代表されるように、黒人文化に深く根ざしたものを愛好するものにとって無自覚・ナイーヴでいる訳にはいかないと思います。
映画『ナイトミュージアム2』に出てくるA・リンカーン米国16代大統領と、W・E・B・デュボイス著『黒人のたましい』の中のリンカーンと。
ともあれ。ともあれ。激烈に生きた人間の言葉の数々。スパイク・リー監督の映画版も是非(主演はもちろんデンゼル・ワシントンです)。
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薬物依存からの回復の物語とも読めます。ジャズ好きにも上巻はたまらないのでは?何度も読んで、考え方を学びたい本です。
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キング牧師の切迫がこの人には感じられない。敵と目的が必要だっただけなんじゃ? ただ、暗殺される間際に急激に展開しはじめる。もしあと10年長生きしていたら、キング牧師以上の人物になっていたかもしれない。ハスラーから出発したマルコムXの真骨頂は、転回と展開だったのに。
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存命なら85歳のマルコムXは、1925年5月19日に生まれて、45年前の1965年2月21日に15発の弾丸を受けて39歳で暗殺されたアメリカの黒人公民権運動活動家。
公民権運動という言葉も、今やもう古くさい死語に近いものですが、1607年にイギリスが入植=侵略して来て以来、アフリカ大陸から1200万人もの黒人が強制連行され1776年の合衆国独立後も奴隷制度を残し、1860年の国勢調査では黒人奴隷が400万人もいたという事実。
南北戦争を経て、1865年に奴隷制度廃止法が制定されたのに、その後も根強く人種差別が続いて、なんと100年かかってようやく1964年に公民権法が制定されて公然とした人種差別がなくなる日をむかえる訳です。
考えてみると、先進国とか理想的な国とか、アメリカンドリームを実現できる素晴らしい国などと思いがちなアメリカですが、いかに遅れていたか、暴力的な、人間性をないがしろにして成長してきた国であるかということです。
人間性を暴力で踏みにじってきた国であるからこそ、その報いが今やスーパーマーケットで拳銃を売っているというアホな情況を放置し、3歳児がピストルを乱射して殺人を犯すということを平気で許しておく社会を作り出しているのだと思います。
それはともかく、過激すぎるきらいがあるマルコムXの方が黒人全般に親しみ深いのは、あるいはまた私たち日本人の庶民にとってもとっつきやすいのは、他でもなく、もうひとりの黒人の英雄のキング牧師のような、大学で博士号を取得してノーベル平和賞を受賞したようなエリートではなく、下層で貧困で麻薬・売春・強盗に手を染めて逮捕され刑務所に入った後に、猛勉強の末に自覚し決意して反差別活動に身を投じたということにあると思います。
父親も黒人差別に抵抗したからKKKに狙われて、結局は人種差別主義者に頭部が変形するほど殴られ身体を三つに切断されるように線路に置かれ轢死体で発見されたのに自殺と断定されるという亡くなり方。
たった40年50年前のことですが、今から考えるとまるで信じられないウソのようなことが実際にあったということ。
彼を先頭に数知れない人たちの闘いの結果・成果の上に、今の平穏な世界があるのだということ。
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キング牧師とは対極にある人物の活動家だと思う。
武闘派の活動家と言えば聞こえが悪いかもしれないが育った環境からムスリムに改宗するまで彼の壮絶な半生は必見。個人的にブラックミュージックにはまるきっかけになった人物の一人です。黒人主体の映画では無いが映画アメリカンヒストリーX等を見ると人種問題について感じることができると思う。
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マルコムXの思想の変遷が分かります。白人の世界から見た黒人像ではなく、独自の黒人としての自我を追求したマルカム。興味ある人はぜひ。
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「教団員の用いる「X」というのは、私の父方の先祖たちが、リトルという姓の青い目の悪魔である白人奴隷所有者によって押しつけられた名に、取って代わるものだった。」
マルコムXがイスラム教に目覚める。
荒んだ過去の生活。それがかっこいいと思っていた思春期。
時間が生まれる刑務所の中で新しい思想に出会う。
彼は知識に飢えていた。
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刑務所での読書によってみるみる目が開かれていく場面が感動的。麻薬、強盗、ポン引きとあらゆる悪徳に手を染めたハスラー時代の回想は苦い悔恨に満ちているのだが(特にローラのエピソード)、それでも語り口が生き生きとしていて否応なく面白く読めてしまう。「リンディ・ホッピング」「ズート・スーツ」「コンク」等々、当時の風俗についても知ることができる。
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マルコムXといえば、暗殺された黒人運動のリーダーということしか知りませんでした。
だからなんとなく、品行方正なカリスマ、ガンジーのような人かと思っていたのですが、全然違いました。
父を殺され、子だくさんの一家を母が支え切れるわけもなく、福祉局や裁判所の人たち(白人)は寄ってたかって、家族を分断しようとする。
結局一番素行の悪かったマルコムから、徐々に兄弟はばらばらになっていく。
1925年生まれの彼は、いくら学校の成績が良くても、自分の将来は頭打ちだということに、小学生の頃に気がついてしまう。
アメリカ北部に住んでいた彼は、黒人だからといっていじめられたわけではない。
むしろ学校の人気者で、先生にも一目置かれていたからこそ、夢を見るなとくぎを刺されてしまったのだ。
それは、まったく悪意とは別のもので、だからこそ絶望しか感じられなかったのだ。
都会に住む姉を頼り故郷を出、白人のようにふるまい、毎日を面白楽しく過ごすうちに酒や麻薬に溺れ、ついに投獄されてしまう。
そして監獄の中で、本を読むこと、字を書くことを覚え、なぜ黒人は貧乏で、今も将来も閉ざされているのかを、イスラム教を学びながら考えていく。
白人という悪魔が、キリスト教を使って黒人を虐げているのだ!
”パウロの肌の色は何色でしたか。彼は黒人のはずです……というのはヘブライ人だからです……そして最初のヘブライ人は黒人でした……よね?イエスの肌の色は何色でしたか……彼もヘブライ人でした……よね?”
ヘブライ人が黒人とは知らなかった。
ってことは絵画で見かけるイエスは全然違うじゃん!
一番驚いたところ。
マルコムXの「X」とは、永久にわからない自分のアフリカの家族の姓の象徴で、教団員がみんな用いていたものだった。
失われた、いや、白人に奪われた故郷アフリカ、黒人としての尊厳。
その無念はわかる。
けれど、黒人至上主義は、白人至上主義と同じくらい違うと思うのだが。
もともと中世のイスラム教は、人種差別も宗教差別もしない、科学的にも芸術的にもキリスト教より断然進んでいたときいている。
上巻は1950年代最初のころまでが書かれている。
つまり、60年代の公民権運動よりも前。
想像以上に黒人たちは虐げられていて、だからこそ白人を見返したい気持ちは澱のようにたまっていて、怨嗟の声が噴き出すのは時間の問題。
マルコムXの結婚でこの巻は終わるが、不穏な気配濃厚。